日本の公的年金は、いま働いている現役世代が支払った年金保険料を高齢者の年金給付に充当する方式(世代間扶養)で運営されています。年金というと老後に受け取る「老齢年金」が思い浮かぶ人が多いかもしれませんが、それだけではありません。
今回は、意外と知らない年金制度と老後の備えについて、特定社会保険労務士の小泉正典さんの監修のもと紹介します。
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配偶者が亡くなってしまったら…「遺族年金」
【質問】夫が病気で療養中です。中学生の子供がいるので、もしものことがあったらと考えると不安になります。遺族が受給できる年金があると聞いたことがありますが、どのような制度なのでしょうか(43歳・主婦)
【回答】亡くなった人が国民年金に加入していたときは、遺族が年金を受け取ることができる「遺族基礎年金」という制度があります。
●残された家族をサポートしてくれる「遺族基礎年金」
「遺族基礎年金」は公的年金制度の一部です。死亡した人が国民年金の被保険者だった場合、国民年金保険料を納付している期間が、年金加入期間の3分の2以上、年金の加入期間が25年以上あることなどを条件に、遺族は年金を受け取ることができます。なお、2026年3月末までは、死亡日に65歳未満で死亡前1年間の国民年金保険料の滞納がなければ、受給対象となります。
対象となる遺族は、死亡した人によって生計を維持されていた子供のいる配偶者か、その子供です。子供がいない場合はもらえません。配偶者と子供がいる場合は配偶者に、子供だけの場合は子供に支給されます。子供は、18歳になった最初の3月31日を過ぎていないこと、または20歳未満で一定の障害者であることなどの条件があります。
●「遺族基礎年金」の支給額は?
支給額は年78万1700円に加えて、子供の数に応じた金額がプラスされます。第1子、第2子はそれぞれ22万4900円。第3子以降は7万5000円が加算されます。対象となっている子供が配偶者以外の養子となった場合などは受給権利が失われ、加算がなくなることがあります。
【ポイント】
・遺族基礎年金は、受給される資格が失われるまでの間、受け取ることができます。
・手続きの場所は、年金事務所、自治体の年金窓口、街角の年金相談センターとなります。
・亡くなった人が厚生年金に加入していた場合は、「遺族厚生年金」が支給となり、18歳未満の子がいる場合は、遺族基礎年金+子の加算も支給となります。
病気やケガで働けなくなったら「障害年金」
【質問】持病が悪化して退職せざるをえませんでした。いまは病院に通いながら自宅療養を続けていますが、これからの生活が不安で仕方がありません(52歳・無職)
【回答】病気やケガなどが原因で日常生活や仕事ができないときは、「障害基礎年金」「障害厚生年金」を受給できる場合があります。
●療養中の生活をサポートしてもらえる「障害基礎年金」「障害厚生年金」
「障害基礎年金」「障害厚生年金」は、病気やケガなどが理由で障害状態となった場合に支給される年金です。支給を受けられる障害の状態は、国が定める障害等級によって決まります。
障害基礎年金は「障害等級1~2級」、障害厚生年金は「障害等級1~3級」が対象となります。具体的には、手足や目、聴覚などの障害、うつ病や統合失調症といった精神疾患など。がんや糖尿病、呼吸器疾患などの内部疾患によって、長期療養が必要な場合なども対象となります。
障害基礎年金が受給できる条件は以下の通りです。
・一定の障害状態にあること。
・初診日の時点で65歳未満であること。
・初診日の前々月までの国民年金加入期間のうち、3分の2以上にわたって保険料が納付または免除されていること。
・初診日の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。
・20歳前に障害の原因となる病気やケガの初診日がある人。
●どのくらいの金額がもらえるの?
実際にもらえるお金(年額)は、障害基礎年金の場合、次のようになります。
・障害等級1級:78万1700円×1.25+子の加算
・障害等級2級:78万1700円+子の加算
※子の加算は、第1子・第2子は各22万4900円、第3子以降は各7万5000円
障害の状態は人によって異なります。詳しくはお住まいの自治体にある年金窓口、年金事務所、街角の年金相談センターに問い合わせてください。
【ポイント】
・障害年金は障害者手帳を持っていなくても認定されれば受給することができます。(別の制度です)
・厚生年金に加入中の病気やケガが原因のときは、障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金も受給できます。
・障害年金の申請手続きは、65歳になる誕生日の前々日までに提出しなければなりません。