健康・医療

《医師・薬剤師32人に徹底取材》「のまない薬」と「これならのむ薬」をランキング、「のまない」断然トップは「総合感冒薬」

医師・薬剤師が絶対のまない薬がある(写真/PIXTA)
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かぜ薬に、頭痛薬、胃腸薬、目薬となんでもそろう市販薬。ほかにも医師から処方される抗生剤など、われわれの生活になくてはならない薬。体が“毒に侵される”といわれてものまずにいられないのが実情だろう。では、専門家たちが「これならいい」と服用するもの、そして「絶対に避けるもの」は何か──。

新型コロナの感染者数が全国的に増えている。夏は外との温度差や食欲不振で免疫力が下がりやすくなり、さまざまなウイルスも活性化するので、「夏かぜ」には注意が必要だ。

都内在住の会社員・Aさん(54才)はつい先日、のどが痛くて鼻水が出るので夏かぜだと思い、ドラッグストアでかぜ薬を買ったという。

「クリニックを受診するのも面倒ですし、いつも市販薬ですませてしまいます。市販薬なんてどれも同じだと思っているので、メーカーや種類は決めていません。目についた安いものを買う感じですね」

Aさんのように、市販薬に頼る人は少なくないだろう。しかし、中山クリニック院長の中山潤一さんは、安易に市販薬を使うべきではないと話す。

「処方薬と違って副作用がないと思っている人が多いですが、副作用のリスクは市販薬にもあり、処方薬と同じ成分・用量のものも販売されています。実際に市販薬をのんで肝臓が悪くなり、全身に発疹が出た患者さんを診察したことがあります」

医師の診察がなく自由に買える市販薬は見極めが大事だ。そこで医師と薬剤師32人に市販薬を中心に、「絶対のまない薬」と「これならのむ薬」を聞いた。

以下、32名の医師・薬剤師に「使いたくない薬」を5つあげてもらい、最も使いたくないものから順に5点、4点、3点、2点、1点として集計し、5点以上を掲載した。「のむ薬」はその人数を集計し、3人以上がのんでいる薬を掲載した。 秋津壽男さん(秋津医院院長)、石黒成治さん(消化器外科医)、一石英一郎さん(国際医療福祉大学病院教授)、井上登太さん(みえ呼吸嚥下リハビリクリニック院長)、内野勝行さん(金町駅前脳神経内科院長)、江部康二さん(高雄病院理事長)、大西睦子さん(内科医)、岡田正彦さん(新潟大学名誉教授)、尾崎章彦さん(乳腺外科医)、加藤祐司さん(札幌かとう眼科院長)、上昌広さん(内科医/医療ガバナンス研究所理事長)、佐々木欧さん(内科医/秋葉原駅クリニック)、嶋田裕記さん(脳神経外科医)、高橋徳さん(クリニック徳院長)、谷口恭さん(谷口医院院長)、谷本哲也さん(ナビタスクリニック川崎院長)、徳田安春さん(総合診療医)、戸田佳孝さん(戸田整形外科リウマチ科クリニック院長)、東丸貴信さん(東邦大学名誉教授)、長澤育弘さん(銀座薬局代表)、中村光伸さん(整形外科医/光伸メディカルクリニック院長)、中村幸嗣さん(血液内科医)、中山潤一さん(中山クリニック院長)、南淵明宏さん(心臓外科医/昭和大学横浜市北部病院)、日比野佐和子さん(医療法人社団康梓会SAWAKO CLINIC xYS統括院長)、平松類さん(二本松眼科病院副院長)、舛森悠さん(函館稜北病院総合診療科)、松田史彦さん(松田医院和漢堂院長)、松村圭子さん(成城松村クリニック池袋院院長)、三上彰貴子さん(薬剤師)、山本佳奈さん(内科医/医療ガバナンス研究所)、渡辺尚彦さん(日本歯科大学内科学客員教授)

かぜ薬で動悸や不眠などの副作用

今回、「のまない薬」として断トツだったのは、「総合感冒薬」だ。中山さんも1位にあげた。

「ほとんどのかぜはウイルス性なので、薬はいりません。ご飯を食べて休息をしっかりとれば自然に治ります。そもそも具合が悪くなったとき、原因が不明なのに対症療法として薬をのむのはよくありません。

例えば咳が出ていても、ぜんそくか肺炎かで対応は異なる。何も考えず咳止めをのめば、悪化することもあります」

医師が絶対のまない薬のランキング
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同じく1位にあげた内科医の山本佳奈さんは、総合感冒薬に何種類もの成分が入っていることを懸念する。

「“諸症状”に効くとして、抗ヒスタミン薬・解熱鎮痛薬・鎮咳薬など複数の成分が配合されているので、不要な薬剤まで体に入れてしまう。中でもエフェドリン塩酸塩含有のかぜ薬は交感神経が刺激されるので、動悸や血圧上昇、不眠などの副作用が起きやすい」

