犬のしつけにおいて、トイレや噛みグセと共に多くの飼い主さんが悩んでいるのがムダ吠え・吠えグセです。犬はもともと群れで生活する動物なので、仲間とのコミュニケーションや敵を警戒して威嚇するために吠えてきたと考えられます。普段、飼い主と部屋の中で過ごしたり近所をお散歩したりするような生活にはそぐわない大きな吠え声。どうすればいいでしょうか? 獣医師の山本昌彦さんに聞きました。
警戒吠えは警戒から気をそらす方法で
犬の吠えグセを矯正するのに有効な手段は、犬の吠える理由をしっかり把握した上で「吠えたい気持ちにさせないこと」だと言います。
「犬には犬なりに吠える理由があります。吠えてしまったときにはなぜ吠えたのかを考えて、理由に合わせた対処をすることで、吠えたくならない心理に導き、吠えグセを軽減させることができます」(山本さん・以下同)
例えば、インターホンが鳴ると吠える犬がいます。このとき、犬はインターホンが鳴ると、知らない人間が来ることを理解していて、「見知らぬ存在が縄張りに侵入してくるので、威嚇して追い返そう!」という心理で吠えていると考えられます。
”おやつの予感”に変える
「犬はインターホンが鳴った、敵が来るぞ、と点と点をつなげられる動物です。それを利用して、新たな因果関係を結び直すといいと思います。例えば、おやつ。インターホンが鳴ったらおやつをあげるという流れを何度か繰り返すと、犬は頭の中で、インターホンが鳴った、おやつがもらえた、という2点を線でつなぎます。インターホンが敵襲の前ぶれではなく、おやつの予感に変わると、吠えなくなってきます」
さらに、<インターホン→おやつ>が定着したら、一定期間後におやつをあげるのをやめてみるといいそうです。
「インターホンが鳴ったけど、おやつがもらえると期待して犬は吠えなかった、犬が『あれ? おやつをくれないの?』となったタイミングで『吠えなかったね、偉いね』とたくさん褒めて撫でてあげてください。犬にとって、飼い主からの愛情表現は、『おやつにも勝る最上のご褒美』です。<インターホン→おやつ>から<インターホン→黙っている→褒められる>という新しい因果関係を根付かせていきましょう」
他の犬と遊びたがるときはまずオスワリ
散歩や通院時に他の犬と出会って吠える犬もいます。このとき、吠える理由は犬の性格などによって異なるので、愛犬の様子をよく見て対応する必要があります。
「まず、怖がって、威嚇したり警戒を表したりする意味で吠えている場合。そういうときは、飼い主さんが愛犬の身体に触って、小さい子なら抱き上げて『大丈夫だよ』と落ち着かせてあげてください」
勢いのまま犬を行かせない
一方で、フレンドリーな性格の犬の場合、他の犬と出会うと、遊んでみたくて興奮して吠えることがあります。
「その場合はまず、名前を呼んだりおもちゃやおやつを使ったりして注意を飼い主さんに向けさせ、オスワリをさせていったん落ち着かせます。犬が落ち着いてから、相手の飼い主さんや犬がOKなら挨拶させてもらうといいですね。勢いのまま、犬を行かせない。<オスワリをして静かにする→遊ばせてもらえる>という因果関係を犬に覚えてもらいましょう」