ライター歴43年のベテラン、オバ記者こと野原広子(65歳)が、介護を経験して感じたリアルな日々を綴る「介護のリアル」。昨年、茨城の実家で母親を介護し、最終的には病院で看取ったオバ記者。それから4か月経ち、寂しさは募るばかり。そんなときに届いた安倍元首相の訃報。この4年間で身内を何人も亡くしているオバ記者が感じたこととは――。
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一瞬で人の命が消える不条理さ
「いる」と思っていた人が突然、「もういない」になる。テレビ画面は繰り返し事件を報じているけど、一瞬で人の命が消える不条理さ。このモヤモヤでここ数年、私の抱えていたパンドラの箱が開きかけたんだわ。
この4年間、年子の弟が60前に亡くなったのを皮切りに、8か月後には胃がんを患っていた義父がなくなり、その半年後には19年暮らしたオス猫・三四郎が。2年後には、大バトルの介護をした母親が93歳でこの世を去った。
次々とこの世から家族が消えていくたびに、感情は二の次、三の次。必要なことを必要に応じてしようと、たんたんとやり過ごしてきたけれど、しばらく前から気を抜くと寂しくて、心細くてたまらないのよ。
一国の元総理大臣の死と、茨城の片田舎の貧しい一家の衰退が一緒になるはずもないけれど、安倍元総理の死がきっかけで私のパンドラの箱を開きかけたのは確か。友だちのちょっとしたジョークがジョークに聞こえなくて、「それってどういうことかな!」と、声、とんがってるし。
政治記者に誘われ自民党本部に献花へ
安倍元首相の葬儀の日もそう。「参ったなぁ~」といいながら昼近くになってもベッドから離れられないでいた。そしたら、安倍番をしていたテレビ局の政治記者女子から「自民党本部に献花に行きませんか?」とLINEが入ったの。
一も二もなくこの提案に飛びついたわよ。そうなのよね。モヤモヤしたら個性は無用。人がしていることをするに限るんだって。
4年前から衆議院議員会館の議員事務所でアルバイトをしている私は、何度か安倍元首相をお見かけしている。そのたびに思うのは全身から発する明るさと、立ち姿のきれいさなの。テレビ画面を通して見ると気の短さと子供っぽさを感じることもあったけれど、実際に見ると彼の永田町での人気の理由がわかる気がするんだわ。
3年前の参議院議員選挙が終わったあと、自民党議員が勢揃いした両院議員総会。私は議員付きのカメラマンとして会場に入れていただいた。この後、コロナの騒動が起きて、永田町ではさまざまなことが起きたけれど私にとって政治は“犬が星見た”状態で、わけがわからないことばかり。