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活動50周年「アリス」のパンチ力溢れる名曲たち アッパーカット、時々ボディブローも

『チャンピオン』はアッパーカットのような衝撃をもたらした(写真は1979年、Ph/SHOGAKUKAN)
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『帰らざる日々』の恐ろしき走馬燈感

この『チャンピオン』の衝撃は例えるならアッパーカット。そして、中学生の頃に体験したアリスは、いわば「ジャブ」! 当時、南こうせつさん&さだまさしさんというWメガネが好きだった私は、誕生日にロック&フォークの名曲が詰まったカセットのセットを買ってもらった。その中にアリスの『帰らざる日々』『秋止符』『狂った果実』『エスピオナージ』が収録されていたのだ。このすべてが、髪が逆立つほどカッコよかった。

ライブバージョンだったこともあり、「ン〜♪」というハミングの部分が「ンァ〜↑↑♪」と音程が上がったり、リフレインがどんどん早くなったり、「コーッ!」「オラーイ!」など独特の掛け声が入り、ほとばしる狂気! 『エスピオナージ』で魂を、『秋止符』で涙腺を揺さぶられ、あのカセットは本当にすり減るほど聴いた。嗚呼、なぜ引っ越しの際捨ててしまったのだろう!

映画も製作された(写真は1979年、Ph/SHOGAKUKAN)
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『青春時代』という歌にハズレ無し

社会人になってからも、アリスは私の心を殴ってきた。職場のカラオケ忘年会で、上司が森田公一とトップギャランの『青春時代』と間違え、アリスの『青春時代』を入れてしまったのである。聴いたことのない、心が絞られるような切ないイントロ。

その上司は「まあいいや、青春時代という歌にハズレ無しだからね」と粋なことを言いつつ、アリスの『青春時代』をそのまま歌唱したのだった。

これが凄まじく名曲であった。私は中腰で聴き、その後すぐオリジナルを入手しすっかり覚え、今やマイカラオケリストの一つである。上司のあの時の「青春時代という歌にハズレ無しだからね……」というセリフをイントロで言い、悦に入りながら歌っている。

時にはアッパーカット級にガツンと殴られ、時にはボディーブローのようにジワジワ効いてくるアリスの楽曲。もちろんソロでも、谷村新司さんの『昴』や『群青』、堀内孝雄さんの『愛しき日々』や『竹とんぼ』など、その素晴らしい歌声と世界観は大好きだ。ただ、やはり三人が揃うと胸がカーッと熱くなる!

1981年から活動休止し、数度の活動再開・休止を繰り返しつつ、2009年からは完全再始動しているアリス。まさに何度も立ち上がるチャンピオンさながら。

彼らの歌の主人公は、王者も敗者も、誇り高い。ボロボロになっても、そのボロボロが美しい。これからも、そんな彼らの世界観に殴られたい!

さあ次は60周年! まだまだ白いタオルは投げないで。

アリスの活動はまだまだ続く(写真は2009年、Ph/SHOGAKUKAN)
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◆ライター・田中稲

田中稲
ライター・田中稲さん
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1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。https://twitter.com/ine_tanaka

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