健康・医療

《高齢者のふらつき・転倒リスクを高める薬》降圧剤、かぜ薬、睡眠薬など…年齢を重ねることで薬の作用が過剰に現れやすくなることに注意、多剤併用の問題も

同じ薬をのんでいても加齢により薬が効きやすくなる

忘れてはいけないのは、同じ薬をのんでいても、年齢を重ねるとより薬が効きやすくなることだ。

「年をとると体内の水分量が減るため、水溶性の薬は血中濃度が高くなります。また筋肉が落ちて体脂肪が増えるので、脂溶性の薬は脂肪に蓄積されやすくなる。老化で肝臓や腎臓の働きが衰え、薬を分解して排泄する能力も低下し、薬の作用も過剰に現れやすい」(長澤さん・以下同)

薬の種類が増えれば、ポリファーマシー(多剤併用)による相互作用の問題も生じやすい。

「5種類以上の薬を処方された高齢の外来患者は、転倒リスクが約4.5倍に上昇したというデータがあります。例えば、睡眠薬×降圧剤×利尿薬を組み合わせて服用すれば、それぞれの薬の副作用(鎮静・血圧低下・脱水)が重なり合い、ふらつきやすくなります」

薬の量や組み合わせによって、副作用が強まり転倒しやすくなる(写真/PIXTA)
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「5種類ものんでいない」という人でも、薬の組み合わせには気をつけたい。

「睡眠薬×抗うつ薬×オピオイド鎮痛薬・抗精神病薬の組み合わせは、鎮静効果が強く出てしまう。単剤でのむよりも深い眠気や判断力の低下が生じ、立ち上がったときにふらつきやすい。抗ヒスタミン薬×三環系抗うつ薬×抗パーキンソン病薬など、抗コリン作用のある薬の組み合わせも混乱、めまいなどの副作用が強まり、転倒しやすくなります」

とはいえ、処方薬を勝手に中断するのはNGだ。

「何かしら必要な理由があるので、自己判断でやめるとかえって症状が悪化することもあります。不安があれば主治医に伝えて、薬の量や種類を変えるなど対応をお願いしてください」(坪田さん)

ふらつきや転倒は年を重ねれば命とり。身近な薬のリスクを押さえ、のみ方には気をつけよう。

ふらつきや転倒を引き起こす薬の種類と副作用
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ふらつきや転倒を引き起こす薬の種類と理由
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※女性セブン2025年6月5・12日号

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