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50周年のユーミンが「いつも新しい季節を連れてくる」秘密 夫が綴った「不器用」さ

夫婦での共演も(写真は2008年、Ph/SHOGAKUKAN)
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秋も深まり、そろそろ冬の足音が聞こえてきそうな今日この頃。1980年代〜1990年代のエンタメ事情に詳しいライター田中稲さんが今回取り上げるのは、冬の季語にもなったという「ユーミン」です。今年デビュー50周年を迎えたユーミンこと松任谷由実の足跡を独自の視点から振り返ります。

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松任谷由実さんが今年50周年と知った時にはちょっと驚いた。ヒット曲の多さから考えると納得なのだが、数字のカウントがピンと来ない。ユーミンは、年数を重ねるというよりも、土星の環みたいに、星の周りに大きく弧を描いているイメージだ。

その曲は季節のように巡ってくる。ラジオで数回聴き流しただけで、歌詞カードを見なくても歌えたり、ユーミンと知らず感動したら「エッこの歌ユーミン!?」と気付いてこれまたビックリしたり。そのさりげなさったら、曲というよりも、花の香りとか、風とか、雲がちぎれるとかそんなレベル。なのでスルーのしようがない!

1972年、『返事はいらない』でデビュー(写真は1976年、Ph/SHOGAKUKAN)
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『守ってあげたい』ザ・ベストテンの思い出

幼い頃のユーミンのイメージは「ザ・ベストテンに出ない人」だった。1981年8月に『守ってあげたい』がランクインしたものの、なかなか出演しない。司会の久米宏さんが「今週もご出演いただけません!」と言うたびに「なぜに!?」と首をひねりまくったものである。「『私はベストテンなんて興味無いのよ。オーホホ!』と偉そうにしてる人なんじゃないかなあ」と勝手に想像もした。我ながらあまりにも単純おバカな子どもであった……。

『守ってあげたい』は1981年発売
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だから1981年10月8日に初めて出演したとき、ものすごく緊張されていた様子で「アレッ、イメージと違う」と驚いたものだ。

それでも、10代の頃はなぜかピンと来なかったユーミン。私が彼女の声や曲をじんわり意識し始めたのは、かなり大人になってからだ。

それは偶然ラジオで聴いた『ANNIVERSARY〜無限にCALLING YOU』。か細く揺れる「信じてる」という声が耳から鼻に来た。ツーン! なにこのセンチメンタルダイナマイトな曲は。涙腺に刺さる! 詞の内容からウエディングソングにカテゴリされることもあるけれど、私には、知らない誰かが「なにがあっても信じてる」と遠くで励ましてくれる歌に聴こえたのだった。

巡る季節のようにそこにいる(写真は1976年、Ph/SHOGAKUKAN)
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それから、ユーミンの風が私にふんわり、さりげなく吹くようになってきた。今もこの曲と、『ダンデライオン〜遅咲きのたんぽぽ』、そして『Hello, my friend』は聴くと心にピンクオレンジの空気に包まれる。切な甘酸っぱい! 私にとってユーミンはこの3曲の印象が強く、春と夏に聴きたくなる。

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