健康・医療

秋は「過眠」の季節?秋うつを吹き飛ばすためにバナナやカツオがいい理由

布団の中であくびをする人
秋になると眠気がつらい人は季節性うつの可能性も…
写真8枚

十分に睡眠をとっても「寝足りない」と感じたり、日中に耐え難い眠気を感じたりする「過眠」は、季節性うつが原因かもしれません。多くの場合、症状は春ごろに自然と解消されますが、悪化するとうつ病になる可能性もあるので注意が必要です。漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんは、秋の過眠には生活習慣の見直しが有効だと言います。そこで、意識したい行動や取り入れたい食材、おすすめの漢方薬について教えてもらいました。

* * *

秋は過眠になりやすい! その理由とは

秋には、季節性うつの1つである「秋うつ」になる人がいます。十分な時間寝ているつもりでも寝覚めが悪い、日中に眠くなるなどの過眠は秋うつの症状として挙げられます。そのような症状が起こる原因は、主に自律神経が乱れやすくなることとセロトニンの分泌量が減少することにあります。

紅葉した葉
秋の気候が関係している季節性うつ
写真8枚

自律神経の乱れ

秋うつによる過眠の原因の1つは、交感神経と副交感神経からなる自律神経のバランスが偏ることによって起きる睡眠リズムの乱れです。

秋特有の朝晩と日中の寒暖差、台風・雨などによる短期間での気圧や湿度の変化に順応できないと、自律神経のバランスに偏りが出ます。夏の暑さによる疲れや胃腸の不調を引きずっていると、より強く環境の変化に影響を受けやすくなります。

セロトニン分泌量の減少

日照時間の減少も秋の過眠の原因になります。それは、神経伝達物質のセロトニンが日光に当たることで合成されるからです。セロトニンは体内時計を司るメラトニンの材料のため、セロトニン不足が体内時計を狂わせやすくするのです。

秋の過眠を改善するセルフケア

セロトニンは日光に当たる以外にも、リズム運動をすると分泌されます。リズム運動とは一定のリズムで体を動かすことを指し、日常生活では呼吸や歩行、咀嚼(そしゃく)などが当てはまります。以下では歩行と咀嚼について詳しく解説します。

歩行

一定の間隔で手足を動かす歩行は、代表的なリズム運動です。

女性の足元
歩行は簡単にできておすすめのリズム運動
写真8枚

セロトニンは運動を始めてから5分程度で分泌が始まり、20~30分でピークを迎えます。通勤や移動など、ある程度まとまった時間を歩き続けると、セロトニン分泌が盛んになるのです。

咀嚼

食べ物を噛む咀嚼もリズム運動です。リズム運動は集中して行うことで、効率的にセロトニンの分泌を促すことができます。そのためテレビやスマートフォンをオフにして、ゆっくり味わって食事をすることがセロトニン分泌においても効果的です。毎食でなくてもよいので、食事をゆったりと楽しむ時間をできるだけ確保するようにしましょう。

秋の過眠を軽減するのにおすすめの食材

食事で秋の過眠対策をするならば、セロトニン合成に必要なアミノ酸の一種のトリプトファン、マグネシウム、ビタミンB6、糖質を意識して摂りましょう。これらの栄養素をバランスよく含む、3つの食材をご紹介します。

バナナ

むいたバナナ
セロトニン合成に必要な栄養がすべて含まれているバナナ
写真8枚

バナナには、セロトニン合成に必要なトリプトファン、マグネシウム、ビタミンB6、糖質がすべて含まれています。

バナナは消化しやすいため、夏から胃腸の不調を引きずっている人にもおすすめです。安価で手に入れやすいので、秋の過眠対策に常備してもよいでしょう。

カツオ

カツオにはセロトニン合成に必要な栄養素はもちろん、自律神経のバランスを整えるのに役立つカルシウムも含まれるので、積極的に摂りたい食材です。

カツオのたたき
たたきはもちろん竜田揚げやステーキにしてもおいしいカツオ
写真8枚

秋に獲れる戻りガツオは脂がのり、もっちりとした食感が特徴です。たたきや竜田揚げ、ステーキなど、さまざまな調理法でアレンジできます。

雑穀ごはん

白米にもセロトニン合成に必要な栄養素が含まれますが、雑穀をプラスすることで栄養価を強化できます。

雑穀ごはん
日本人が不足しがちなマグネシウムを多く含む粟入りのものがおすすめ
写真8枚

とくに粟は日本人が不足しがちなマグネシウムを多く含んでいるので、意識して取り入れたい雑穀です。また、大麦やハト麦、そばの実など大粒の雑穀は咀嚼を増やすのに効果的です。

雑穀は単品でもよいですし、さまざまな種類がブレンドされたものを使ってもよいでしょう。

秋の過眠の改善には漢方もおすすめ

日中の眠気は睡眠不足、ストレスや緊張による自律神経の乱れ、過労などが原因と考えられ、改善には漢方薬をのむという方法もあります。

過眠に対しては、「自律神経の乱れを整え、ストレスが原因の疲労や睡眠の質を改善する」「血流を促して中枢神経の機能を回復し、眠気を改善する」「栄養を全身に届けて、心と体を元気にする」などの作用を含む漢方薬が選ばれます。

いろいろな生薬
日中の眠気対策におすすめの漢方薬を紹介
写真8枚

秋の過眠におすすめの漢方薬2つ

・加味帰脾湯(かみきひとう)

全身の栄養状態を改善し、エネルギーである「気」を生み出しやすくする漢方薬です。血色の悪い人に用いられます。

→加味帰脾湯について詳しく知る

・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

「気」の流れを促す漢方薬です。「気」の滞りから起こる、のぼせやイライラがある人に用いられます。

→柴胡加竜骨牡蛎湯について詳しく知る

漢方薬を始めるときの注意点

漢方薬は繰り返す不調に対して、根本からの改善が期待できる薬です。そのため、食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。また、漢方薬はのむだけですので、自炊が難しい、毎食食事のバランスを考えるのが大変、という人でも気軽に取り入れられるでしょう。

ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。

◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

小原水月さんの写真
管理栄養士の小原水月さん
写真8枚

おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。

●疲れ目を軽減したいなら旬のかぼちゃや落花生を!目のダメージを修復する食材&漢方薬

●コロナ禍は要注意!「秋うつ」の原因と食事などによる対策を医師が解説