カルチャーが合わない会社で働くって、すごくつらいこと
真理子さん:SNSを見て営業職や接客業に対する負のイメージを膨らませている人も多いと思います。でも、SNSって特に匿名で投稿する場合だと、いいことや成功体験を書くより、グチを吐き出す人が多いので。受け取る情報が偏っている可能性は大いにあるんじゃないでしょうか。
シンシアさん:就職先を探すときは、SNSより経済情報チェックするといいですよね。伸びている業界の営業は簡単ですよ。お客さまのほうから営業を呼んで話を聞きたいと思っているんだから。特別な話術もカリスマ性も必要ありません。問い合わせをさばいていけば実績ができます。
真理子さん:業界を見るの、大事ですね。転職サイトを見ていても「未経験OK」をうたっていて、かつ給料が高い求人は、やっぱり(市況が)厳しい業界の営業が多いです。だから条件だけ見て食いついてしまうと、働き始めてから、ハードさに驚くようなことになってしまう。
就職先を選ぶときに、募集要項と給与だけじゃなく、どういう業界で、この会社の文化はどんな感じで、どんな研修を受けられて、どんなサポートがあるのか、そういうところもしっかり確認したいですね。
カルチャーが合わない会社で働くって、すごくつらいことだから。実は私も、業界や会社のやり方になじめなくて早々に辞めてしまった仕事もあるので、本当にそう思います。でも逆に、ちゃんと合うところに行けば、自分では向いていないと思っていた人でも営業や接客で活躍できる可能性はある。そういう磨かれるべき原石みたいな人が実はたくさんいると思うんですよ。
お客に恐縮しすぎない、“マッチング”と捉える接客・営業
シンシアさん:私はうちのみんなに「全員が営業だよ」「接客担当だよ」と常に伝えています。「ホテル内のどの仕事をしている人であれ、お客さんがエントランスへ一歩入ってきた瞬間、客室から廊下へ出た瞬間にあなたに笑顔があるかないか、それがとても重要」という話をします。セールストークはしないにしても、お客さまとコミュニケーションするという意味では、それもまた営業。実は毎日みんな営業しているんですよね。
真理子さん:その通りだと思います。それに、「社内営業」という言葉もありますけど、総務や経理といった事務方でも、営業のような活動をすることで、業務が円滑になったりするのをみんな知っていて、実際そうしている。だから、そんなに心配しなくても、営業や接客の仕事が務まらないっていうこと、そうそうないんですよ。近いことは人生の中ですでに経験してきたはず。
――スタッフみんなが営業担当(という意識)のシンシアさんのホテルでは、お客さまとの間で難しい局面などはありませんか?
シンシアさん:いろんなお客さまがいらっしゃるので、いつも平穏無事とはいきません。スタッフのみんなもお客さまからキツい調子で何か言われたりするのを一番怖がっていると思います。だから私はいつも言うんですよ。「大丈夫だよ。この商売、あなたが何をどうミスったって誰も死にやしないから」「間違ったらあとで対応すればいいよ」って。
真理子さん:こういうかたがトップだと心強いですね。
シンシアさん:それぐらい言わないと、みんな固まっちゃって出来ることも出来なくなっちゃう。