育てられる野菜は環境で決め、近隣に迷惑をかけないよう虫対策を
栽培キットなどでの成功を経て、本格的にプランター栽培をしようと決めたら、まずやるべきことは、栽培環境の確認だ。特に、日当たりのチェックが重要だと新井さんは言う。
「人気が高い夏野菜のミニトマトやなす、きゅうり、ピーマンなどは南向きで日当たりのよいベランダで1日6時間ほど直射日光に当てると生育がよく、味のよい野菜が育ちます。
一方、パセリやしょうがなどは半日陰に、みょうがなどは日陰での栽培が適しています」

ベランダの日当たりに合わせて育てる野菜を決めるのがおすすめだ。
「初心者でも、レタスのような葉野菜なら種から育てても成功率は高いのですが、ミニトマトやピーマンのように実のなる野菜を育てる場合は、種ではなく苗から育てる方がよいでしょう。弊社のお客様相談室にも『種をまいたが芽が出ない』という問い合わせが少なくありません」
ベランダで栽培する場合、忘れてはいけないのが、隣家など周囲への影響だ。土を使って栽培すれば、アブラムシやカメムシ、アリ、クモといった虫やナメクジ、鳥などが寄ってくる。せっかくの野菜を食べられないようにするだけでなく、周りに迷惑をかけないためにも、害虫&害獣対策は必須。
「土に防虫用の粘着シートを挿したり、殺虫殺菌スプレーをかけたりして、虫が増える前に素早く対応することが大切です」
栽培の仕方でも虫などの被害は減らせるという。
「そもそも野菜自体の免疫力が弱いと虫がつきやすく、病気にもなりやすいので、野菜を健康で丈夫に育てることが大切です。そのためには、旬に合った時期に栽培すること。クモなど、害虫の天敵を増やすことも有益です。そして、コンパニオンプランツ(後述)を活用することで、農薬を使わずとも虫害を抑えられます」(竹内さん)


初心者が守るべきはプランター選び、苗選び、土選び、水のやり方の4点
前出のコンパニオンプランツとは、近くで一緒に栽培すると互いに生育が促進され、病害虫の被害を減らせる植物のこと。初心者でもこの方法を取り入れて栽培できると、竹内さんは言う。
「私が教えている自然菜園では、農薬を使わず自然に育つ仕組みをプランターで再現しています。そのために、コンパニオンプランツも取り入れています。これからの季節におすすめなのは、ミニトマトと一緒にバジルや小ねぎを植える組み合わせです。バジルの香りでトマトに虫がつきにくくなり、逆にミニトマトが赤くなると、その色を嫌がり、バジルに虫がつきにくくなります」

ちなみに、「ピーマン」×「なす」×「にら」、「いちご」×「にんにく」「ねぎ」、「メロン」×「ラディッシュ」、といった組み合わせもおすすめだという。さらに知っておくべきは、プランター・苗・土選び、水のやり方の4点。
「プランターは、大きくて水を5~7リットルためられる底面給水プランターを。大きさの目安は、縦30cm、横60cm、深さ25cm程度。土は花用ではなく、野菜専用培養土でゼオライトを含むものがいいでしょう」
ゼオライトとは細かい穴が無数にあいた鉱石で、通気性がいいため、根に空気が届きやすく、根腐れを防げるのだという。
「余裕があれば、防虫効果のある“くん炭腐葉土”を野菜専用培養土の上に薄く重ねるのがおすすめです。
苗は双葉がついているような若くて小さい苗を選ぶことが大切。初心者はある程度育った大きい苗を選びがちですが、花や実がついていると、養分がそちらに取られ、植えたときに根が張りにくいんです」

ミニトマトとバジル、小ねぎを植える位置は上の図を参考にしてほしい。ミニトマトの苗の根元に市販の根つき小ねぎ(上部の緑色の部分を半分ほど切った白い部分)を2本ずつ植えると、小ねぎがミニトマトを病気から守ってくれる。
「買ってきたばかりの土は乾いているのでプランターの下に水がたまるまで水をやり、その後は週に1回程度、底面の水が切れ、土が乾いたら水やりをします」
4月に植えたミニトマトは7月頃に実をつける。いちばん下の茎に実がついたら折れないよう、ひもで支柱に縛り、実が赤くなったら2週間に1回、ミニトマトの根から離れた部分(上図①~③の部分)に栄養となる固形発酵油かすを埋め、そこに水をかける。実がついている間はこれを2週間ごとに3回程度繰り返す。養分は与えすぎると実がつきづらくなり、虫も増えるので注意すること。

「ミニトマトは赤くなったものからその都度収穫します。そして収穫後の夕方に水をやると味が薄まらずに育ちます。バジルは脇から出てきた小さい芽を残して先端の葉を摘み、水を入れたコップにさしておくと、1週間程度もちます。小ねぎは月1回程度、緑の部分だけ切って、白い部分は抜かないでおきましょう」
市販のミニトマトは10個で約200円。一度に100個収穫できることもあるというので、それだけで約2000円に。かなり節約になる。収穫が終わった後の土は疲れていて、そのままでは再度野菜の栽培はできない。居住地域の規則にしたがって廃棄するのが妥当だが、堆肥や再生材などを使うと再生できるので、慣れたら挑戦するのも手だ。
節約はもちろん認知症予防など、プランター栽培にはいくつものメリットがある。

◆自然菜園スクール代表・竹内孝功さん
自給自足Life代表。有機農業を独学で学び、(公財)自然農法国際研究開発センターの研修を経て、長野県・安曇野で無農薬菜園教室を開設。著書に『プランターで育てる ぐるぐる自然菜園』(ブティック社)など。https://www.shizensaien.net/
※女性セブン2025年4月17日号