高齢になると不眠に悩む人は増えるが、3位の「睡眠改善薬」も多くの票を集めた。札幌かとう眼科院長の加藤祐司さんが指摘する。

「眠気を誘う成分が含まれているので翌朝までぼんやりすることがあり、診療や手術の集中力低下につながるので服用しません。眠れないときは生活リズムの調整を第一に考えます」

利用する女性も多いであろう「便秘薬全般」は5位にランクイン。光伸メディカルクリニック院長で整形外科医の中村光伸さんは、薬に頼らず根本的に便秘を解消することが大切だと話す。

「便秘薬は安易にのむべきではありません。便秘の原因は、食物繊維の不足であることがほとんどです」

なかでも単独で6位になった「刺激性の便秘薬」の危険性を指摘するのは、銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘さんだ。

「ビサコジルやセンノシドA・Bカルシウム塩などが配合された便秘薬は、常用すると腸が刺激に慣れてしまい、薬なしで排便できない『下剤依存』に陥ることがあります」

加齢とともに増える関節の痛みも、安易に薬をのんではいけない。戸田整形外科リウマチ科クリニック院長の戸田佳孝さんが言う。

「コンドロイチン硫酸エステルナトリウムやグルコサミンなどの軟骨成分を含む痛み止めがありますが、それぞれ高分子なので胃や腸で消化されてアミノ酸などの低分子に分解されます。成分がそのまま軟骨に到達することはないので、ほとんど意味がありません」

薬ではないが、サプリメントをあげた専門家も少なくなかった。乳腺外科医の尾崎章彦さんが指摘する。

「昨年、『紅麹(べにこうじ)』サプリで健康被害が出ましたが、サプリは薬と製造工程・ルールが異なる。安全性や有効性が不明瞭なので、思わぬ副作用が出るリスクがあります」

市販薬は便利だが短期間の使用にとどめる

ロキソプロフェンなど「NSAIDs(エヌセイズ)の解熱鎮痛薬」が「のまない薬」の2位にランクインした一方で、「のむ薬」としてNSAIDsではない「アセトアミノフェンを主成分とする解熱鎮痛薬」と答えた医師は12人と多かった。

函館稜北病院総合診療科の舛森悠さんは、アセトアミノフェンは比較的安全性が高い薬だと話す。

「副作用も穏やかで、基本的に子供や高齢者も服用できる。総合感冒薬のように複数の成分が入っていないので、発熱や痛みがあるときに適しています」

医師が“これなら”のむ薬一覧
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「整腸剤」をのむという回答は3件あった。薬剤師の三上彰貴子さんもそのひとり。

「腸活のひとつとして、ビフィズス菌や乳酸菌、酪酸菌などが配合された整腸剤をのんでいます。ヨーグルトや納豆もいいのですが、忙しくて時間がないときに便利です」

漢方薬をのむという声も目立った。消化器外科医の石黒成治さんが言う。

「かぜをひいたときは、葛根湯や麻黄湯(まおうとう)など漢方薬をのみます。症状を抑え込むだけでなく、体が本来持つ自然治癒力を高めることで回復を早めてくれます」

ただし漢方薬だからといって安全とは限らない。

「副作用があるので漫然と服用するのは避けてください。芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)などは肝臓に負担がかかりやすく、血液中のカリウム濃度が低下することもある。ひどい場合は手足がしびれ、動かなくなります」(中山さん)

注意が必要とはいえ、必要なときに手に入りやすい市販薬だからこそ、賢く利用したいもの。長澤さんは症状に応じてシンプルな成分の薬を選んでほしいとアドバイスする。

「熱が出ているなら解熱鎮痛成分のみの薬を選ぶなど、余分な成分が入っていないものを選ぶのが基本です。複数の症状が出ているときは、いちばんつらい症状に的を絞るといいでしょう。

不安があれば薬剤師に相談してください。“喉がイガイガして咳が出る”“熱は37.5℃で関節が痛む”など、具体的に症状を伝えるのがポイントです。服用中の薬やサプリ、アレルギー、妊娠・授乳の有無は重要な情報なので、正確に答えましょう」

ナビタスクリニック川崎院長で内科医の谷本哲也さんは、薬の成分表示を必ず確認してほしいと話す。

「複数の薬を併用していると有効成分が重複するリスクがありますし、アレルギー体質の人は保存料などの添加物に反応することがある。使用期限が切れていることがあるので、常備薬は定期的な確認も忘れずに行ってください。市販薬は便利ですが短期間の使用にとどめ、症状が長引くなら病院を受診してください」

専門家たちの意見を参考に、薬を“心強い味方”につけよう。

医師が絶対のまない薬のランキング7〜16位
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医師が絶対のまない薬のランキング16〜23位
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※女性セブン2025年8月21・28日号