
「ビニール肌」という言葉を知っていますか? ビニール肌とは肌の表面を構成する角質層が薄くなり、ビニールのようにツヤツヤした状態をいいます。肌にツヤがあるため乾燥や肌荒れなどの問題に気づかないことも多く、対策をせずにトラブルが進行してしまうことも。特に乾燥しやすい秋冬は要注意です。そこで、医師で薬剤師の金城里美さんに、ビニール肌になっていないか確認する方法と、原因や食事などでできる対策について教えてもらいました。
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ビニール肌とは?
肌の表面は角質細胞が集まった角質層で覆われています。角質層は外の刺激から肌を守るバリア機能や、肌内部の水分を保つ保湿の働きをしています。
しかし、角質層が薄くなるとバリア機能と保湿機能が低下するため、乾燥しやすくなり、ビニール肌になってしまいます。しかも、乾燥をカバーするために皮脂が分泌されるのでツヤはよく、一見きれいな肌と思いがちなので、問題に気づきにくいのが特徴です。

ビニール肌のチェックリスト
次にあげるビニール肌の特徴が4つ以上当てはまる場合は、対策をすることをおすすめします。
・ツヤはあるけれど、触ると弾力がない
・保湿をしてもすぐに乾燥してつっぱる
・乾燥しているがテカりもある
・赤ら顔になりやすい(肌が薄く毛細血管が見えやすいため)
・化粧品をつけるとヒリヒリすることがよくある
・ニキビなどの吹き出物ができやすい
ビニール肌の原因
ビニール肌は、角質層を薄くしてしまうスキンケア習慣や生活スタイルが原因になっているといわれています。
なお、毎日のスキンケアをしっかり行っている美肌への意識が高い人でも、スキンケアのし過ぎが原因でビニール肌になっていることがあります。過度な摩擦や肌に悪い生活を行っていないか、習慣を見直してみましょう。以下は、肌に負担をかけているスキンケアの一例です。
・スキンケアの際に強く、もしくは繰り返しこする
・タオルで水分を拭く際に、ごしごしこする
・1日に何度も洗顔やクレンジングを行う
・過度にスクラブやピーリングをする
肌に過度の摩擦をかけると角質層が必要以上に剥がれ、ビニール肌の原因になります。次のような肌によくない生活を続けている人は要注意です。
・偏った食事
・栄養不足
・過度なダイエット
・睡眠不足
・運動不足
・過度なストレス
肌は、古い肌が角質層から垢となって剥がれ落ち、新しい肌に入れ替わる「ターンオーバー」を繰り返しています。このような生活習慣でターンオーバーが乱れることもビニール肌の原因となります。
ビニール肌を改善するケアのポイント
ビニール肌を改善・予防ために、肌に優しいスキンケアを心がけましょう。

やさしく洗顔する
肌への摩擦を避けるため、こすらずに泡でやさしく洗顔しましょう。タオルでふき取るときも、やさしくおさえるようにします。洗顔は朝と夜の1日2回が目安です。肌の乾燥が強い場合は、朝はぬるま湯のみで洗ってもよいでしょう。
汗・水に強いウォータープルーフの化粧品を使うと、クレンジングや洗顔の際にごしごしと強く洗いがちです。洗顔料だけで洗い流せる化粧品を選び、かつ、メイク時にも摩擦に気をつけることがおすすめです。
保湿を入念に
ビニール肌は乾燥しやすく、乾燥が進むと肌のバリア機能が低下してさらなる肌トラブルにもつながるため、保湿を入念にしましょう。

水性の化粧水と油性の乳液・クリームによる二重保湿がおすすめです。手のひらでやさしくおさえるように保湿剤をつけましょう。保湿と美容効果を高めるために、シートマスクを使うのもおすすめです。シートマスクは、化粧水のあとに使用します。また、シートマスクのあとは乳液・クリームで保湿の蓋をしましょう。
ビニール肌を改善するために必要な栄養素
生活面では質のよい睡眠、適度な運動、こまめなストレス解消を取り入れて、肌のターンオーバーを整えることもビニール肌対策につながります。そのほか、食生活でのフォローも欠かせません。特に意識して摂りたい栄養素はたんぱく質、ビタミンC、亜鉛です。
たんぱく質
肌の主要な成分であるたんぱく質は、美肌には欠かせない栄養素です。多様な食材からたんぱく質を積極的に摂るようにしましょう。

これからの季節にぴったりな煮物やおでんの具としてもおなじみの牛すじには、たんぱく質が多く含まれています。さらに、調理の過程で余分な脂質を取り除くことで、良質なたんぱく源として食べることができます。
ビタミンC
ビタミンCは肌の弾力を保つコラーゲンの産生を促す働きや、ターンオーバーを整える働き、シミの原因となるメラニン色素の産生を抑える働きがあります。

ビタミンCは熱に弱いため、生で食べられるパプリカ、いちご、キウイ、柑橘類などがおすすめです。
亜鉛
亜鉛はターンオーバーに必要な酵素の産生を促進する働きがあり、正常なターンオーバーのために必要な栄養素です。

冬に旬を迎える牡蠣は、亜鉛が豊富に含まれる食材です。また、煮干しや海藻類からも亜鉛を摂ることができるので、煮干し出汁の汁物や海藻のみそ汁などもよいでしょう。
肌質の改善には漢方もおすすめ
「肌質を根本から改善したい」という方には、漢方もおすすめです。毎日の食事を工夫したり、運動をしたり、睡眠時間を増やすなど、体にしみついた生活習慣を変えることで体質を改善するのは大変ですが、漢方薬であれば毎日飲むだけなので手軽に始めることができます。
漢方薬による肌トラブル改善の考え方
肌トラブルの予防・改善には、「水分の循環をよくして肌に潤いを与える」「血行をよくして肌の代謝をよくする」「自律神経を整える」「胃腸の働きをよくする」といった、漢方薬を選び、皮膚の乾燥や血行不良、ストレス、胃腸の不調などの原因に根本からアプローチします。

肌質の改善に効果的な漢方薬
・当帰飲子(とうきいんし)
肌の乾燥は、体全体をめぐり栄養を届ける働きをする「血(けつ)」の不足が関与していると考えられています。当帰飲子は、「血」を補給する生薬とかゆみを止める生薬が配合されており、肌の乾燥や肌の乾燥に伴うかゆみを改善する効果が期待できます。
体力中等度以下で、冷え性で、皮膚が乾燥する場合の、湿疹・皮膚炎(分泌物が少ないもの)・かゆみに処方される漢方薬です。
・温清飲(うんせいいん)
温清飲は「血」を補充する漢方薬と、肌やさまざまな器官に炎症を引き起こす「熱」を冷ます漢方薬が配合されています。そのため、肌の乾燥や肌の赤み・かゆみを改善する効果が期待できます。
皮膚の色つやが悪くのぼせる場合の月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症にも処方される漢方薬です。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こる場合もあります。
自分合う漢方薬を見つけるためにも、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:皮膚科医・金城里美さん

かねしろ・さとみ。皮膚科医。薬剤師。東京大学薬学部卒業後、医師を目指して、東京医科歯科大学医学部に入学。体、精神とも関わって多様に現れる皮膚の病態に興味を持ち、皮膚科医の道を選ぶ。卒業後、大学病院、総合病院、クリニックでの皮膚科勤務を経て、一般皮膚科から美容皮膚科まで皮膚科領域の診療を幅広く行う。 現在、総合病院の皮膚科常勤医として勤務。今までの経験をいかし 、「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで情報発信している。