緩和ケアが進化しても医療の選択を誤ると人は楽に逝けない
現在は緩和ケアの手法や鎮痛薬などの進歩により、終末期の痛みをかなりの割合で緩和できるようになったが注意点もある。
「緩和ケアが進化しても医療の選択を誤ると人は楽に死ねません。例えば回復の見込みが低いのに延命治療を行うと、点滴やチューブにつながれて患者が苦しむことになります。そうした事態を避けるためにも事前の話し合いやエンディングノートなどの準備が欠かせません」(後閑さん)
在宅医療を進める際、緩和ケアの備えも同時にしておくことを舛森さんは助言する。
「本人の考えが変わったり、患者や家族が精神的につらくなって施設に入りたいとなるケースがあります。緩和ケア病棟のある地域なら、一度外来を訪れてつながっておき、いざとなったときに入院させてもらえる関係性をつくっておくことをおすすめします。
自宅で亡くなることをめざしつつ、緩和ケア病棟という選択肢を残しておくことが大切です」
施設や病院で安心して最期を迎えたい場合は「看取りの有無」を確認して。
「施設は『終の棲家』のイメージがありますが、なかには看取りはやらず死期が迫ったら病院に搬送する施設があり、望まない延命措置など苦しみを増やす医療を施される可能性があります。また看取りはするものの年間1例程度で、慣れない看取りをされて患者や家族が苦しむケースもあります。施設に入る場合は、ある程度看取りの経験があるところを選ぶことが大事です。
また、病院も“緩和”ではなく“療養”を掲げている場合、最期まで診てもらえるかは病院ごとに方針が異なります。亡くなる直前に自宅や施設へ移ることを求められる場合もあるので、そうした点も事前に確認しておきましょう」(舛森さん)
最後に確認したいのは、親の死に際し、残された側の悲しみや後悔をすべて取り除くことはできないということ。小澤さんが語る。
「亡くなる人が大切であるほど、どんな最期であっても残された者は悲しみます。“悲しまないことはない”ことが大前提です」
後閑さんもこう言う。
「その時々にベストの選択をしても予想通りにいかないのが看取りであり、後悔はするものと思ってほしい。
そのうえで親がまだまだがんばることを期待しつつ、いざというときの心構えをしておくことがなにより看取りの後悔を減らす備えになります」
親を看取る際、お別れをする機会がなかった場合も心残りにつながる。
「お別れをする時間がないと、残された家族の悲しみが強くなることが研究で明らかになっています。感謝の言葉などは直接親に伝えることが大切であり、難しければ手紙に書いたり医療者を通じて伝えてもらったりすることが望ましいです」(後閑さん)
ちなみに葬儀関連企業などからなる「燦ホールディングス」が30〜60代の男女500人に行った「人生の最後と別れの際の思い」に関する意識調査では、「伝えたかったけど伝えられなかった言葉」のトップは「ありがとう」だった。
元気なうちからの準備を含めて、各ポイントで「看取る力」を発揮して親の人生を締めくくりたい。看取る力は「信じて見守る力」に通じると後閑さんは言う。
「本人は最期まで生き切ろうとしています。見守る側は“どうせ死ぬんだから”と諦めの境地で接するのではなく、親の力を最期まで信じて見守ることが重要です。その姿勢があれば、親を穏やかに見送ることができると思います」
親の尊厳を守り、親子で準備を重ね、最期に「ありがとう」とお互いに伝え合える看取りをめざしたい。

※女性セブン2026年8月20・27日号