健康・医療

《身近な食品に潜むリスク》「糖質」にはドーパミン分泌で依存性高まる恐れ、「植物油」の不飽和脂肪酸は心臓血管病を招くことも “毒抜き”のヒントは昔ながらの和食に 

糖質や植物油も健康に影響を及ぼす可能性がある(写真/PIXTA)
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パン、牛乳、サラダ油、砂糖──毎日食べているものが「毒」と言われたら誰しもドキッとするだろう。しかしそれは冗談ではなく、着実に体を蝕み続けているのだ。私たちの食生活に潜む4つの食品のリスクを知り、健康な体作りに励みたい。「小麦」と「乳製品」のリスクについて説明した前編に続き、後編では「糖質」と「植物油」について紹介する。【前後編の後編。前編から読む

ドーパミン分泌で「糖質中毒」に

小麦や乳製品よりはるかに高い「依存性」に警鐘が鳴らされるのが砂糖だ。銀座エルディアクリニック院長で『四毒抜きのすすめ』の著者、吉野敏明さんが言う。

「1960年代と比較して、日本の糖尿病患者は約50倍になっています。糖分は、糖尿病リスクを高めるだけでなく体を糖化(余分な糖がたんぱく質と結合)させ、細胞の老化を促進しさまざまな病気のリスクを高めます。また、摂取することで血糖値が急激に上がる血糖値スパイクは血管に損傷を与え、血管病のリスクに直結するのです」(吉野さん)

糖質は、脳の快楽報酬系に働きかけ、ドーパミンが分泌されて依存性を高めると解説するのはAGE牧田クリニック院長の牧田善二さんだ。

「砂糖はもちろん、砂糖が使用されたスイーツ、炭水化物にも糖質はたっぷり含まれている。糖質を摂取すると脳の快楽報酬系が働き、ドーパミンが分泌されて人は快楽を感じます。それを繰り返すうちに、“糖質中毒”になってやめられなくなってしまう。ドーパミンが過剰に分泌されれば、睡眠障害や精神不安でうつ病につながる可能性も考えられます」(牧田さん)

砂糖の過剰摂取は糖尿病や動脈硬化などを招き、循環器系に甚大な影響を与えるという(写真/PIXTA)
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オリゴ糖やてんさい糖、もしくは果物など、体にいいとされる糖分もあるが、これらにも注意が必要だ。

「たしかにオリゴ糖は腸内環境を整えますし、黒糖やてんさい糖は白砂糖に比べれば血糖値を上げにくい。それでも摂りすぎれば、体の糖化や依存を招くことに違いはありません。また、現代の果物は栽培努力と品種改良で非常に糖度が高くなっています。砂糖と同じ嗜好品と考えるべきです」(吉野さん・以下同)

砂糖よりカロリーは低いものの人工甘味料は論外。

「人工甘味料は血糖値の上昇は防ぐものの、舌にある味蕾が甘みを感知する時点でインスリンが分泌されることが確認されています。それによってすい臓に負担がかかり、糖尿病リスクを高めるのです」

油が酸化すると血管が傷つく恐れ

四毒の最後の1つが植物油だ。マーガリンやファストフードなどに含まれるトランス脂肪酸がLDHコレステロールを増やし、心臓血管病のリスクを高めるのはWHOなどがすでに警告している通り。吉野さんは「トランス脂肪酸と同じくらい注意が必要な植物油がある」と解説する。

「植物油脂には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2種類がありますが、“毒”となるのは不飽和脂肪酸です。特に不飽和脂肪酸の一種であるリノール酸が問題で、体内に入るとTNF-αという炎症物質に変わり、パーキンソン病、リウマチ、1型糖尿病、多発性硬化症などの自己免疫疾患の原因となると考えられています。

恐ろしいのは、過剰に摂取すれば血管を傷つけ、穴を開ける場合すらあることです。リノール酸は酸化しやすく体内でも酸化し、アルデヒドという物質が生成されます。このアルデヒドが血管の内膜に付着し、血管を傷つける。それが血管を硬化させたり、血栓のもとになることで動脈硬化、ひいては脳卒中や心筋梗塞を招く恐れがあります」

四毒は免除系に影響を与えたり、がんリスクを高める可能性がある。体の異変を感じたら食生活を見直そう(写真/PIXTA)
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アルデヒドが影響を与えるのは血管だけでなく、循環器や神経にも疾患を招くと吉野さんは続ける。

「血管同様、神経にも穴を開けて、てんかん発作や統合失調症といった神経疾患のリスクも高めます」

吉野さんは「できれば油は一切摂らないことが望ましい」と言うが、難しい場合にはどうすればいいか。杏林予防医学研究所所長の山田豊文さんは「リノール酸を置き換えながら減らす」ことをアドバイスする。

「これまで使っていた高リノール酸の油を、炎症を抑えるα-リノレン酸の豊富な油に置き換えることで、体内の脂肪酸バランスが整います。植物油なら、製造時の酸化やトランス脂肪酸の心配のない、オーガニック原料で真っ黒の瓶に入った、未精製の良質な亜麻仁油を最もおすすめします」(山田さん)

オメガ3系ではないがオリーブオイルもいい。

「健康効果が検証済みのオリーブオイル、特に高品質のエクストラバージンオリーブオイルが、油として使うならばおすすめです。ただしどんなによい油も時間が経つと酸化して、きわめて毒性が高くなるので短期間で使い切れる量で買いましょう」(牧田さん)

日本人が食べてきた和食にヒント

さまざまな疾患を予防し、現代病から体を守るためには四毒を食生活から“排除”することが必要だ。ただし、すぐに実行に移すのは難しいだろう。

「炭水化物源は本来、クリーンなエネルギー源として私たちに必須の食べ物であり、できるだけ精製されていないものを選ぶと体にとってよりよい選択になります。精米時にそぎ落とされてしまう糠や胚芽には、マグネシウムなどのミネラル、ビタミン、食物繊維が豊富。同じ米を食べるなら、玄米が理想的です。農薬の心配がないものを選びましょう」(山田さん)

料理の味つけには砂糖ではなくみりんを、調理には油を使用せず煮込みや蒸しもので、乳酸菌は発酵食品から—つまり古来、日本人が食べてきた和食にこそ“毒抜き”のヒントがある。

「昔ながらの和食ならば油は少量、小麦粉も牛乳も使いません。ご飯、みそ汁、煮物、ぬか漬けなどが代表的ですが、一種を食べ続けず栄養バランスを考えて食べましょう」(吉野さん)

戦後80年、飽食の時代を100才まで生きる知恵は四毒抜きにある。

(前編から読む)

※女性セブン2025年7月24日号

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