料理・レシピ

《実家は「揖保乃糸」作っています》元インディアンスのちょんまげラーメン田渕章裕と 迫る“そうめん”のおいしい食べ方 「揖保乃糸」の多様なラインナップも紹介

ちょんまげラーメン・田渕章裕
実家が揖保乃糸の製麺所のちょんまげラーメン・田渕章裕
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日本三大そうめんといえば、「播州手延そうめん」(兵庫)、「三輪そうめん」(奈良)、「小豆島そうめん」(香川)の3つで、いずれも伝統的な“手延べ製法”が特徴。なかでも播州手延そうめんが誇る「揖保乃糸」は、“夏の国民食”とも言える人気ぶり! 実家が「揖保乃糸」の製麺所で、常にそうめんが身近にあったという田渕章裕とともに、その秘密を深掘り。

【トリビア1】380軒の製造者が同じ味を守っている!

「揖保乃糸」は1つの工場で作られているのではなく、兵庫県のたつの市をはじめ、県南西部の3市2町で製造されている。製造者の数はなんと約380軒も! この地域でのそうめんの歴史は600年以上前に遡るという。明治時代には、伝統と品質を守るべく製造者が組織化され、それが現在の『兵庫県手延素麺協同組合』となり伝統の味を守っている。

そうめんを手作業で伸ばしている
そうめんを手作業で伸ばしている様子
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例年10〜4月の早朝から製造を開始。やわらかい生地を何度も熟成させ、時間をかけて少しずつ延ばすことで、「揖保乃糸」ならではの極細でコシのある麺ができあがる。

【トリビア2】朝早くから36時間(1日半)かけて製造する

【1】こね前

品質を保つため、小麦粉や塩は一括で購入。こね合わせ、生地を作る。

【2】板切

そうめんの生地が渦巻き情になっている
そうめんの製造工程「板切」の様子
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生地を熟成させ、帯状に切り出して桶に巻き込む。数本を合わせて1本にし、この作業を繰り返してコシを出す。

【3】小より(熟成1〜3回目)

熟成→よりをかける、という作業を繰り返し、時間をかけてゆっくりと、太さ6mmまで細くしていく。

麺の生地を細くして巻いている
そうめんの製造工程「小より(こなし)」の様子
写真25枚
麺の生地を細くして巻いている
そうめんの製造工程「小より(こなし)」の様子
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【4】掛巻(熟成4回目)

伸ばした麺を棒にかけている
そうめんの製造工程「掛巻」の様子
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約4時間寝かせたひも状の麺に“掛巻機”という機械でよりをかけながら、2本の管に8の字を描くように掛ける。

【5】小引き(熟成5回目)

麺を吊り下げ伸ばしている
そうめんの製造工程「小引き」の様子
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約3時間熟成させた麺をさらに引き延ばし、朝まで約15時間じっくり熟成させる。

【6】小分け・門干し

麺ひもを“はた(麺を干す道具)”に付け、さらに延ばして細くする。麺と麺の間に箸を通して均等にさばき、乾燥させて仕上げる。

【7】切断

水分12%程度に乾燥させたそうめんを指定の長さに切る。数々の工程を経て、1mmに満たないほどの細さに。

【8】計量・結束・箱詰め

切断したそうめんを計量し、帯に製造者コードを刻印した後に結束。品質チェックを経て箱詰めする。

【9】製品検査

検査指導員による格付検査が行われる。

【10】倉庫熟成

専用の保管倉庫へ。さらに熟成させ、出荷する。

【トリビア3】おいしさいろいろ!多様なラインアップ

「揖保乃糸」は小麦粉の質や麺の太さ、製造時期の違いなどにより、さまざまな等級に分かれている。特に細く、作ることのできる製造者が限られる「三神」、贈答用に絶大な人気を誇る「特級」、倉庫で1年熟成させた「ひね」……、奥深い「揖保乃糸」の世界を見ていこう。

違いは「細さ」だけじゃない!

種類はたくさんあれど、“黒帯”“赤帯”など、帯の色で種類の違いが一目でわかるようになっている。好みの味を探してみよう! ギフト限定商品など、他にも種類もあるそう。

【三神】麺の細さ0.55〜0.60mm

出会えたらラッキー!?絹のように繊細なのど越し。

束のそうめん
揖保乃糸のラインアップで最も細い「三神」
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「揖保乃糸」の最高級品。数あるラインアップで最も細いため、製造が難しく、組合が選抜した数軒の熟練製造者しか作れないという。

【特級】麺の細さ0.65〜0.70mm

束のそうめん
熟練の製造者のみ作る「特級」
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贈答用に大人気!厳寒期のみ製造される。

上質な小麦粉を使い、厳寒期(12〜翌年2月)に作られる。組合が選抜指定した熟練の製造者のみ作ることが可能。

【上級】麺の細さ0.70〜0.90mm

束のそうめん
いわゆる「揖保乃糸」の「上級」
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おなじみ“赤帯”は安定のおいしさ。

全生産量の約80%を占め、スーパーなどでよく見かけるいわゆる「揖保乃糸」がコレ! 長い歴史のある名品。

【縒つむぎ】麺の細さ0.70〜0.80mm

束のそうめん
国産小麦のみを使用した「縒つむぎ」
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国内産小麦のみを使用もっちりした食感に。

国内産小麦だけを使い、ゆがいた後の麺のツヤがよく、もちもちした食感が特徴。力強い小麦本来の風味を味わえる。

【播州小麦】麺の細さ0.90〜1.10mm

束のそうめん
粘りが強い播州産の小麦を配合した「播州小麦」
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播州産の小麦粉をブレンド、コシがあって満足感あり!

