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《高額療養費の上限引き上げ問題》加齢とともに増える病気の不安と医療費負担 今後どうなるのか?FPが解説

高額療養費
《高額療養費の上限引き上げ問題》加齢とともに増える病気の不安と医療費負担 今後どうなるのか?(写真/イメージマート)
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医療費は誰でも原則3割負担、たとえ高額な治療を受けても限度額以上は「高額療養費制度」で返ってくる――「世界的に見て、日本の公的医療保険制度は充実している」といわれる。だが、その制度には、多くの人が知らない“落とし穴”がある。高額療養費制度にも“改悪”が加えられようとしているいま、公的保険だけで安心できたのはもはや昔の話だ。

社会保障費増大で公的医療保険は“崩壊”の危機 10%引き上げで2万円以上負担増

公的医療保険が充実する日本では、たとえ病気になったとしても、手厚い制度が“セーフティーネット”になると信じられてきた。しかし高齢化が進行して、医療、介護、年金といった社会保障費の増大が著しく、国はその見直しを進めるようになった。これまで収入によって1~3割負担だった75才以上の医療費を一律3割にすることと同時に議論が進んでいるのが、「高額療養費制度」だ。ファイナンシャルプランナーの松浦建二さんが解説する。

「高額療養費制度とは、1か月間の医療費の自己負担額が一定額を超えたとき、超過分が戻ってくるもの。現行の制度では、一般的な世帯では自己負担上限額は8万~9万円ほどで、“それ以上はかからない”とされています。

ところが、いまの議論では上限がここから10%ほど引き上げられ、その分の負担が増える見込みです」

現在は、自己負担の上限額は年収によって5段階に分かれている。これが2026年8月からはさらに細かく分けた上で、上限額を段階的に引き上げる方向で議論されているのだ。例えば、年収330万円の場合、現在議論されている通りに制度が変わった場合、負担上限額は2万円以上増えることになる。

「ひとまず今年8月からの引き上げは白紙になりましたが、いずれ引き上げられるのは間違いありません」(松浦さん)

2022年10月からは75才以上の医療費負担が一部で1割から2割に見直された。政府は3割負担対象者の拡大も示唆するなど、加齢とともに増える病気への不安に「医療費」の問題は重くのしかかる。「病気になっても、高額療養費制度があるから安心」といわれたのはもはや過去の話。「もしものとき」に慌てず、自分と家族を守るための準備をしなければいけない。

(漫画/サヺリブラウン)
(漫画/サヺリブラウン)
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(漫画/サヺリブラウン)
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※女性セブン2025年5月8・15日号

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