健康・医療

生涯を通して「睡眠」を優先させることがなぜ大切なのか?「睡眠時無呼吸症候群」なら心血管疾患のリスク増大

睡眠時無呼吸症候群──30秒息を止めるようなもの

心臓と血管にとくにストレスがかかるのが「睡眠時無呼吸症候群」だ。

枕に頭をつけている女性
睡眠時無呼吸症候群は、30秒息を止めるようなもの
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これは睡眠中に少なくとも10秒、1 時間に5回以上、定期的に呼吸が停止する疾患で、呼吸が停止している間、血中の酸素濃度は5〜10%低下する。

睡眠時無呼吸症候群の重症度合は、1時間あたりの呼吸停止回数を測定し、無呼吸・低呼吸指数(AHI)と比較して算出される。なおAHIでは、1時間あたりの無呼吸・低呼吸が0〜5未満を正常、5〜15未満を軽度、15〜30未満を中度、30以上を重度と分類している。

呼吸が停止する頻度が高いほど、また1回の停止時間が長いほど、影響も深刻になる。呼吸停止が何度も繰り返されると、体はいずれ完全に消耗してしまう。試しに、30秒間息を止めてみてほしい。

これが重度の睡眠時無呼吸症候群の患者によく見られる状態だ。全身がどれだけ疲弊するか、実感できるのではないだろうか。

血圧上昇により心血管に問題が生じるリスク

血中の酸素濃度が低下すると血管系のセンサーがこれを検知し、新鮮な酸素を取り込もうと血管系は慌てて肺に血液を送り込む。さらに脳に酸素不足が伝えられる。すると脳は「大変だ、命の危機だ!」と言わんばかりに、神経刺激を介して心臓に「もっとポンプに力を入れて血液を送ってくれ!」と要請する。同時にストレスホルモンであるアドレナリンとコルチゾールを分泌し、心臓と血管に次のように指令を送る。「問題が発生した、酸素が足りない。心臓は鼓動を速めてくれ! 血管、君たちはもっと早く肺に血液を送り返すように!」。

このような事態が1時間に何度も、そして毎晩のように起こると、血圧が上昇し、心血管に問題が生じかねないことは容易に想像できる。心臓は本来、夜間、しかも1時間に何度もそのような激しい「闘争・逃走反応」に対処するようには設計されていない。体内のストレスシステムが緊急出動態勢にある以上、深い眠りにはつけず、睡眠の休息・回復効果は失われてしまう。睡眠が妨げられることは体にとって真のストレスあるいは負担要因となり、朝、疲労困憊で目を覚ますことになる。

このような呼吸停止は、循環器系にとって大きな負担だ。

それはまるで車のギアを1速に入れたまま、アクセルとブレーキを交互に踏んで運転しているようなものだ。どこかの時点で、モーターはとても付き合いきれないとばかりに壊れてしまうだろう。

「舌」がのどの気道を狭める

心臓と血管は強いストレスを受けることになり、長期的には、心臓病や動脈硬化、さらには脳卒中につながる可能性がある(脳卒中患者のほぼ60%が睡眠時無呼吸症候群に苦しんでいる)。

喉を押さえる女性
「舌」がのどの気道を狭める
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とくに危険なのは、筋肉が最も弛緩した状態にあるレム睡眠中の呼吸停止。睡眠時無呼吸症候群は通常、気道が狭くなることで起こるが、睡眠中に舌が弛緩すると気道がさらに狭くなるのだ。

深い睡眠中とは異なり、レム睡眠中は心臓のリズムも安定しない。1分間の心拍数は大きく変動し、60回、80回、50回、100回の間を行ったり来たりする。この状況で無呼吸になると、循環器系にさらに負担をかけることになる。

そのため未治療の睡眠時無呼吸症候群の人の心臓発作は、明け方や早朝の睡眠時に多く見られるレム睡眠中に起こることが少なくない。

大半のケースは閉塞性睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群は、「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」と「中枢性睡眠時無呼吸症候群」の2種類に分けられる。後者は非常に稀で、脳の呼吸中枢機能に異常が生じることで発症する。

大半のケースは閉塞性睡眠時無呼吸症候群であり、原因としては次のものが挙げられる。

お腹にたまった脂肪を両手でつまんでいる女性
過体重や加齢などが閉塞性睡眠時無呼吸症候群の原因となり得る(Ph/PIXTA)
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過体重:首まわりに脂肪がつくことで、上気道が狭められる。上気道はとくにレム睡眠中に弛緩するため、気道のさらなる閉塞が呼吸停止を引き起こすおそれがある。

加齢:年を重ねるとともに筋力は低下する。上気道を支える筋肉も例外ではなく、上気道を拡げる筋肉の力が弱まることで、睡眠中の気道が狭くなる。

:人によっては解剖学的に上顎と下顎のバランスが悪く、噛み合わせがよくないことがある。睡眠中に舌が弛緩すると、顎の位置がよくないために舌が少し後方に落ち込み、上気道の空気の通り道が狭くなってしまう。

甲状腺機能低下症:甲状腺が甲状腺ホルモンを十分に分泌できないと、過体重のリスクが高まる。加えて、甲状腺機能低下症は舌の肥大化をともなうことがあり、上気道の筋肉の働きを妨げる可能性がある。これらすべてが、睡眠時無呼吸症候群のリスク増大につながる。

アルコール摂取量:アルコールは筋肉の弛緩をもたらすため、就寝直前のアルコールの過剰摂取は睡眠中に一時的な呼吸停止をもたらすことがある。

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