日本人の99.94%は火葬され、誰しもが最後はお骨となって弔われる。そんな中、明らかになった都内の火葬現場に隠然と存在する不公平な因習。『女性セブン』が切り込んだ火葬場のタブーに、行政のキーマンたちは何を思うのか――。
火葬場の問題を改善するためには「官」の関与が必要
「火葬はすでに社会インフラです。公共サービスの一環として、透明性のある料金体系を模索するため、行政がもっと介入するのも選択肢ではないでしょうか」
そう話すのは、千代田区議会議員の永田壮一氏だ。
『女性セブン』は前号(2024年12月19日号)で、「火葬場のタブー」と題した記事を掲載。都内の葬祭業界や火葬場には、「全東京葬祭業連合会」(以下、全東葬連)系の同業組合に対し、火葬料金から現金を還付する「キックバック」や、全東葬連系の組合業者が独占する格安葬儀の「割引利権」が存在することを報じた。
こうした不公平な因習は、火葬料金や葬儀料金となって、喪家が負担することになる。ただでさえ不明朗な葬儀料金をさらに不透明にしている原因でもあり、火葬場の利用者が、知らず知らずのうちに損をしている実態があった。
この問題を改善するためには、「官」の関与が必要だと、前出の永田氏は話す。
「私はかねて、東京の火葬事情や葬祭に関して関心を持っており、公営の火葬場が少なすぎることが、問題だと感じていました。
区議会でも『(都内5つの区で運営する)臨海斎場を参考に、千代田区を中心とした広域連合を組織して、新たに公営火葬場を建設できないか』と質問したのですが、区の反応はいまいち。千代田区に関していえば、明確な担当部署もないというのです。
都内の火葬事情に関しては民間企業に任せて寡占状態を放置していた行政にも大きな責任がある」
実際、都内には「区民葬」という格安葬儀のシステムが存在するが、区役所が発行する葬儀券が必要にもかかわらず、「全東葬連」系の同業組合に加盟する葬儀社しか受注できない。また、火葬料金や葬儀料金の減額には公金は入っておらず、“民間業者の善意”で成り立っている実態がある。
「区民葬を使えば、本来9万円の火葬料金が5万9600円になります。約3万円減額されますが、この減額分を負担するのは火葬業者。たとえば都内の火葬の7割近いシェアを握る『東京博善』では、この区民葬の費用負担が年間で2億円以上になるといいます」(都政関係者)
東京の近隣自治体では、費用の一部を自治体が補助する「市民葬」の制度
東京23区の特別区長会会長であり、落合斎場が所在する新宿区の吉住健一区長はこう述べる。
「現在の法律では火葬場は区が所管することになっており、民間火葬場に対しては各所在区が連携して立ち入り調査などを実施しています。区民葬の利用率はコロナ禍前は3〜4%程度でしたが、現在は10%近くにまで増加しています。コロナ禍を経て大きく社会が変わり、葬儀も会葬者を呼ばない形式をとるかたが増えており、かつては生活困窮のかたのセーフティーネットという側面があった区民葬ですが、ここまで利用者が増えたのであれば、公平な制度にするために改善を検討する必要があるかもしれません」
さらに、永田氏もこう指摘する。
「学生時代に葬儀社でアルバイトをした経験があるのですが、葬祭業者の場合、格安の区民葬でも利益が出せるのでしょう。しかし、火葬費用の減額分は民間火葬業者に負担を強いている。区民葬の利用者が増える一方で、制度が古く実態にそぐわない部分があるのなら、行政の補助金を入れることも検討すべきです」
実際、東京の近隣自治体でも「市民葬」の制度を持つところは少なくない。費用の一部を自治体が補助する仕組みがあったり、受注業者を組合加盟者に限定していなかったりと、都内よりも公平で公正な開かれたサービスになっている。
「たとえば、埼玉県の新座市は、市民葬に民間の火葬場を使用していますが、正規料金から約2万円引きで利用でき、同業組合の利権もありません。また、同じく埼玉県の川口市は市民葬の費用に補助金を拠出し、葬祭事業登録業者の資格要件をホームページに公開。市指定葬業社への登録を募っています」(前出・都政関係者)
そうしたオープンなシステムこそ不公平感や利権化を防ぐための、ひとつのモデルケースになるのではないだろうか。