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《上演30周年スペシャル》劇団四季『美女と野獣』657万人が見た愛あふれるステージ

特別カーテンコールでは観客から惜しみない拍手が贈られた(C)Disney
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 1995年、東京・大阪の2会場で同時上演された『美女と野獣』を皮切りに、30年にわたってディズニーミュージカルを上演し、計7作品で3200万人以上を動員してきた劇団四季。『女性セブンプラス』では、ディズニー・シアトリカル・グループと劇団四季が初タッグを組んだ原点ともいえる『美女と野獣』の30周年特別カーテンコールの模様に加え、愛情たっぷりの舞台装置へのこだわりをお届けします!【前・後編の前編】

カーテンコールは総立ち&万雷の拍手で

コッグスワース役の雲田隆弘(右)とルミエール役の大木智貴が来場者に感謝の言葉を(C)Disney
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 11月24日に日本上演30周年を迎えた『美女と野獣』。当日はお祝いムードに包まれ、「愛の物語」らしく、来場者にはロゴやバラの花びらがあしらわれたバルーンが手渡された。来場者は友人と連れ添った女性客のほか、男性ソロや子ども連れ、親子三代で訪れた観客とさまざまで、特別な日を迎えるという高揚感が伝わってきた。

 観客の拍手の力強さと切れ味にも、いつも以上に熱を感じた。本編終了後の特別カーテンコールでは、コッグスワース役の雲田(くもだ)隆弘が「作品を愛し、育んでくださったすべてのお客さまに、出演者、スタッフ一同、心より御礼申し上げます」、そしてルミエール役の大木智貴が「これからも作品の感動をお届けできますよう、一回一回の舞台を精一杯つとめてまいります」と感謝の言葉を述べると、ワッと大きな拍手が。

 そして、「次に何が起こるの?」とでも言いたげに、スッと拍手が鳴り止んだ。すると、まるでそれに応えるかのように、『美女と野獣』と『人間に戻りたい』が特別バージョンで披露された。客席にハート型のカードが紙飛行機のように舞い落ちると、その感動は最高潮に。盛大な拍手とともにスタンディングオベーションの輪が広がっていった。拍手は鳴り止まず、カーテンコールは3回続いた。

『美女と野獣』は「愛の物語」。来場者にも“愛”が届けられた
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 終了後も興奮冷めやらぬ様子で、上演30周年というメモリアル・デーを記録せんと、記念撮影をする長い列があちこちで見られた。

『ライオンキング』『アラジン』『アナと雪の女王』でも30周年の特別なカーテンコールが

 この日は、現在上演中のディズニーミュージカル『ライオンキング』『アラジン』『アナと雪の女王』でも、カーテンコールで舞台挨拶が行われた。

『美女と野獣』に続くディズニーミュージカル2作目として、1998年から日本で上演を続けてきた『ライオンキング』では、シンバ役の山下啓太が舞台挨拶を。

 今年、上演10周年を迎えた『アラジン』では、ジーニー役の瀧山久志が、そして、2027年1月に東京公演の千秋楽が決まった『アナと雪の女王』では、エルサ役の岡本瑞恵が、それぞれディズニーミュージカル上演30周年を報告するとともに、「劇団四季のディズニーミュージカルを愛してくださるすべてのお客さまに、出演者、スタッフ一同、心より御礼申し上げます。これからも作品の感動をお届けできるよう、精一杯つとめてまいります」と挨拶した。

『ライオンキング』では、シンバ役の山下啓太(中央)が挨拶。12月には日本上演27周年を迎える(C)Disney
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『アラジン』では、初演から10年にわたってランプの魔人・ジーニーを演じてきた瀧山久志(中央)が感謝の言葉を述べた(C)Disney
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『アナと雪の女王』で挨拶したのは、2021年の初演でもエルサ役を務めた岡本瑞恵(中央)(C)Disney
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 どの作品でも、惜しみない拍手が贈られたこの日のカーテンコール。日本のミュージカル界を牽引してきた劇団四季が、30年という長きにわたり、世代を越えて愛されてきたことをあらためて実感する1日だった。

30年前、17か月半もの東京・大阪同時上演を実現 

 あらためて、ミュージカル『美女と野獣』の歴史を振り返ってみよう。1991年に公開され大ヒットした長編アニメーション映画の舞台化で、ディズニーが初めてのライブミュージカル製作に乗り出した記念すべき作品だ。

 1994年4月にブロードウェイで開幕するや大好評を博したが、劇団四季は1993年末のトライアウト(試演)期間中には、すでに本作の情報をキャッチしており、その後すぐに上演権獲得に向けてコンタクトを始め、提携したという経緯がある。

 そんな初のディズニーとのパートナーシップとなった『美女と野獣』は、前代未聞の東京と大阪の同時上演を実現。2公演同時に売り出された前売りチケットは、発売初日だけで35万枚に達したほか、東京公演は当時の日本演劇史上初の28か月のロングランを達成した(東京公演:1995年11月24日〜、大阪公演:1995年12月17日〜 同時上演期間は17か月半)。以来、10都市で上演を重ね、公演回数は6648回、総入場者は約657万人にも及ぶ(2025年11月24日時点)。

 また2022年からは東京ディズニーリゾート内に位置する舞浜アンフィシアターでの公演をスタートさせ、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドと劇団四季のコラボレーションも、これが初めてとなる。

『美女と野獣』のカンパニー一同で30周年の舞台挨拶を(撮影/荒井健)(C)Disney
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ワクワク感をかき立てる、圧巻の大ダンス 

 『美女と野獣』の見どころの1つは、大人数で繰り広げられる歌とダンスのシーン。

ルフウと酒場の客たちが、ベルに振られて不機嫌になっているガストンを「最高の男」と誉め讃え、リズムを刻みながらビアマグを互いに打ち鳴らす。

イケメンで筋肉隆々のガストン(後方中央)は町の人気者。ルフウや酒場の客たちに乗せられて、ビアマグを手に、皆で歌って踊りまくる(C)Disney
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 そしてもう1つの圧巻のダンスシーンといえば、魔法で燭台にされた給仕長のルミエールたちがベルをもてなす、『ビー アワ ゲスト(おもてなし)』。ダイニングルームを舞台にナプキンや食器、カトラリー、スパイスなどが次々登場して、歌とダンスでベルを巻き込みながら楽しませる。

花火も飛び交う、ゴージャスなダンスシーン(C)Disney
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 対照的に、野獣が自らの境遇を憂いて歌う場面では、シンプルな舞台装置が、野獣を引き立てる。その美しくも悲しい歌声に、観客は圧倒され、毎度、大きな拍手が巻き起こる。

野獣が心の内を歌声にのせる。圧巻の歌唱が暗闇に響く(C)Disney
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  動と静、喜びと悲しみといった、対局する場面が楽しめる『美女と野獣』。【後編】では、物語を彩る舞台装置の秘密に迫ります!

取材・文/辻本幸路 撮影/五十嵐美弥

(後編に続く)