犬や猫を飼っている人のうち、夜間に動物病院に連れて行ったことのある人は3割に上るそうです 。連れて行きたかったけれど病院が見つからなかった人と合わせると、夜間に動物病院を緊急受診させたい事態に遭遇した飼い主さんは4割にもなるのだとか。夜間に起きる犬猫の健康トラブルはどのようなものが多く、飼い主さんは事前にどのような準備をしておけるのでしょうか。獣医師の山本昌彦さんに聞きました。
「夜間に何かあったらココ」を決めておく
人間の場合は、夜間にひどく具合が悪くなったり、深刻なケガをしたりした場合は、救急車を呼んだり、救急車を呼ぶかどうかの相談をしたりできますし、症状の重さによって1~3次に分かれた救急医療体制が整備されています。ですが、動物医療にはまだそのようなシステムは整っていません。だからこそ、飼い主さんが日頃からいざというときの準備をしておく必要があります。
山本さんは「犬や猫を飼い始めるときに、ご自宅から近い夜間診療に対応する動物病院を調べておくことが何より大切」といいます。
「夜間専門や深夜対応、24時間対応の動物病院もあれば、救急に限って夜間診療を受け付けている動物病院もあります。地域で当番制を取っていて、電話で確認してから向かうシステムもあります。まずはかかりつけ医に尋ねて、夜間に頼れる先を見つけておくことが大切です。併せて、そこへ連れて行く手段も確保しておきましょう」(山本さん・以下同)
準備がないまま、夜間にペットの具合が悪くなると、かかりつけの病院に電話してもつながらなかったり、あわててネット検索をして時間を食ったりして、有効な解決策がなかなか見つからない可能性があります。何ごともない間に、手を打っておきたいところです。
夜間の受診理由、多いのは嘔吐や異物誤飲
では、どのようなときに動物病院の夜間診療を受けるべきなのでしょうか。犬で多いのは、「誤飲・誤食したとき」「原因不明の下痢・嘔吐・血便が見られたとき」だといいます。猫は「原因不明の下痢・嘔吐・血便が見られたとき」「膀胱炎、誤飲・誤食したとき」。 発作が起こった時も夜間診療を受けたほうがよいケースになります。
「犬でも猫でも、誤って異物を飲み込んだり、食べてはいけないものを食べたりした場合は、夜間でもすぐ動物病院に連れて行ってあげてください。
異物を飲み込んだせいで腸閉塞や腸重積、さらには腹膜炎になる可能性もあります。鋭利なものを誤飲した場合は消化器官を傷つけることもあるので小さなものでも見過ごせません。チョコレートや玉ねぎ、人間の薬、電池など犬や猫にとって有毒なものを誤食した場合は、中毒の危険性がありますので、水を飲ませながら病院へ。少しでも体内の“毒”を薄めることができます」
下痢・嘔吐・血便はなかには内臓疾患など深刻なものも
下痢・嘔吐・血便は、ストレスや寄生虫、胃腸炎などさまざまな原因で起きる症状で、なかには内臓疾患など深刻なものもあります。
「犬も猫も胃が横を向いているので、人間に比べると嘔吐しやすい生き物です。毛玉がたまっても吐くし、消化不良や水の飲みすぎでも吐きます。1回吐いて、その後はケロッとしているようなら、様子を見ても構いません。下痢も同じで、他の症状を伴っていないし、元気そうだという場合に限っては様子見をしてもいいと思います。
ただ、短い時間に2回3回と続いたり、元気がなかったり、吐いたものや便の色や臭いが異常であったり、震えなど他の症状も出ていたりするようなら、夜間でも動物病院を受診しましょう。早く診断がつくように、吐いたものや便は保管して病院へ持ち込んだり、写真を撮って獣医師に見せたりするといいですね」