健康・医療

免疫力のウソとホント|「運動して免疫力UP」「免疫力は高いほどいい」は間違い!?

「コロナにかからないよう免疫力を上げなくちゃ」とヨーグルトなどを1日何回も食べたり、運動をいつも以上に頑張っていたりしませんか? 実はその過剰な行為が体を壊すもとになっているかも。巷にあふれる免疫力信仰のウソ、ホントをお伝えします!

くしゃみをするマスクをした女性のイラスト
免疫力が高すぎると、本来反応しなくてもいい花粉にまで免疫の防御反応が働いてしまい、花粉症が引き起こされる
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「免疫力は高ければ高いほどいい」は間違い

「よく、免疫力を上げよう!などと言いますが、高ければいいわけではありません。むしろ高すぎると弊害も起こります」と言うのは、いりたに内科クリニック院長の入谷栄一さん。

免疫力が高すぎて起きる疾患の代表は花粉症だ。

◆免疫力が強すぎると過剰反応でアレルギーに

「ウイルスや細菌などの病原体に対して、防御のために働くのが免疫力ですが、その力が強すぎると、本来、反応しなくてもいいものにまで、過剰反応してしまいます」(入谷さん・以下同)

花粉だけでなく、そばや小麦、卵といった食物も同様に、過剰に防御反応が働いた結果、アレルギーとなるのだ。

「もちろん、低すぎると、ウイルスに抵抗できず、風邪やインフルエンザにもかかってしまいます」

健康を維持するためには、免疫力は高い、低い、いずれにも偏らない状態であることが理想なのだ。

免疫力は上げたり下げたりするものではなく、中庸にするもの

マスクとウイルスのイメージ
写真/ゲッティイメージズ
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「免疫とは、体内にウイルスや細菌などの異物が侵入した際に、体を守ろうと防御したり、攻撃して排除しようとする自己防衛機能のことです」

と、入谷さんは解説する。また、免疫力という言葉は、医学用語ではない。

◆免疫には自然免疫と獲得免疫がある

「“免疫力を高めて、コロナに克つ!”といわれますが、この場合、免疫機能が正常に働いているという意味で使われることが多いのです。免疫には、大きく2つの種類があり、1つは生まれつき備わっている自然免疫で、もう1つはウイルスなどに感染して得られる獲得免疫です」

自然免疫とは、目や鼻、口、腸管などの粘膜が異物をキャッチし、体内への侵入を防ごうとする働きと、それをくぐり抜け体内に入った異物(病原体)を攻撃し、排除しようとする働きのこと。

また獲得免疫とは、一度かかった感染症を免疫細胞で記憶し、抗体を作って、再び同じ病原体が体内に侵入したときに、攻撃して殺す機能のこと。ワクチンは、この仕組みを活用し、作られる。

「インフルエンザなどはワクチンがありますが、新型コロナウイルス感染症は、抗体についても不明なところがあり、ワクチンもない。ウイルスとは自然免疫で闘うしかないのです」

つまり、感染予防のためには、まずウイルスを体内に入れないこと。人との接触を減らすなどした上で、自然免疫を強化するしかない。

「若いから免疫力が高いので、病気にはなりにくい」はウソ

若いほど免疫力が高いというのは本当。ただし、若い人がかかりやすい疾患がある。

加齢ごとに免疫機能が低下していくグラフ
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「上のグラフのように、免疫機能は30才前後をピークにどんどん下がっていきます。若い人はウイルスが体内に侵入しても免疫力が高いため、風邪やインフルエンザも軽症で済むことが多い」

◆高齢になるほど花粉症になりにくい理由

ただし、前述したように、免疫力が高すぎて、アレルギー反応が出やすいのも若い人にみられる特徴だ。

「高齢になると花粉症などのアレルギーの発症率が低くなるのは免疫力が落ちるためです。ただし、その分、がんになったり、インフルエンザにかかると重症化するリスクも高まります」

「鍛えれば免疫力もアップする」ということはない!?

ランニングをする若い夫婦と2人の子供
30分程度のランニングなら問題ないが、息が上がるようなハードな運動は免疫機能を下げてしまう(写真/PIXTA)
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ハードな運動をすることで、免疫力を下げてしまうこともある。コロナに負けないために、ハードな運動で体を鍛えようというのはかえって免疫力を下げかねない行為となる。

「運動強度が高いと免疫力が下がり、風邪にかかりやすくなるというデータがあります(下表参照)」

運動強度と風邪発症率の関係グラフ
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◆ハードなトレーニングを行うと逆効果?

ウイルスや細菌が粘膜内部に入るのを防ぐ抗体『免疫グロブリンA(IgA)』は、唾液や消化液、涙などに含まれ、分泌型IgAといわれる。

「この分泌型IgAが多く分泌される=免疫力が高いということです。分泌型IgAは、適度な運動であれば多く分泌されますが、フルマラソンのようなハードなトレーニングをした場合は、低下するという研究結果がでています。これは、ハードな運動によってストレスがかかることで、コルチゾール(副腎皮質ホルモン)が分泌され、免疫機能を抑制するからと考えられます」

ハードな運動とは、1時間以上ランニングを続けるなど心拍数が150を超えるようなもの。

大会前にハードなトレーニングで肉体を追い込むアスリートほど、風邪をひくというデータもあるほどだ。

「ストレスは免疫力にはよくない」とも言い切れない

ストレスは免疫機能の働きを悪くするが、まったくないのもまた問題だ。

免疫機能は交感神経、副交感神経も大きくかかわっており、免疫細胞を司るリンパ球は、副交感神経が優位になると増える。

「リンパ球は白血球の一部で、ウイルスなどを攻撃するNK細胞(ナチュラルキラー細胞)などが含まれますが、これらの働きが強すぎると、体に変調をきたします」

◆副交感神経が優位だと免疫機能が低下

ストレス過多はもちろん免疫機能の働きにはよくないが、まったくストレスがないのも問題。休みが続き、だらだらと緊張感のない状態が続くと、不調になり、風邪をひいてしまった経験はないだろうか。

「緊張感のない状態が続き、副交感神経が優位のままだと、体のバランスが崩れ、免疫機能の低下にもつながります。免疫機能のバランスを保つためにも、“幸せ”を感じたり、少しだけ無理をするストレスも必要です。どちらかが過度にならないようにすることが大切です」

そのためにも、規則正しく、日中は適度な緊張感を持って活動し、夜はリラックスしてきちんと眠れるようにすることが大切だ。

「体温が高いと免疫機能が高くなる=健康」ではない

体温計
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免疫機能は熱でウイルスなどを攻撃するが、高いからといって健康な体ではない。

◆風邪やインフルエンザで発熱する理由

風邪やインフルエンザにかかると発熱するのは、感染力を弱めるために体温を上昇させ、病原体と闘う免疫機能を活性化させるためだ。

「また、発熱することにより、血液の流れもよくなり、血流によって体内の免疫細胞が隅々まで届くことになります。ただし、これはウイルスなどの異物に対して働くもの。38℃以上の熱が続くのは明らかに異常事態なので、当然、高ければいいとは限りません」

気温が高く、脱水などによって体温が上がるのは、熱中症の恐れがある。明らかな高体温は命の危険もあるので注意しよう。

イラスト/別府麻衣

※女性セブン2020年7月16日号

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