播州産の粘りが強い小麦『ふくほのか』と、弾力性のある『ゆめちから』を使用。もちっとシがあり、食べ応えも満点!

【熟成麺】麺の細さ0.70〜0.90mm

束のそうめん
作れるのは、国家資格の“製麺技能士”だけの「熟成麺」
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国家資格の“製麺技能士”だけが作れる熟成麺。

職人技の伝承を目的に誕生した厚生労働省認定の国家資格“製麺技能士”のみ作れ、製造後ゆっくりと1年熟成させる。

【太づくり】麺の細さ1.10〜1.50mm

束のそうめん
通常よりも太めの「太づくり」
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北海道産小麦『きたほなみ』を使い、通常よりも太めのそうめんに。太くすることで、心地よい歯切れを楽しめる。

いつもの味を格上げ!そうめん食べ方四か条

“ゆでるだけ”とシンプルだからこそ、ちょっとしたコツで味に差が出るそうめん。いつもの味が劇的においしくなる4つのポイントを伝授!

【1】帯はすべて外してからゆで始めるべし

そうめんはゆで時間が命。1把ずつ帯を外していては、ゆで時間に差が出てしまう。ゆでる前に帯はすべて外し、一気に湯に入れるのが鉄則!

そうめんの帯を外している
茹でる前に帯はすべて外す
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【2】そうめんよ、踊れ!たっぷりの湯でゆであげるべし

そうめんが踊るくらいのたっぷりの湯でゆでるのが必須。鍋が小さくて窮屈だと、麺が均一にゆであがらないうえ、余分な塩分が残ってしまい、おいしくゆがけない。1人前(100g/2把)で、約1Lの湯が目安。

そうめんを茹でている
そうめん1人前(100g/2把)あたり約1Lの湯が目安
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「ゆで時間1分50秒が好み」(田渕・以下同)

【3】ゴシゴシ“もみ洗い”でぬめり&塩分をしっかり落とすべし

ゆであがったら素早くザルに移し、水ですすいで粗熱を取った後、流水でしっかりもみ洗いを。ぬめりが取れ、水が白く濁らなくなればOK。そうめんに含まれる塩分が洗い流され、雑味のないクリアな味に。

流水でそうめんをもみ洗いしている
粗熱を取り、流水でしっかりもみ洗い
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「氷でキュッと締めてもOK!」

【4】開封後は冷蔵庫で保存すべし

「揖保乃糸」は合成保存料などを一切使用していない天然の自然食品。そのため周囲の環境に左右されやすい。開封前は直射日光が当たらず、通気性のよいところで保管を。開封後は密閉できる袋に入れ、冷蔵庫で保存すると安心。

冷蔵庫にそうめんを入れている
開封した麺は密封して冷蔵庫へ
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2つの「揖保乃糸」食べ比べてみた!

あなたはどっち派?

そうめんとちょんまげラーメン田淵
「上級」と「特級の“ひね”」を食べ比べ
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おなじみの赤帯!「上級」

「しみじみウマイ! 夏休みの昼飯を思い出して、ばあちゃんの姿まで浮かんできて涙出そうになったわ。懐かしい味。ぼくのソウルフード」

ちょんまげラーメン田淵
「やっぱりコレや!」
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1年熟成させた希少品「特級の“ひね”」

「赤帯の上級だって細いのに、もっと極細! スルスルッとのど越しがよくて、口の中からもう消えてる。さすが小麦の旨みも濃厚やね」

ちょんまげラーメン田淵
「食べた瞬間、全然違う!」
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ひねとは…その年に出荷されるそうめんを「新」、管理の行き届いた専用倉庫でさらに1年熟成させたものを「古」と呼ぶ。じっくり熟成させるとよりコシが強く、舌触りもなめらかになる。

手延べ製法で仕上げたラーメンやパスタも!

「揖保乃糸」では手延べ製法で仕上げたひやむぎやうどん、中華麺、パスタなども販売。手延べ特有のツルツル&もちもちした食感がクセになる。

パスタ

『揖保乃糸』の「パスタ」
『揖保乃糸』の「パスタ」
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ゆで時間は2分〜2分半。ソフトな食感の中に弾力があり、短時間でゆであがるのも魅力的。冷製パスタにぴったり!

うどん

『揖保乃糸』の「うどん」
『揖保乃糸』の「うどん」
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味わいの違う4種類のうどんを販売。手延べそうめんの製法が生きた絶品うどん!

中華麺

『揖保乃糸』の「中華麺」
『揖保乃糸』の「中華麺」
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冷やし中華にしても!市販のラーメンとはひと味違ったおいしさ。ツルツルとのど越しがよく、冷たくして食べても◎。

◆田渕章裕

ちょんまげラーメン・田渕章裕(左)、きむ(右)
ちょんまげラーメン・田渕章裕(左)、きむ(右)
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6月に『インディアンス』から『ちょんまげラーメン』に改名。『M-1グランプリ』では、2019年より3年連続で決勝に進出。8月16日に「ルミネtheよしもと」にて、改名後初となる単独ライブ『心を込めて準備中』を開催予定。

取材協力/兵庫県手延素麺協同組合 撮影/菅井淳子(人物・料理) 調理・スタイリング/植田有香子 取材・文/岸綾香

※女性セブン2025年7月23日号