《高齢者が慎重に検討すべき手術》人工股関節の手術後に静脈に血栓ができやすくなる可能性、レーシックで緑内障の発見が遅れるケースも…不安を抱いたらセカンドオピニオンを

あらゆる病気は早期発見、早期治療が是とされている。また、医療技術の進化によって、かつては治らなかった病気も、治るようになってきた。しかし、中にはリスクを伴う手術というものもある。特に高齢者には体にメスを入れる手術が大きな負担になることもあるのだ。そこで高齢者が、慎重に検討すべき手術について、専門家に取材した。【全3回の第2回。第1回から読む】
自費診療で100万円超の手術も
足腰が衰えるなど、高齢になると問題が多くなる整形外科の分野でも、慎重になるべき手術は少なくない。戸田リウマチ科クリニック院長の戸田佳孝さんが言う。
「変形性股関節症などで痛む関節を人工物に置き換える人工股関節の手術は、術後に足を動かさずに血流が滞ると、静脈に血栓ができる『深部静脈血栓症』を発症しやすくなります。血栓が肺に飛べば肺梗塞になり死に至ることもある。高齢になり筋力が落ちて人工股関節が脱臼してしまう場合もあるので、充分なリハビリが必要ですが、それに耐えられるのかどうかを事前に考える必要があります」
根本的な治療が難しい「脊柱管狭窄症」も、手術を受けない選択肢を検討するべきだという。
「加齢で背骨の神経の通り道が狭くなり、神経が圧迫されて痛みが生じるのが脊柱管狭窄症です。ある研究では、背骨の一部を切除する椎弓切除術を受けた患者と受けなかった患者の8年後の症状改善度を調べたところ、術後の数年間は楽になったものの、8年後の改善度に差はないという結果が明らかになりました。さらに手術を受けた患者のうち約18%が再発して再手術を受けていることもわかっています。手術を提案されても、予後を考え熟慮してほしいです」(戸田さん・以下同)

自由診療で行われる座骨神経痛のレーザー手術もおすすめできないという。
「レーザーを使用して椎間板内の圧力を低下させ、神経への圧迫を軽減する治療法で、メスを入れずに短時間で日帰りできるというメリットがあります。しかし、自由診療なので100万円以上の高額請求をするクリニックも散見される。また医療事故が発生した場合、保険診療と比べて公的な救済を充分に受けられない可能性もあるでしょう。
レーザー手術を受けた患者のうち15.9%、6人に1人が『やらない方がよかった』と答えた調査もあり、一時的な症状の悪化や、結局再発してしまうリスクも報告されているので慎重な判断が必要です」
加齢や肥満でひざの軟骨がすり減る「変形性膝関節症」は、症状を訴える人の増加とともにさまざまな治療法が確立してきている。しかし、どの治療でもいいというわけではない。
「2023年から健康保険適用となった、冷却型ラジオ波治療法が最近流行しています。痛みを軽減して日帰りできる手術ですが、根本的な治療ではなく、痛みをとる効果も長続きしないことがわかっています。60才以上の人なら、根本的な治療である人工関節置換術をおすすめします。人工股関節とは異なり、素材の耐久性向上や体への負担を軽減する術式も開発され、前向きに検討していいでしょう」
変形性膝関節症に対するもうひとつの手術として、「半月板形成術」がある。しかし、ひざの痛みがそもそも半月板にあるかは、精査が求められる。
「MRI検査で半月板に傷がついているという理由で手術をする医師がいるのですが、それは痛みの原因ではないことが多いのです。ひざに痛みがなく、極度の肥満がない45〜55才の男女236人の調査をした研究では、47%の人が半月板に傷があったものの、同時に74.6%の人が軟骨を損傷しており、40.3%の人は骨髄浮腫、17%の人は靱帯が損傷していました。
つまり、半月板に損傷があるからといって痛みが出るわけではない。60才以降はほとんどの人の半月板がすり減っているので、これを理由にした手術を主張する医師の意見をうのみにしてはいけません」