2024年、デビュー51周年を迎えたシンガーソングライターのさだまさし(72才)。以前、『女性セブンプラス』で子供時代にはじまる楽曲の思い出「マイさだまさ史」を綴ったライターの田中稲氏が、先日、初めてコンサートに参戦した。田中氏が、さだまさしに誘われた「2時間半の旅路」をレポートする。
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51周年、音楽機関車“SD51”が走る!
開幕前のコンサート会場の客席は、駅のホームに似ている。新たな世界への旅に胸躍らせ、席でソワソワしている人。お友達に「こっちこっち」と手を振りながら誘導している人。パンフレットを観ながらゆったりと待つ人。チケットを、愛しそうに眺めている人——。
12月3日、大阪フェスティバルホールにて開催された「2024さだまさしコンサートツアー“51”」。どうやらここも、いたずら好き、話し好きの旅先案内人、さだまさしさんによるミステリーツアーの集合場所のようなのだ。客席に座りながら回りをキョロキョロと眺める私も、もちろん旅人の一人。
いよいよ暗転——。会場に、シュポーッと汽笛が鳴り響く。「D51(デゴイチ)」ならぬ、“SD51”が到着したようだ。
いざ、乗りこもう……!
舞台に、銀色のコートに身を包んださださんが登場。まずは、旅の心得とばかりに、『驛舎(えき)』『それぞれの旅』『指定券』が続く。あの高く美しい声を響かせ、バイオリンをひょいひょいと追いかけるように右を向き、左を向き、弦を操る。旅仲間・さだ工務店(ツアーバンド)が奏でるメロディと絡まりながら、音楽の汽車は加速する!
実はさださんのコンサート初参戦の私。『驛舎』は何年ぶりに聴いただろう。思い込みが激しく空回り連続だった若い頃(今も大して変わってはいないが)、大丈夫、心の荷物を軽くすればいいよと慰められた一曲だ。これが聴けるとは……。
まさかのミステリーツアー宣言
しかし、しみじみ感動に浸る間はなかった。なぜなら、MCが流れるように始まったからである。
熱心なさだファンの友人から「ものっすごくしゃべるで! なめたらあかんで」と言われており覚悟はしていたが、それでもなめていたと気づく。私は『男は大きな河になれ〜モルダウより』が大好きなのだが、彼のトークは、まさに立て板に水ならぬ、立て板にモルダウ。想像以上によく話される。よどみなく、リズミカルに! なかでも、4万円するベルリンフィルハーモニーのチケットをゲットしておきながらすっかり忘れて仕事を入れ、コンサートをしている途中で「あれっ、今日もしかして」と思い出した、という話はツボに入り、ガッハッハと手を叩いて笑ってしまった。
そのまま話は続き、「初めてさだまさしのコンサートに来た方、どのくらいいますか」という質問コーナーに突入。私を含め、かなりの手が挙がる。それを見て、「ごめんね、今回、知らない曲ばっかりだと思う。ごめんね」と繰り返すさださんは、申し訳なさそうに見えてとっても嬉しそうだ。
客席の空気も「(ニヤリ)受けて立つ」とばかりにふんわり上がる。オイオイ、年齢層は高いけど、さだファン、冒険者ばかりではないか。この旅どうなる!?