コロナにかからないように免疫機能を高めるべく、日常生活で心がけている人は多いだろう。しかし、免疫力が高ければ高いほどいいというのは間違い。免疫力が高すぎても、本来、反応しなくていいものにまで過剰反応することで花粉症や食物アレルギーのように、アレルギーとして体に出てしまうことも。低すぎてはウイルスに抵抗することができないため、「中庸」を目指したい。
いくら適度な運動を行い、睡眠を充分とっていても、栄養不足であれば、免疫は正しく機能しない。とはいえ、免疫によさそうな食事をたくさん摂ればいいというものでもない。あくまでバランスが大切だ。
免疫機能を低下させないために大切な食事法は?
「◯◯を食べると、免疫力がアップする」という話をよく目にするが、「科学的根拠がはっきりしている食事療法はない」と、管理栄養士の塩野崎淳子さんは言う。
「特に、新型コロナウイルス感染症のような未知のウイルスに対しては、不安で“これを食べれば大丈夫”というものに飛びつきがちですが、ビタミンやミネラルが不足しないように、毎日、バランスよく食べることが何より大切です。多少、ムラのある食生活をしていても、人間には調整する能力があるため、あれもこれも摂る必要はありません」(塩野崎さん・以下同)
腸内環境を整えれば免疫機能がアップすると思われがちだが、これにも個人差がある。
「必ずしも万人が、特定の食品やサプリメントで腸内細菌をコントロールできるわけではありません。良好な栄養状態を保つことが先決です」
◆一汁二菜で栄養バランスのよい食事を
そのためには、3食バランスよく食べることが重要だ。
「栄養バランスのよい食事を心がけていれば、神経質になる必要はありません。問題は、食事を抜くなどの過度なダイエットをしている人。1か月に5%以上体重が減ると、栄養障害と判定されますが、過度な食事制限で栄養不足になると、体力低下を招き、免疫機能も低下しますから、病気を引き起こしやすくなります」
とはいえ、バランスよく食べようと、おかずの品数をやたら多くするのも考えものだ。
「キムチやみそ、漬けものなど発酵食品は、食物繊維も豊富で栄養素も豊富ですが、摂りすぎると塩分過多になる傾向に。若い頃から減塩をしないと高血圧になりやすく、脳梗塞やがんのリスクが高くなるので気をつけましょう」
おすすめは一汁二菜を基本に、和食以外に洋食、中華も取り入れることだ。
「免疫機能の働きも大切ですが、それにとらわれすぎるとデメリットも出てきます。和食がいいと、1日3食、みそ汁を食べれば、塩分の摂りすぎに。野菜のコンソメスープやオムレツなど、洋食も取り入れる工夫が大切です」
おいしくてストレスのないものが、免疫機能の向上にもよい影響をもたらすのだ。
ヨーグルトやキムチなどは1日1回程度に
ヨーグルトやキムチなどの発酵食品は腸内環境を整え、免疫機能をアップするといわれるが、こればかり食べていればOKというわけではない。
「腸内細菌をうまくコントロールすれば、腸内環境がよくなり、免疫機能がアップするというイメージがありますが、どの食品がいいというのは、確固たるエビデンスはまだありません。ヨーグルトもキムチも、栄養的にはおすすめですが、摂りすぎは禁物です。ヨーグルトの過剰摂取で脂質異常症、キムチも塩分が気になるので、高血圧の人などは要注意です」
◆ヨーグルト、キムチの1日の適量は?
ヨーグルトは100g、キムチは30g(小皿一皿分)程度で、1日1回で充分だ。
まな板の使いまわしに注意!
免疫機能を守るために、ウイルスや細菌を付着させない努力は必要だ。
「包丁の柄にウイルスや細菌がついたことから、感染が広がることもあるのです。作業ごとに食器用洗剤で、刃、柄、付け根までしっかりと洗うようにしてください。また、まな板は肉用、魚用、野菜用などと、複数枚用意するのもおすすめです。作業の合間にハンドソープでこまめに手を洗うなど、ウイルスや菌が手に付着しないよう心がけましょう」
◆手を拭くのはペーパータオルで
手を拭くのはペーパータオルが理想だが、布タオルを使用する場合は、1日に2回以上は交換したい。
亜鉛を含む食材は免疫機能に不可欠
ミネラルの1つである亜鉛も意識的に摂りたい栄養素。
「亜鉛の働きには、免疫機能の維持や活性化などがあり、不足すると感染症に対する抵抗力低下にもつながります。食欲不振になると、基準値を下回ることがあるのですが、1日の推奨量は男性11mg、女性8mg。貝類や赤身肉に多く含まれており、特にかきは5~7粒程度食べると1日の推奨量を満たすことができます。そのほか、帆立やあさり、しじみなどにも豊富です」
◆わかめ、のりなどの海藻類でもOK
わかめやのりといった海藻類にも含まれるので、料理のトッピングにするのもおすすめだ。
鶏肉などたんぱく質を意識して摂る
人間が必要な栄養素の中で、最優先させたいのがエネルギーのもととなる炭水化物だ。しかし、それだけでは不充分。
◆ご飯に肉、魚、卵、大豆のどれかを
「たんぱく質も欠かせません。たんぱく質は細胞の素材になったり、免疫には欠かせない栄養素。不足すると体内のアミノ酸が過剰に使われてしまい、傷なども治りにくくなるのです。食事には、茶わん1杯程度のご飯を基準に、肉や魚、卵、大豆のどれかを入れるように意識してください。カップラーメンに卵1個を加えるだけでも、違いますよ」
口内環境を整える
「口内には数百種類の細菌が生息しており、その中には、さまざまなトラブルを引き起こすものもいるため、口内環境を良好に保つ努力は必要です」
◆食後に緑茶を飲んでスッキリする
歯だけではなく、舌の汚れをとることも大切だ。新潟大学大学院医歯学総合研究科の研究によると、舌についた汚れは、感染症やアレルギー疾患のほか、心臓疾患などを引き起こす細菌が潜んでいるという。舌の汚れをとる際、歯ブラシでは舌を傷つけ、かえって菌の温床にもなりかねないため、舌専用のブラシを使うのも有効。また、食後には緑茶を飲んでスッキリし、口内環境を整えることも◎。
食欲のないときはスープで栄養補給を!
夏本番。食欲が落ち、体力低下を防ぐためにも飲み物で栄養を補強したい。
◆牛乳たっぷりカフェオレも◎
「体形がやせ形で、食事量が少ない人は、体に必要な栄養が充分摂れていない可能性が高い。また、高齢者の場合、栄養が不足すると抵抗力が落ちて誤嚥性肺炎を発症することがあるので、野菜スープやポタージュ、牛乳たっぷりのカフェオレなどで水分と栄養を一緒に補いましょう」
スープに、にんにくやしょうがを入れても◎。
※女性セブン2020年7月16日号
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