飲食店、交通機関、小売店、コールセンター、役所、病院などの利用者が従業員に行き過ぎた要求や迷惑行為をするカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)が社会問題化している。だからこそ、自分は迷惑な人間にならないように、日頃から心がける必要もある。では、具体的にどんなことに気をつければいいか。ハラスメント専門家・村嵜要さんとクレーム研修専門家・津田卓也さんの二人の専門家に解説してもらった。
専門性の高い契約の際は、「わかる人」に同伴してもらう
携帯電話ショップなどで、専門用語が交じる説明を受け、理解し切れずに四苦八苦する人が、高齢者を中心に増えている。わかるまで何度か説明を求めるのは問題ないはずだが、同じ質問を繰り返し続けると、“リピート&長時間拘束型のカスハラ行為”と受け取られる恐れも。
「たとえば、NTTドコモの廉価版プラン『ahamo』の場合、そもそも実店舗でのサポートはなく、申し込みも質問もすべてネットです。このまま人手不足が進めば、省力化や効率化がより顕著になるでしょう」(村嵜さん・以下同)
では、スマホやパソコンなどの専門的な説明や契約が苦手な人はどうすればいいのか?
「一度の説明で理解できるか不安な場合は、スマホやパソコンの機能に詳しい家族や友人などに同行してもらうとよいでしょう。それが難しい場合は、機械に疎いことを最初に伝え、ゆっくり教えてもらえるようにお願いしましょう。くれぐれも、『客だから、何度も説明してもらって当然』といった古い考えは捨てること。この考えを持っていると、カスハラ加害者になる可能性は大きい。自分が過剰要求をしていないか注意しながら、正当な要望を伝えることが大切です」
声を荒らげたらアウト 怒りを制御するコツとは?
最初は冷静でも、説明がわかりにくかったり、苦情への対応がおざなりだと感じたりすると、徐々にイライラ感が増してしまうものだ。
「怒りの感情をコントロールできず、あなたが声を荒らげた瞬間、言われた側は恐怖を感じます。たとえあなたが正当な要求をしていたとしても、クレーマー扱いされてしまいます。だからこそ、カッとなりやすい人は、怒りを制御するコツを学ぶ必要があります」(津田さん・以下同)
おすすめは、下記の4か条だ。
「怒りが湧いてきたら、ゆっくり6まで数えたり、深呼吸を3回行いましょう。これでアドレナリンを鎮静化させられます。無理な場合はその場を離れ、トイレなどに行ってひと呼吸おきましょう。
また、クレームを言うときに相手が話をかぶせてきたら、相手が言い終わるまで待ち、決して言い争いをしないこと。相手の言葉を遮ってしまうと、言葉の潰し合いになったり、口げんかになってしまいます」
怒りを制御するコツを身につけ、声を荒らげず相手と冷静にやり取りすることがこれからは大切だ。
●怒りをヒートアップさせない4か条
【1】心の中で6まで数える
【2】深呼吸する
【3】一旦、その場を離れる
【4】相手が言い終わるまで待つ
第一印象をよくする振る舞いをしよう
「人と人がコミュニケーションを図る際、短時間で相手の第一印象を決めることがわかっています。第一印象を決めるのは、【1】見た目、【2】声のトーンや大きさ、抑揚など、【4】話し方や会話の中身です。その影響度合いは、視覚や聴覚によるものが90%以上。言語以外のメッセージでほぼ第一印象が決まるのです」(津田さん・以下同)
もし、あなたが正当なことを主張しているのにクレーマー扱いされた経験があるなら、表情や目つきなどの見た目や声のトーン、話し方でイメージを悪くしている可能性があるので、優しく穏やかな雰囲気を与えるよう意識して、話すようにしてみよう。
「なぜなら、クレーマーと勘違いされやすい人の特徴には、“話すときの顔が怖い”“声がすごく大きい”“甲高い声でまくしたてる”“怒りに任せて机などを叩く”などが挙げられるからです。身に覚えがある人は、気をつけた方がいいですね」
◆教えてくれたのは:
村嵜要さん/ハラスメント専門家。日本ハラスメント協会代表理事。さまざまなハラスメントについての研修のほか、テレビや新聞などでも解説。
津田卓也さん/クレーム研修専門家。セミナー&研修会社キューブルーツ代表。近著に『カスハラ、悪意クレームなど ハードクレームから従業員・組織を守る本』(あさ出版)。
※女性セブン2024年8月1日号