夏から秋への季節の変わり目、「食欲がわかない」「疲れが取れない」といった不調を感じていませんか?
夏の間に蓄積した胃腸の疲れは、生活習慣や食事の見直しによってケアしましょう、と管理栄養士の池田明日香さん。加えて、体質や原因に応じた漢方薬を用いることで、食欲不振や消化不良などの症状の緩和が期待できるそうです。
そこで、池田さんから、秋の食欲不振の対策法を教えてもらいました。
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初秋の食欲不振の原因は内臓の冷えと気温差
夏から秋への季節の変わり目に起こる食欲不振は、どのようなことが原因なのか簡単に解説します。
冷たいものの食べ過ぎ
胃腸が冷えると、消化・吸収機能が低下し、食欲不振や下痢などの症状につながることがあります。
夏の間は、冷たいものを食べたり飲んだりする機会が増えますよね。ほてった体をクールダウンさせるためには有効な方法ですが、とりすぎると内臓を冷やしてしまいます。そういった夏の生活習慣の影響が初秋に出てくることがあります。
自律神経の乱れ
真夏の間、エアコンの効いた室内と暑い外との気温差に悩まされたという人も多いのではないでしょうか。そして、夏から秋への季節の変わり目は、日中は暑くても朝晩は涼しさを感じる日が増えてきますよね。
寒暖差が大きくなると、気温の変化に対応するために自律神経が働き、体を活動モードにする交感神経が優位の状態が続きやすくなります。すると、体のエネルギー消費が増え、疲労やだるさを感じることが多くなり、食欲が落ちてしまうことがあります。
さらに、食欲や消化器官の働きは、自律神経によって調節されています。そのため、気温差やストレスなどによって自律神経のバランスが崩れると、食欲不振になることがあります。
初秋の食欲不振への対処法
そこで、疲れた胃腸を回復させる、生活習慣のポイントをご紹介します。
体を内側から温める
冷えた内臓をケアし、自律神経のバランスを整えるには、体を内側から温めることが大切です。以下のポイントを押さえて、体を温めることを意識してみましょう。
・温かい飲み物を飲む
・薄着を避ける
・ウォーキングやストレッチなど、少し汗をかく位の運動を習慣にする
・お風呂はシャワーで済ませずに、湯船につかる
どれも、日常生活ですぐ実践できることばかりですので、できることから始めてみましょう。
睡眠をしっかりとる
胃腸の疲労を取り除くためには、良質な睡眠をしっかりとることも重要です。睡眠の質が低下したり、時間が短くなったりすると、交感神経が優位の時間が長くなり、自律神経のバランスが崩れてしまいます。良質な睡眠をとるためには、下記のようなことに気をつけましょう。
・就寝の3時間前くらいには食事を終える
・就寝1時間前からはパソコンやスマートフォンの画面を見ない
・夜ふかしをせずに、生活リズムを整える
熟睡できていないと感じるときも、試してみてください。
夏の胃腸疲れを回復させる食べ物は?
毎日の食事で胃腸を労わることも、胃腸疲れのケアにつながります。食事の際には、下記を参考にしてみてくださいね。
<胃腸を労わる食事のポイント>
・濃い味つけや、辛い食べ物など刺激になるものは避ける
・煮込む、細かく切るなど、消化しやすい調理法にする
・たんぱく質食材は、白身魚や鶏ささみ肉、豆腐など消化に負担が少ないものを選ぶ
さらに、疲れた胃腸をケアしてくれる、おすすめの食べ物をご紹介します。
鮭
比較的脂質が少ないたんぱく質食材で、胃腸に負担をかけずに消化できる鮭は、食事からのエネルギー産生に必要なビタミンB群が含まれるため、疲労回復に役立ちます。
なかでも旬の秋鮭は、旨味がありながらも春の鮭に比べると脂が少なく、さっぱりとした味わいなので、食欲がないときにもおすすめです。ホイル焼きなどの蒸し料理にすると、ふっくらと仕上がり、おいしですよ。
キャベツ
キャベツに含まれる「ビタミンU」という成分は、別名「キャベジン」ともよばれ、胃腸薬の名前にもなっています。ビタミンUは、傷ついた胃腸粘膜の再生を促し、炎症を抑える働きがあります。また、胃酸の過剰な分泌を抑え、胃腸粘膜の健康を保つのに役立ちます。
にんじんや玉ねぎなどと一緒に煮込んで温かいスープにすると、冷えの解消にもつながります。
山芋
山芋には「アミラーゼ」という消化酵素が含まれ、ご飯などに含まれるでんぷんの消化を助ける働きがあります。
山芋のでんぷんの一部がアミラーゼにより分解されるため、ほかの芋類と違って生で食べることができます。すりおろすと消化酵素の働きが活発になるので、胃もたれを感じるときは、すりおろしてご飯にかけたり、汁物に入れたりするのがおすすめです。
漢方のチカラで強い胃腸を取り戻す
生活習慣や食事の工夫に加え、漢方を取り入れて体質改善を目指すのも1つの方法です。
胃腸疲れに漢方薬がおすすめな理由
漢方薬は胃もたれ、胃弱、慢性胃炎などの根本的な治療のために、医療現場でも使われています。
例えば漢方で胃もたれは、「気(き)」が不足の状態「気虚(ききょ)」、または「水(すい)」のバランスが悪い状態「水毒(すいどく)」と考えられています。自然の生薬で胃の血行をよくし、胃腸を温め、胃にたまった水を排出させることで、改善のアプローチを行います。
漢方薬は、西洋薬に比べて体に優しく働き、症状を抑えるのではなく体質の根本改善を目指します。生活習慣や食事の見直しでは胃腸の不調が改善しなかった人も、西洋薬に頼る前に漢方薬を試してみるという方法があります。
胃腸疲れにおすすめの漢方薬
食欲がわかない人や疲れが取れない人におすすめの漢方薬を、2つご紹介します。
・六君子湯
六君子湯(りっくんしとう)は胃の動きを促進させる漢方薬で、食欲がわかない人におすすめです。消化器を温め、「気」を補うことで消化機能の改善が期待できるため、胃の痛みや食欲不振、消化不良などに用いられます。
・補中益気湯
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は、胃腸の消化・吸収機能を整え、食欲を出すことで体のエネルギーである「気」を生み出し、元気を補う漢方薬です。「気」を生み出すので、疲れが取れない人におすすめです。疲労倦怠感や食欲不振、虚弱体質の人に用いられます。
漢方薬を始めるときの注意点
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こる場合もあります。自分に合う漢方薬を見つけるためにも、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
胃腸をケアする生活習慣と食事を取り入れよう
季節の変わり目は、体調を崩すことが多いものです。不調をそのままにせず、生活を整え、胃腸に優しい食事をして、早めに対処するように心掛けてみましょう。根本から体質を改善したいという人は、漢方薬の助けを借りるのもおすすめです。薬剤師など信頼できる専門家に一度相談してみてはいかがでしょうか。
◆教えてくれた人:管理栄養士・池田明日香さん
いけだ・あすか。管理栄養士。大学卒業後、管理栄養士として治験コーディネーター業務に携わった後、食品メーカーにて料理教室運営や商品・メニュー開発などに従事する。食事を楽しむことと健康的な食生活の大切さを感じ、現在は食と健康関連のコラム執筆、オンラインでのダイエットサポートなどで活動中。さらに、今までの経験をいかし 、「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/ )などで情報発信している。