平成28年版『情報通信白書』(総務省)の調査によると、パソコンの普及率は2015年には76.8%と右肩下がりとなり、スマホとの差は4.8%と逆転しそうな勢い。“デスクワークは肩こりや腰痛の原因になる”といわれて久しいが、小さなスマホはさらに姿勢を悪化させ、腱鞘炎など関節にも不調が及び、内臓も悪化する可能性も。うまくつきあう方法は?
うつむき&片手持ちで体の負担が激増
電車に乗ると一斉にスマホを取り出し、画面に夢中になる人たち。お年寄りが近くにいても、うつむいたままで気づかず、席を譲る人がいない…。
今やこんな光景は当たり前になってしまった。この“うつむいたまま”の姿勢が特に筋肉や骨に異常をもたらしていると、KIZUカイロプラクティック本院院長の木津直昭さんは語る。
「体重60kgの人が体の軸に沿って正しい姿勢で立った時、頭には5kgの力がかかっています。体をそこから30度前傾させると16kg、60度では27kgと増大するといわれています。その頭を支えるのが首。つまり、前かがみになるほど、首に負担がかかるのです」(木津さん、「」内以下同)
前に出た重い頭部を支え続けると、首に負担がかかって“ストレートネック”という首の正常なカーブが失われる状態に。そしてその負荷は、やがて肩や腰、さらに全身に不調が広がっていく。
「ストレートネックの人はほぼ猫背。猫背になると胸の筋肉が硬く収縮し、胸が広がらず、呼吸は浅くなります。呼吸は全身の細胞に酸素や栄養をいきわたらせる役割があるので、浅くなることで、疲れやすさや頭痛を感じるようになる。
また、首から腰は神経が集まっていて、ここの筋肉が凝り固まることで神経が圧迫され、手足のしびれを感じる人も。自律神経のバランスが崩れることで、逆流性胃腸炎、冷え症など内臓にまで異常が出てしまいます」
特に女性は筋力が弱く、頭の重みを支えきれずストレートネックになりやすいという。
「首の筋肉を鍛えることもできますが、自己流では痛める危険性が高いです。視線を上げ、胸を開いて猫背をやめることが改善する近道です」
他にも注意すべきなのは、スマホを持つ手。手首が痛い、指がしびれるなどの違和感を感じたことはないだろうか? 特定の部位ばかりにスマホの重みが加わり、痛めている可能性がある。
「ゴルフやテニスのやりすぎで腕や肘がしびれるのと同様、肘を深く曲げて片手でスマホを支えていると負荷がかかります。多くの人がやりがちな、手首を反らせて親指のつけ根で支える持ち方は“ドケルバン病”という親指から手首にかけての腱を痛める原因になるんですよ」
これを防ぐには、スマホを両手で持つなど負荷を分散させる持ち方が大切だが、あえて片手で持てないようタブレットにして、机に立てて使うのもおすすめだ。使い方を工夫してうまくつきあおう。
ストレートネックとは?
首には頸椎という7つの骨があり、重い頭を支えている。頸椎は緩やかにカーブを描くように並び、体の後ろ側に向かってやや反っている。
頭が前方に出る姿勢が続くと、頸椎の緩やかなカーブはまっすぐに。カーブが逆向きになる場合も。頭を支えようと、首まわりの筋肉が緊張状態に。
あなたはストレートネック?
5個以上当てはまったら要注意!
□30分以上連続してスマホの画面を見ていることが多い
□1日のデスクワークが6時間以上ある
□枕がない方がスムーズに寝つける
□顔を左右に振った時、どちらかが向きにくい。または、動かせる範囲が狭い
□首を後ろに反らすと、痛みや違和感がある
□肩や首がこりやすい
□疲れると頭痛やめまい、吐き気をもよおすことがある
□猫背になっている
□1日30分以上歩いていない
スマホを見る時にやりがちなダメな姿勢
猫背で肩が内側に入り、頭が前方に出ている。スマホの画面を見る視線が下にいきすぎ、猫背気味に。猫背になると骨盤は後ろに倒れ、お腹に力が入らない。
うつぶせになりながらスマホ画面を見ていると、腕で上体を支えることになり、肩が上がって腰は反りがちに。肩こりや腰痛の原因になってしまう。