危険といえば野口五郎さんの『私鉄沿線』も負けてはいない。改札で恋人と待ち合わせして通学、通勤した経験がある人なら、あまりにも駅の風景が思い当たり、切なさで動悸息切れを伴うはず。列車、ホーム、改札、近くにある花屋や小さな喫茶店。そして伝言板!! 私もチョークで「先行ってるね」とか書いたなあ、懐かしい……。
鉄道から生まれるストーリーは、街と青春のストーリーでもあるのだ。
夢も希望も、時には迷いも乗せて
日本に150年前にやってきた鉄道は、「人生の旅の始まり」の象徴となり、現実世界を超え、いろんな世界にもつながっている。
「栄光」に向かって列車が走ると歌ったのはTHE BLUE HEARTS(ザ・ブルーハーツ)だ。初めて『TRAIN-TRAIN』を聴いたのは、斉藤由貴さん主演のドラマ『はいすくーる落書』(TBS系・1989年)の主題歌だったが、本当にびっくりした。荒々しいながらも、歌詞と情緒が丸ごと耳に入ってくるので、「ものすごいロックな唱歌っぽい!」と感動したのを覚えている。
「アンドロメダ星雲」まで走るのは『銀河鉄道999(スリーナイン)』。ゴダイゴが歌い、のちにEXILEがカバーした『銀河鉄道999(The Galaxy Express 999)』もいい! だが汽車に乗りこむ臨場感を味わいたいなら、やはりささきいさおさんが歌う、1978年から放送開始されたテレビアニメ『銀河鉄道999』のオープニングだろう。メーテル—ッ!!
夢と希望と、時には迷いも乗せて走る鉄道ソング。もちろん、シンプルかつライトに恋と鉄道巡りを楽しめる歌もステキだ。小林旭『恋の山手線』、タッキー&翼『山手線内回り〜愛の迷路〜』などは駅名も自然と覚えることができて、最高にハッピーだ。
線路は続くよ、どこまでも。ああ、たまらなく旅に出たくなってきたぞ!
◆ライター・田中稲
1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。https://twitter.com/ine_tanaka