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【幸せの買い方】幸福度を最大化する“ハッピーマネーの法則”「家族や友人と過ごすための時間を買う」「体験を買う」「他人に投資」…推し活&SNSでコスパよく高まる幸福度

「推し活×SNS」で幸福度がアップする理由

わかりやすい例が、近年すっかり市民権を得た「推し活」だと、橘さんは言う。

「応援しているアイドルが有名になったり、サポーターになったスポーツチームが優勝したりすると、自分のことのように喜べます。しかも最近はライブ会場やスタジアムに行かなくても、配信や中継で推しの姿を見ることができる。中にはものすごいお金をかける人もいますが、推し方次第ではコスパよく幸福度を上げられるでしょう」(橘さん・以下同)

推し活で幸福度を上げられる(写真/PIXTA)
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社会的な動物である人間は、推しの勝利や活躍を自分のことのように喜ぶことができ、これを「アイデンティティー融合」の能力という。

「旧石器時代の人間が最初にアイデンティティー融合したのは自分の家族で、これは生き残るための戦略でした。やがて社会が発展すると、融合する対象が宗教、国家と広がっていき、平和で豊かな世の中になってからは、誰もが自分の好きな個人や集団に自由にアイデンティティー融合するようになった。自分が成功しなくても、推しの成功に融合することで、幸福度を上げられるのです」

近年は、推し活の様子をSNSにアップしたり、そこから新たなコミュニティーを見つける人や、その中で人気を集めて“一目置かれるファン”になる人も増えている。橘さんによれば、SNSを活用して評判を獲得することも、幸せを買うための投資になりうる。

「私たちの脳は進化の過程で、共同体の中で高い評判を得ると幸福度が上がるように“設計”されています。

SNSが登場する前は、他者からの評判を得るために、ブランド品に身を包み、タワマンに暮らすような“幸せアピール”をしなければならなかった。これを『顕示的消費』といいますが、SNSが評判を可視化させるようになったことで、基準がお金から“フォロワー数”に変わりました。するともはや、大枚をはたいてハイブランドを買いそろえることに意味がなくなってきた。これは人類史的な変化だと思います」

金額にかかわらず、自分の熱量をSNSで発信することで、同じ趣味の仲間とのつながりや、他者からの評判も得ることができて、これが幸せにつながる。

「例えばサッカーのサポーターの中でもっとも高く評価されるのは、SNSで戦術を語ったり監督や選手を批判することではなく、アウェーのスタジアムまで遠征して、ゴール裏で応援することです。匿名掲示板に好き勝手なことを書いているのとは違い、“推し”のチームのためにお金と時間というコストを払っているからです」

「体験」と「他者からの評価」を同時に満たして幸福度を上げられる推し活は、現代人の“新たな生存戦略”なのかもしれない。  

(第3回に続く。第1回から読む

※女性セブン2025年3月20日号

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