
度重なる値上げに増税、医療保険料の負担増、そして年金の“大改悪”と、老後資金への不安はますます募るばかり。老後の暮らしをシミュレーションするうえで忘れてはいけないのが、女性の「おひとりさまリスク」の大きさだ。夫に先立たれひとりになったそのとき、本当はいくら必要なのか、リサーチした。【全3回の第3回。第1回から読む】
「貯蓄」「労働」「運用」で50代から準備を
ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんが言う。
「余裕をもって安心した老後を送るためには、生活費として月約15万〜20万円のほか、医療費150万円、介護費用540万円、家電の買い替えなどの予備費として200万〜500万円もつくっておきたい。そうなると、2000万〜2700万円あれば、ひとりでも安心して生活できるといえるでしょう」
老後資金を確保するための方法が「貯蓄」だ。だが平均額からみると、それだけでは心許ない。
やはり現実的なのは、60才を過ぎても働いて、年金以外の収入を得続けること。プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんが言う。
「70才頃など、長く働けばその分公的年金を繰り下げて、受給額を増やすことができます。そうして労働収入を得ながら増やした公的年金を死ぬまで受け取り続けることが、老後資産寿命を延ばし、老後破綻を防ぐいちばんの正攻法です」
2023年の国税庁の民間給与実態統計調査によると、65〜69才の女性は年収222万円、70才以上は197万円だ。

「定年前、50代のうちから、年間100万〜200万円くらいを“貯蓄のラストスパート”として貯められればベスト。自分の年金の見込み額から逆算して、定年までにいくら必要かシミュレーションしてほしい」(黒田さん)
理想は、60才の時点で「目標金額の7割」を貯めておくこと。70才を過ぎる頃には100%を達成したい。そのためには、50才の時点でiDeCoや新NISAなども活用して1000万円、その後10年間で1000万円、合計2000万円を貯められるのがベストだと三原さんは言う。
「ゼロから預貯金だけで1000万円をつくるには、毎月8万3000円も積み立てなければなりません。
一方、新NISAなどで年利7%ほどで10年間運用すると考えれば、月の積立額は5万9000円ほどで済みます」(三原さん・以下同)
そうしてできた1000万円をさらに年7%で運用し続ければ、10年間で2000万円に到達できる。
ただし70代を過ぎてからの投資デビューは遅すぎる。
「50代の頃と比べると認知機能は下がり、投資詐欺に遭ったり、銀行などですすめられたリスクや手数料の高い外貨建て商品などで損する可能性が格段に高まります」
QOLのために使うべき支出がある
自分がひとりになることを想定する際には、夫の年金や生命保険金、親からの相続財産などをしっかり把握することも大切。それによって必要な貯蓄額はおのずと変わる。
健康寿命を延ばすためには、抑えるべき支出と使うべき支出の見極めも重要。
「医療費や介護費、安全のためのリフォーム代、そして交際費は、老後ほど削ってはいけません。おひとりさまこそ、友人と食事をしたり趣味を楽しんだりすることで、QOL(生活の質)の維持にお金をかけましょう」
年金改悪に物価高、増税と、いくつものお金の不安が老後生活につきまとういま、女性ひとりで生き抜く準備と覚悟が必要だ。


(了。第1回から読む)
※女性セブン2025年7月17日号