17年の専業主婦生活後、仕事復帰してキャリアを重ね、外資ホテルの日本法人社長を経て、現在は外資系IT企業で働く薄井シンシアさん(64歳)は、徹底した合理主義者。「職場で好かれる努力はしない」と言い切る半面、接待や飲み会には「誘われたら必ず参加する」と言います。人間関係の絶妙な甘辛バランスとは? シンシアさんの言動から、人付き合いのコツが見えてきました。
* * *
飲み会は誘われたら参加する
「職場に『飲みニケーション』が必要か?」と聞かれたら、私はお酒も飲まないので不要です。でも必要な人がいるなら企画すればいいし、誘われれば必ず参加します。
ただ、実際にはあまり誘われません。同僚たちはお酒の力を借りて本音を言うけれど、私はお酒を飲まなくても言いたいことを言うので、そういう場へ行く必要がないのかもしれませんね。
あるとき、私は同僚に「なぜ飲み会に誘われないのか」と聞いたことがあります。すると同僚は「飲み会では大抵、誰かの悪口になる。でもシンシアは悪口を聞きたがらないから呼びにくい」と言いました。
私は愚痴大会に付き合いたくありません。もし愚痴が始まったら、飲み会は終わる時間が決まっているので、それまで黙って料理を食べ続けます。私は真面目だけれど、みんなは飲み会で不真面目になりたい。だから、そういう場に私を呼ばないのかもしれません。
職場で人に好かれる努力はしない
私は職場で好かれる努力をしません。仕事というのは、嫌いな人だろうと好きな人だろうとプロとして働き、常に同じ結果を出すことが大事だと思っています。
いくら仲良しでも、職場である以上は結果が大切でしょう? 逆に言うと、きちんと仕事をする人は人間関係もうまくいきます。
私はどの会社へ行っても、半年もすれば、みんなから仕事のやり方を聞かれます。誰にでもオープンなので、「シンシアに聞けば解決する」と思われるのでしょうね。即答できないときは「ちょっと待ってね。調べておく」と伝えて、答えを探します。
職場に苦手な人がいても、仕事上は付き合うしかありません。もし相手が上司なら、どんなに嫌でも、仕事である以上はやるしかない。 私がちゃんと働いて、それでも相手が受け入れないなら「どうぞ勝手にしてください」と思います。
私はメディアに出演しているので、職場で「Twitter(現・X)をフォローしていますよ」「TVを見ていますよ」と話しかけられることもあります。そんなときは「ありがとうございまーす」と、さらっと返して終わり。もちろん、求められれば話をしますが、私から職場で出演した番組について話をすることは一切ありません。職場は仕事をする場で、個人的なことをさらけ出す場では無いでしょう?
元気が無い同僚は社食に誘う
職場で、自分から食事に誘うこともほとんどありません。精神的に自立しているから、一人で食事をすることが嫌ではないし、誘われたら一緒に食べる。それぐらいの距離感でよいと思っています。
ただ、元気がない同僚がいれば、たまに「ご飯食べる?」と社内の食堂へ誘うことはあります。たまたま出会った人が相談事を抱えていそうだったら、「あとで招待のメールを送るから、ご飯を食べに行こう」と外へ連れ出すこともあります。
そういうときの店選びは本人任せ。私はまったく食事にこだわりがないので、相手のペースに合わせます。
接待は結果を焦らない
「接待」にも付き合います。ホテル業界で働いていたときも頻繁に接待がありました。常連客を接待することもあれば、初めて来たお客さんにホテルのレストランを紹介することもありました。大抵は同じテーブルについて一緒に食事をします。
ただ、多くの人が考える「接待」は、接待の場を利用して相手との交渉を前進させることが目的でしょう? でも私の「接待」は、最初から特定の目的があるわけではなく、お互いの人間関係を築くための場だと考えています。
接待を通じて親しくなり、翌日以降のビジネスに繋がったら「よかったね」と思うし、もし繋がらなかったら「今は結びつかなかったけれど、将来は繋がるかもしれないから長い目で見よう」と考えます。