
野菜の価格が高騰するなか、無駄にせずに食べきりたいとは誰もが思うこと。栄養を逃さずにおいしく食べる上では、調理法を間違ってしまってはもったいない。専門家たちに、野菜のおすすめの調理法や保存方法を聞いた。
あく抜きのしすぎは返って逆効果
管理栄養士で健康検定協会理事長の望月理恵子さんは「ピーマンの苦みを楽しむには繊維を断つように切りますが、このように切ってしまうと繊維質がどんどん切れてしまって栄養も失われます」と説明する。
加熱にあたっては、ゆでるよりも蒸したり、レンチンした方が旨みや栄養素がしっかり残るといわれる。だが、野菜ソムリエの福島玲子さんは、ほうれん草を蒸すのはおすすめできないとも。
「ほうれん草にはシュウ酸という成分が含まれ、摂りすぎると尿路結石の要因にもなります。ほうれん草の持つ独特のあくはシュウ酸によるもので、これはゆでこぼさないと抜けません。ゆでたほうれん草を水にさらしてあくを抜くという方法もありますが、やりすぎると栄養素の流出につながりますので、長時間つけておく必要はありません」(福島さん)
栄養を逃さず食べるのにおすすめなのは、溶け出た栄養もすべて食べられるスープ。だがなかには“加熱しない方がいい”野菜もある。

「大根やかぶ、山いものように酵素がたくさん含まれる野菜は加熱すると酵素が失われてしまうので、できるだけ生で食べることをおすすめします。食べる時間帯にもコツがあって、トマトは朝食べた方がリコピンの吸収率が高いといわれています。野菜はいつ食べてもいい、加熱した方が栄養価が高くなるというのは一概にはいえないので、それぞれの特性を覚えておくといいでしょう」(望月さん・以下同)
例えばトマトやにんじんには脂溶性のビタミンも豊富に含まれるため、加熱することで吸収率が高まるが、水溶性ビタミンは流出する。自分に必要な調理法を選びたい。
葉っぱがついていても、そのままでは劣化する
肉や魚と違って、野菜は冷凍保存に向かないため、買ったらすぐに食べるか、正しく保存しておかなければすぐに傷んで食品ロスになってしまう。冷蔵庫に入れておけば大丈夫、と思ったら大間違い。
「植物なので乾燥や冷えに弱く、そのまま冷蔵庫に入れておくと水分が奪われてしなしなになってしまいます。葉物や長ねぎなどは濡らしたキッチンペーパーなどに包んでラップを巻くなどして入れておくといい。キャベツや白菜は、刻んで塩もみしておくと長持ちして料理にも使いやすいです。
大根やにんじんなどで、葉っぱがついている方が新鮮といいますが、葉っぱをつけたまま保存すると葉の部分に栄養が奪われてしまうので、買ったら葉の部分は切り落として。一方、根菜類はカットして酸素に触れると傷みやすいので丸ごと、育った環境に近い冷暗所で保存しましょう。切ったら、冷蔵庫で乾燥しないように保管してください」

スーパーなどによっては、丸ごと販売しているキャベツの外葉を捨てるスペースを設けているところもあるが、これももったいない。
「汚れがついていたり、硬かったりして“どうせ使わないから”と捨てていく人は多いのですが、キャベツは外葉で包まれているのがいちばんいい状態で居心地がいいそうです。なので、外葉で包んでその上からラップや新聞紙などでくるんでおくとベストの状態で保存できます。半分だけ残ったキャベツも外葉でくるんで保存するといいかもしれません。
買ったらとにかくすぐに下処理してほしいのは、とうもろこし。スーパーでは特に冷やされていないので、とうもろこしも冷暗所で保存する人がいますが、とうもろこしは熱を持っていて糖がどんどんでんぷんに変わってしまい甘みが失われていく。とうもろこしはその日のうちに加熱するか、必ず冷蔵庫に入れるのがマストです」(福島さん)
栄養成分や賞味期限が記されていない野菜や果物は、選び方、洗い方、食べ方を知っているかどうかで体にとって毒にも薬にもなる。
栄養価が高く新鮮な野菜を選ぶには、キャベツや白菜なら「ずっしり重いもの」、にんじんやブロッコリーなら「色が濃くあざやかなもの」を選ぼう。どんな野菜でも、色が薄かったり変色したりしているのは避けた方がいい。
正しい知識を持って、野菜や果物のパワーを余さず摂取しよう。
※女性セブン2025年2月20・27日号