健康・医療

「1万人を60年追跡調査した研究」から導かれた食や運動の「健康習慣」、「魚と野菜は否定する要素ない食材」「朝食とる人ほど肥満や糖尿病のリスク減る」 

運動の健康効果は「治療」に匹敵する

いまや医師の間では、「運動は治療と同じぐらいの効果が見込める」というコンセンサスが、定着しているほどだ。日本の研究機関やWHO(世界保健機関)も週に150分以上の有酸素運動が健康寿命を延ばすと推奨している。

医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんは、日本人の運動習慣のなさを嘆く。

「運動はがんを含めた20種類以上の慢性疾患を予防することがわかっています。運動習慣がある人は2~4割ほど骨折が予防でき、高齢者の死亡要因になっている要介護の予防につながります」(上さん・以下同)

歩く女性
適度な運動は治療に匹敵する運動効果が見込める(写真/PIXTA)
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ではどのような運動が有効なのか。

「階段を上る、少し速く歩くという程度でも充分な効果があります。重要なのは脈拍が安静時より少し上がることで、目安は『200-年齢』を超えない範囲です」

WHOの試算では運動の機会が多いほど全死亡リスクを2~3割減らし、寿命が3~4年延びるとされる。だが何事も限度がある。

「激しい運動は体内で炎症が起こり、細胞を傷つけてがん化の要因になると指摘されています。運動をするほど筋肉を増やす『グロースファクター』と呼ばれるたんぱく質が増え、これが多すぎるとがんを増やす可能性があります」

大事なのは生活の中で自然に運動できる環境を作ることだ。

「歩くことによる健康効果は複数の研究で明らかになっています。駅まで15分ほどの距離に住めば、駅の往復だけで30分の運動に、犬を飼えば朝晩の散歩で自然と必要量の運動ができます。

日常での工夫では、買い物を商店街で行えば、店を見て回ることでスーパーより運動になる。エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を使うことも有効です」(大平さん・以下同)

こうまで運動が健康に有効なのは、日本人が肥満に弱い民族という背景がある。

「欧米人に比べて日本人はそれほど重度な肥満でなくても高血圧、高血糖、脂質異常症が起こりやすい。

一方で体重が増加してもこれらの異常が出なければ、BMI27・5までは日本人でも寿命が長くなります」

多少のストレスががんと認知症を遠ざける

「ストレスが健康によくない」ことは周知の事実だが、人生のストレスは40代をピークにして60代では半減することがわかっている。

理由は子育てが終わり、仕事をリタイアして人間関係もシンプルになるなどが考えられるが、人間関係が希薄になる方が健康には悪いので注意したい。

「配偶者がいる高齢者は男性で10年、女性で4年寿命が長くなります。これはストレスの解消法で『家族や友人と話す』と回答した人の高血圧が4割少ないのと同じ傾向です」

岡田さんは「多少のストレスは体に必要」と言う。

「ストレスがほぼない人は認知症になりやすいという研究もあります。またストレスが多い人ほど、がんのリスクが下がることもわかっています」

多少のストレスは体に必要となる(写真/PIXTA)
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解消法として「笑う」ことは重要だ。作り笑いで声を出すだけでも血糖値や血圧が下がるという。

「人がいちばん自然に笑えるのは会話をしているときです。笑いに関する疫学調査では、ほとんど笑わない人はよく笑う人と比較して要介護リスクが2倍になりました。

そのほか、糖尿病リスクが上がることもわかっています。笑うために外出すると運動にもなり、うつ病対策にもなります」(大平さん・以下同)

積極的に「ありがとう」と感謝を口にするのもいい。

「感謝されるよりも、感謝する方がQOL(生活の質)の上がり方が大きいことが、多数の研究から判明しています。人のQOLを上げて幸せにしながら自分も健康になれるのが“ありがとう”という言葉なのです」

健康の大正解は「知る」だけでなく、「実践」し「続ける」ことで寿命が延びる。

※女性セブン2025年7月31日・8月7日号

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