健康・医療

病気を遠ざける “ちょうどいい小太り”を維持する60代からの食事術 「好きなものを食べてカロリー摂取」「たんぱく質をしっかり」「ファストフードもOK」

ファストフードはたんぱく質ファーストで

健康的に太るためにどんな食事を摂ればいいのか。そのポイントを佐々木さんが説明する。

「60才を過ぎたら、若い頃よりもしっかりとたんぱく質を摂る意識を持ってください。それには肉、魚、卵も食べていただきたいのですが、食品だけからたんぱく質を摂ろうとすると量もコストもかかるので、プロテインで補うのもいいでしょう。プロテインは筋トレをする若者が飲むものというイメージが強いかもしれませんが、効率よくたんぱく質を摂取できるので、高齢者こそおすすめです。

たんぱく質をとる
たんぱく質を摂る(イラスト/はらまき)
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また、骨粗しょう症予防にカルシウムとビタミンDも摂りたいですね」

コレステロールを気にして肉や卵を控えめにする人もいるが、血液中のコレステロール値は食事制限では下がらないというのが最近の常識。それよりも、たんぱく質を摂ることのメリットを優先しよう。

血圧が高めの人でも、塩分を過度に制限することはないと佐々木さんは言う。

塩分を過度に気にしない
塩分を過度に気にしない(イラスト/はらまき)
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「若いときの塩分制限には死亡リスク低下が期待できますが、75才以降で頑張ってもあまり効果がないというデータ(※Kirsten Bibbins-Domingo, et. Al.: Projected Effect of Dietary Salt Reductions on Future Cardiovascular Disease. N Engl J Med 362:590-599, 2010.)が出ています。薄味のものをがまんして食べるくらいなら、少々塩分があってもおいしいと思えるものをモリモリ食べた方が栄養になります」

“高カロリー、高脂質”の代表と思われているファストフードだが、意外にも高齢者には好相性だという。

「体重と筋力維持という2つの面を考えると、カロリーとたんぱく質が効率よく摂れるファストフードは、食が細くなった高齢者にはとてもいいと思います」

ファーストフードもOK
ファーストフードもOK(イラスト/はらまき)
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佐々木さんによると、『吉野家』の並盛牛丼+生卵でたんぱく質が28g、カロリーは760kcal。『マクドナルド』のベーコンエッグバーガーなら、たんぱく質が23g、カロリーは390kcal。どちらも高たんぱくで、充分なエネルギーが摂れる。

「同時に年齢や体格を問わず、必要なのが体を動かすこと。元気なかたは、筋トレで積極的に筋肉量を増やしましょう。高齢になってもなるべく用事を作って外出したり、散歩などでせっせと歩いて下半身の筋力維持に努めてください」

筋肉は使わなければ、50代からは1年に1%の割合で減少するといわれている。体を動かさないまま高齢時に入院をしてしまえば、あっという間に歩けなくなるのは目に見えている。

こまめに動いて筋肉維持
こまめに動いて筋肉維持(イラスト/はらまき)
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65才を迎えた人も、もう通り越した人も、今日から「年だから粗食に」ではなく、「年だからたくさん食べる」に考え方を変え、大いに出歩き、ふくよかでかわいらしいご長寿を目指そう。

◆医療法人社団悠翔会理事長・佐々木淳

全国に25の在宅医療クリニックを展開し、9000名超の患者をサポートする。著書に『在宅医療のエキスパートが教える 年をとったら食べなさい』(飛鳥新社)。内閣府・規制改革推進会議専門委員も務める。

取材・文/佐藤有栄

※女性セブン2025年3月20日号