
髪がうねってまとまらず、せっかくセットした髪も崩れやすい梅雨の季節。とくに、加齢によってうねりやすさが増したという女性は少なくありません。なぜそのようなことが起こるのか、加齢による髪質の変化や湿気で髪がうねる原因、対策方法について薬剤師の藤田佑莉さんに教えてもらいました。
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湿気の影響で髪がまとまらなくなる理由
梅雨は湿気による蒸し暑さでじっとりと汗ばむ季節です。湿度が高いと髪の表面を覆っているキューティクルが水分を吸収してふくらみ、表面がざらざらとして絡みやすくなります。
さらに、加齢によって髪は乾燥したり細くなったりする傾向があります。乾燥した髪は湿気を吸いやすく、髪の中の水分バランスが崩れやすい状態です。水分バランスが崩れると髪にうねりが生まれ、まとまりにくくなります。

また、湿気が多いと汗が蒸発しにくくなるため、汗と皮脂が混ざり合って肌に残り、頭皮にベタつきが生じます。
すると、髪にも汗や皮脂がついて重くなり、重力によってボリュームダウンします。その中に、汗や皮脂がついていない部分が混在するので、髪の重さや質感がバラバラになり、うねりやくせ毛があらわれるのです。
加齢が髪質に与える影響は大きく3つある
では、なぜ加齢によって髪質の変化が起こるのでしょうか? 主な原因を3つ紹介します。
頭皮や毛穴のたるみ
加齢の影響で皮膚のコラーゲンが減少したり、頭皮の筋肉や組織が衰えたりすると、頭皮全体が下垂し、たるみが生じます。
このたるみによって本来丸い毛穴がいびつに変形すると、そのゆがみによって太さがまばらな髪の毛が生えるようになります。太さがまばらになると、髪はねじれたり波を打ったりしてしまいます。
水分量や皮脂量の減少
また、体内の水分量や皮脂量は加齢とともに減少します。体内の水分保持能力が低下すると髪も乾燥しやすくなり、パサついてまとまりにくくなります。

皮脂の分泌量が減少すると頭皮や髪から水分が蒸発しやすくなり、さらに髪を乾燥させます。乾燥した髪は静電気を帯びやすく、髪表面のキューティクルがはがれやすくなるため、乾燥を悪化させ、切れ毛や枝毛などの悩みにもつながります。
女性ホルモンの減少
女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの分泌は20代をピークに減少していき、閉経期にはほとんど分泌されなくなります。
髪のコラーゲンを増やして新陳代謝を促し、髪の健康的な成長をサポートする役割があるエストロゲンが減少すると、髪はもろくなり、ツヤやコシがなくなったり、切れ毛や抜け毛が増えたりします。
髪のエイジングケアにはマッサージと紫外線対策
加齢による影響をカバーし、髪のエイジングを遅らせるためには、頭皮の血行をよくすることと、紫外線対策をすることが有効です。その理由とやり方を紹介します。
頭皮マッサージ
頭皮の血行が促進することで、栄養素や酸素が毛根に届きやすくなり、髪の成長が促されて健康な髪が育ちやすくなります。そのために行いたいのが頭皮マッサージです。

頭皮全体を指先でつかむようにして、指先の位置は変えずに小さな円を描くような動きで頭皮を押しながら揉みほぐします。この動きを、洗髪のついでに指先の位置を少しずつ変えながら、何回か行うといいでしょう。指の腹を使ってやさしく刺激することがポイントです(図参照)。
他にも、側頭部を両手の手のひらで挟み、両手で頭に圧を加えながら上下・左右に頭皮を動かしたり、生え際に手のひらを押し当て、上下に動かしたりすると、頭皮が柔らかくなる効果があります。
なお、1〜3分程度を1日3回行うことで、頭皮の血行やたるみを改善できるという実験結果を花王が公開しています。

朝のヘアセット時や昼休憩中、入浴中など、タイミングを見つけて頭皮をほぐす習慣をつけると、無理なく続けられるでしょう。また、マッサージを始める前に温かいタオルで頭皮を包んで温めておくと、血行促進の効果アップが期待できます。
頭皮・髪の紫外線対策
紫外線は髪を乾燥させ、パサつきや傷みを引き起こす原因となります。また、頭皮にも炎症や、活性酸素を発生させるなどの悪影響を与え、健康な髪の成長を妨げたり皮脂分泌を不安定にしたりします。
外出時には紫外線に当たる面積を減らすために髪をまとめ、帽子をかぶったり日傘をさしたりして、頭皮や髪が直接紫外線を浴びないようにしましょう。紫外線カット効果のあるヘアオイルやヘアスプレーなどを活用して、頭皮や髪へのダメージを軽減する対策も併せるとより安心です。
さらに、炎天下で長時間過ごした日は、保湿も重要です。ヘアマスクや洗い流さないトリートメントなどを使って、いつもより丁寧にケアを行いましょう。
髪のアンチエイジングに効果的な食材
アボカドはビタミンEやビタミンB6、ビタミンCなど、健康的な頭皮や髪の維持に役立つ栄養素を豊富に含んでいます。

抗酸化作用があるビタミンEは、紫外線によるダメージを軽減し頭皮や体の老化を抑える効果が期待できます。また、血行を促進する作用もあり、頭皮への栄養供給も助けます。ビタミンB6には細胞の新陳代謝を促したり、皮脂分泌量を調節したりする作用があります。
ビタミンEと同様に抗酸化作用を持つビタミンCは、頭皮の健康維持や髪の成長に必要なコラーゲンの合成にも必要な栄養素です。
さらに、アボカドに含まれるオメガ3脂肪酸には血行促進効果があり、ツヤやコシのある髪の成長をサポートします。

アボカドはサラダやパンと合わせるなど、手軽に食事へ摂り入れることができます。一方で、髪の素となるたんぱく質として肉や魚、大豆などを、魚介類やナッツ類から髪の成長を促す亜鉛を摂取するなど、バランスのよい食事を意識することが大切です。
髪のアンチエイジングに有効な漢方薬
頭皮マッサージや紫外線対策、食生活と合わせて、体質改善が期待できる漢方薬をのむのも効果的です。頭皮や髪への血流不足やホルモンバランスの乱れ、ストレスなどが髪を作ったり育てたりする機能を低下させると考えられています。

そこで、「血行をよくして細胞に栄養を届ける」「ホルモンバランスの乱れを改善する」「自律神経を整えてストレスを緩和する」などのアプローチで髪質を根本から改善する漢方薬を選びます。
髪質改善におすすめの漢方薬
・人参養栄湯(にんじんようえいとう)
虚弱気味で体力があまりない人に向いています。消化・吸収の機能を高める効果があるので、頭皮や髪を作る細胞などにも栄養や潤いを与えられます。
・四物湯(しもつとう)
皮膚が乾燥し、色艶の悪い人に向いています。「血(けつ)」(栄養)を補い、めぐらせることで、乾燥した皮膚に栄養を与えます。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:薬剤師・藤田佑莉さん

ふじた・ゆうり。薬剤師。北里大学卒業後、産婦人科門前の調剤薬局で働く中で女性特有の不調に悩んでいる方が多いと実感したことから、漢方薬による根本治療の大切さを広めたいと考え「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)で薬剤師としてサポートを行う。