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65歳オバ記者 母の死、大病で手術、親友の死…つらい出来事が続く中、「年上の友達」がいることの“ありがたさ”

オバ記者
今まで以上に大切に感じた「年上の友達」の存在
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昨年、入院と手術を経て境界悪性腫瘍であることがわかった、ライター歴30年を超えるベテランのオバ記者こと野原広子(65歳)。大病だけではなく、母親や親友の死などつらい出来事が続いているが、元気づけてくれたのは「年上の友達」だった。

* * *

93歳の書道家との「40年の交流」

「ノハラさん、わかる? 私よ。わ、た、し」

先日の昼過ぎ、スマホをとると聞き覚えのある年配女性の声。だけど、顔が浮かばない。「え、え?」と戸惑っていると、「ア、イ、〇、ワ」とかすれた声が返ってきたの。その瞬間、「ぎゃははぁ~」とあらぬ叫び声をあげてしまった私。

「ほんとにアイ〇ワさん(以下Aさん)? わああ、久しぶりぃ~」と言うと、「ほんとね。何年会ってないかしら」と、笑いを含んだ声が返ってきた。

Aさんとは私が20代半ば過ぎに通ったイタリア語教室で知り合って40年間、つかず離れずの関係が続いていたけれど、この数年は会っていない。最後に会ったのは6~7年前に浅草橋駅の近く。かなり離れたところに住んでいるのに、「なぜここに?」と驚いて 近くの蕎麦屋さんに入った覚えがある。それからは電話で何度か話したけれど、それもいつしか途絶えていたの。

オバ記者
初海外旅行の時の写真
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「もう、やんなっちゃうわよ。今、私ね、入院中なのよ。まあ、93歳になったから仕方ないけど、右手が思ったように動かないのがツラくてね」

Aさんは昭和5年に東京は深川に生まれた書道家だ。毎年くれた年賀状は当たり前だけど達筆なんてもんじゃなかったの。それが右手が動かないと筆が持てない。「そりゃあ、残念ねえ」と私も返したれど、Aさんの2歳上の母親を看取った強みで、「まあ、長いこと酷使した体だからあちこち不具合が出ても仕方ないんじゃない?」という言葉がすらっと出てくる。

するとAさんはますますカラッと明るい声になって、「そうなのよねえ。だけどあなた、それだけじゃないのよ」と流れるように話を続ける。その声がなんとも耳ざわりがよくてね。生粋の江戸っ子のAさんは人に負担をかけない話しぶりが身についているのよ。

親子ほど年の離れた友達が何人も

それで私は、去年の秋に「卵巣がんの疑い」で大学病院で手術をしたことや、この5年間、身近な人が次々に亡くなったことを話すと、「それはそれは、さすがのあなたも参るわね」って。そうなんだよね。年上の友達は話すと「心の糧」をくれるのよ。

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昨年、卵巣がんの疑いで手術を受けたオバ記者
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Aさんだけじゃない。18歳で上京してから48年。最初の数年はこういう大人とつき合いたいというイメージすらわかなかったけど、その後はずっと親子ほど年の違う“お友達”がいるんだよね。

お友達の条件は話が面白いこと。利害関係がないこと。おかしいと思ったらお互いズケズケ言ってもOKなこと。交際費は、そりゃあ、相手がおじさんだと会えば飲食代を払ってくれるけれど、それはおじさんが払いたがるからで、”財布の小さい”私に店やメニューを合わせてもらえるなら割り勘、大歓迎。

とはいえ、そのお友達も90代。先日は10年来のマブダチ、元建築家のOさん(91歳)が病院から電話をかけてきて、「あ~あ、退屈だよ。病院は刺激がなくていけないねえ」と言うんだけど、以前より声に張りがないんだわ。「全身がん」だから、いつどうなってもおかしくないと本人は言うんだけどね。

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入院は大変だったけど病院食はおいしかったな~
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「まあ、誰だって終わりはくるしね~。うまいことこっちからあっちに引っ越しできたら万々歳じゃね?」と私。「そうだねぇ。そううまいこといくかなぁ」とOさん。

50代の私だったら絶対に口にしなかったと思う。お迎えがそう遠くなさそうな人にそんなことを言ったら失礼だし、いや、罪悪だと思っていたかも。でも違うんだよね。言える人には言える、言えない人には言えないって、それだけのことなのよ。

病院ではさまざまな検査も受けた
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