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【65歳オバ記者 介護のリアル】介護中の母ちゃんを元気づけていた「恋」のお話

ヘルパーさんも“恋は力になる”

そんな、母ちゃんが最後にポポッとなったのは、レンタル介護用品の営業マンのKさん。40代後半で背がスラリと高くて、阿部寛をグッとやさしくしたようなハンサムでね。電動ベッドもポータブルトイレも手すりも車椅子も、ちょっとでも不都合があると、飛んできてくれるの。

オバ記者の母親
大好きなKさんがくるとたちまち上機嫌に。この日はリハビリ中
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「なんだ、今日はKさんが来んのが?」

母ちゃんは急にマジメな顔をして気のない素ぶりをしているけど、ベッドに寝ていても弾む心は隠せない。Kさんが現れたとたんニコニコ~ッだし、一度、「母ちゃん、せっかく来てくれたんだから握手してもらったらどうだ?」と言ったら、みるみる顔が輝いて10も20も若くなったんだから。

それをカリスマヘルパーOさんに話すと、

「でしょうね。介護が必要なお年寄りは、男性は女性、女性は男性の担当者に世話をされたり、気にかけてもらうと、これはどんな薬より効き目あります」と言うんだわ。

なるほどね。母ちゃん、何人かの訪問看護師さんの名前も覚えようとしたけど、スラッと出てきたのはひとりだけ。なのにお気に入りのKさんと、尊敬するU医師だけは名前を連呼していたもんね。まったく呆れた婆さんだったわ。

◆ライター・オバ記者(野原広子)

オバ記者イラスト
オバ記者ことライターの野原広子
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1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。

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