
気温が高くなる真夏は、体に熱がこもりやすく、熱中症などに気をつけなければいけない季節です。漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんによると、普段の食事内容によって体に熱がこもりにくい体作りができるそうです。夏に食事に取り入れたい食品と、役立つ漢方薬について教えてもらいました。
【目次】
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体に熱がこもってしまう原因
暑い夏はとくに、体内の熱が必要以上に作られている、あるいは、放熱がうまくいかないなどが原因で、体温調整に支障が生じます。体温の調整がうまくできない状態になると、体に熱がこもってしまいます。

放熱の方法は汗などの水分による「蒸発」や、皮膚から空気や水へ熱が伝わる「伝導」などがありますが、血流が悪くなり、皮膚表面に十分な血液が届かなくなると、速やかに体を冷やすことができず、熱がこもりやすくなります。すると、熱中症などのリスクが高まります。
体の内側にこもった熱を逃がす食品
体の内側にこもった熱を下げるには、滞りなく血液が流れることが重要です。そこで、良好な血液循環を支える食品を3つご紹介します。
かぼちゃ

かぼちゃに多く含まれるビタミンEには、血管拡張作用があります。血管が広がることで血液が流れやすくなり、体温調整がしやすくなります。かぼちゃには、日本かぼちゃと西洋かぼちゃがありますが、ビタミンEを多く含むのは西洋かぼちゃです。日本かぼちゃに比べて、表面に凹凸が少なく、全体的に丸みを帯びています。
ナス

ナスの紫色の成分はポリフェノールの一種、ナスニンによるものです。ナスニンには強い抗酸化作用があり、血管を活性酸素などの害から守る働きがあります。しなやかで強靭な血管は、良好な血流に欠かせません。皮にハリと光沢があるもの、ヘタのとげの部分がとがっているもの、ヘタの周囲の色が白いものが新鮮なナスです。
アジの干物

刺身や切り身の魚料理に比べて食感がある干物は、咀嚼(そしゃく)が増えやすい食べ物です。咀嚼が増えると全身の血行が促され、速やかな体温調節の助けになります。この時期の干物なら、夏が旬のアジがおすすめです。水分が抜けている分、同量を食べたときに摂ることができるビタミン・ミネラル量が生のアジより多くなるので、栄養補給も効率的にできます。
血管にダメージを与える酸化した油はNG
逆に注意したいのは、酸化した油を含む食べ物です。古い油を使った料理や調理されてから時間がたった食べ物は、油が酸化している可能性があります。酸化した油によって、血管がダメージを受けると、血流が妨げられ、体内に熱をこもりやすくなる一因となります。
酸化した油を含む食品には、一例としてスーパーの見切り品の総菜やスナック菓子などがあげられます。完全に生活から排除する必要はありませんが、食べる頻度には気をつけたほうがいいでしょう。
夏の体調ケアには漢方薬もおすすめ
熱の熱を冷ますには、漢方薬で対処することもおすすめです。体に熱がこもるのを防ぐには、体内の熱を汗などの水分と一緒に排出するほか、水分の巡りをよくして、必要以上の発汗を防ぐ漢方薬を選びます。

また、漢方薬は胃腸の消化機能をよくすることで、水分や栄養素の吸収を高めます。そして、栄養素や水分を全身に届け、消耗した体力や免疫力を回復します。
体の熱を冷ますのにおすすめの漢方薬2つ
・清暑益気湯(せいしょえっきとう)
胃の動きを高めて気を増やす働きと、体にうるおいを与えて熱を冷ます働きがあります。暑さによる食欲不振や疲労倦怠感、夏痩せに用いられます。
・白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)
体内の熱を冷まし、潤す働きによって、喉の渇きやほてりに用いられます。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は繰り返す不調に対して、根本からの改善が期待できる薬です。そのため、食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。また、単なる症状への対処だけではなく、体質が改善されることで熱中症になりづらい体も目指せるのです。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。