体が重だるい、食欲がわかない。その不調はもしかしたら夏バテかもしれません。
漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんによると、食事で摂る食材に気をつけたり、暮らしのなかで工夫をしたりすることで夏バテの予防や軽減が期待できるそうです。さらに、夏バテを解消する漢方薬もあるそうです。そこで、夏バテの対策法と、おすすめの食材、漢方薬について小原さんに教えてもらいました。
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そもそも「夏バテ」とは
「夏バテ」とは正式な医学用語ではなく、夏に体がバテる状態のことを指して使われている言葉です。症状としては全身の倦怠感、無気力、食欲低下、下痢、便秘、イライラする、めまい、のぼせ、頭痛、むくみ、と多岐にわたります。
気温が高い屋外と冷房の効いた室内の寒暖差や、高温多湿な環境の影響を受けて自律神経の働きが乱れることが原因と考えられています。漢方医学では、とくに胃腸が弱ることに注目し対処します。
睡眠やツボ押しで!夏バテ対処法
夏バテになってしまったときは、消耗した体をいたわってあげるために、まずは休養をとりましょう。では、すぐにできる夏バテ対処法から紹介します。
十分な睡眠
体の機能回復に睡眠は欠かせません。胃腸などの消化器官はもちろん、脳や神経などの体全体の調整や情報伝達にかかわる器官も睡眠中に修復され、機能が高められています。
あらかじめ、睡眠を1日の予定に組み込むことで時間を確保し、エアコンなどを上手に使って快適に眠れる環境を整えましょう。
足三里のツボ
ひざのお皿のすぐ下、外側のくぼみに人差し指を置き、指を4本そろえて小指が当たっているところが足三里(あしさんり)のツボです。体力向上はもちろん、むくみ、胃腸の症状、脚の疲れにも有効といわれ、万能養生のツボと呼ばれています。
息を吐きながら気持ちいいと感じる程度に、このツボを数回押してみましょう。
夏バテ解消に適した食べもの
漢方医学では食養生といって食べ物で健康増進をするという考えがあります。そこで次に、夏バテに有効だといわれている食材をご紹介します。
米
弱った体にも負担が少なく、安心してエネルギーを摂れる食材。胃腸を丈夫にし、消化吸収機能を高めます。さらに、ストレスや喉の渇きを解消する効果もあると考えられています。
メロン
胃腸を丈夫にして力をつけてくれる食材。カリウムと水分が多く含まれており、利尿作用が期待できます。食べることで水分が排出され、体にこもった余分な熱を収めるといわれています。
れんこん
血を養い、内臓機能を整える食材。鉄分や、不足すると食欲不振やだるさの原因になるカリウムを多く含んでいます。下痢を止めたいときや、二日酔いの予防・解消に用いられることもあります。
夏バテ解消には漢方薬がおすすめ
「食事や休養などは気をつけているのに、だるさがとれない」ときには漢方薬をのむという方法もあります。
繰り返す不調にも、根本からの改善が期待できる漢方薬。自然由来の生薬を組み合わせて作られているため、西洋薬に比べて副作用が少なく、体にやさしく働くといわれています。
とにかく元気がない人におすすめの漢方薬「補中益気湯」
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は胃腸の消化・吸収機能を整えて気を生み出し、病気に対する抵抗力を高めるのに用いられる漢方薬です。体のエネルギーを指す「気」を補う漢方薬の代表的処方で、自律神経の乱れから起こる寝汗の改善にも役立ちます。
食欲がわかない人におすすめの漢方薬「六君子湯」
六君子湯(りっくんしとう)は、胃の動きを促進させる漢方薬です。消化器を温め、気を補い消化機能の改善が期待できるため、胃もたれや食欲不振、消化不良などに用いられます。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こる場合もあります。自分に合う漢方薬を見つけるためにも、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
暮らしの工夫と漢方薬で夏バテを解消しよう
夏バテは病気ではないものの、放っておくと症状が悪化することもあります。暮らしを見直したり、適した食材を取り入れたりして、早めに夏バテは解消したいものです。
根本から体質を見直したいという人は、漢方薬の助けを借りるのも選択肢のひとつ。気になる方は薬剤師など信頼できる専門家に一度相談してみてください。ご自身にあった方法を取り入れ、暑い夏を乗り越えていきましょう。
◆教えてくれた人:管理栄養士・小原水月さん
おはらみづき・ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わり、のべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。現在は今までの経験をいかし 、オンラインで漢方を購入できる「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで情報発信している。