健康・医療

野菜、ヨーグルト、お酢…体によい食べ物も「食べ方」によってはデメリットも 漢方専門家が解説

健康のために生野菜をとることは多いが…(Ph/イメージマート)
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「体によい食べ物」と聞けば、誰もがつい試したくなるもの。しかし、著書『予約の取れない漢方家が教える 病気にならない食う寝る養生』(学研プラス)が話題の漢方コンサルタント・櫻井大典さんは、「流行りの食べ物・食べ方にはデメリットが潜んでいる可能性があります」と指摘します。SNSの合計フォロワー数が17万人を超える人気漢方家の櫻井さんに話を聞きました。

生野菜より「おひたし」がおすすめ

「私の考える健康の要は、“その人に合った食事と睡眠”です。相談者のかたには、大幅な生活改善よりも、その人ができることを増やして、今の生活習慣によって起こった不調をひとつでも減らしていく提案を心がけています。漢方家だからといって、全員に漢方薬をすすめるわけでもありません。

健康でいられるように体を大切にすること=養生は、“ゆるく、長く”続けられることが重要。食事と睡眠をちょっと変えるだけで不調改善につながる方法は、実はたくさんあります。それらをまとめて“食う寝る養生”と呼んでいます」(櫻井さん・以下同)

櫻井さんによると、「体によい」とされる食べ物でも、食べ方によっては注意が必要な場合があるといいます。

「食物繊維やビタミン不足を補うために、生野菜を意識して食べているかたは多いと思います。でも、野菜をたくさん摂るのが目的なら、私は生野菜サラダより『おひたし』を断然おすすめします」

そもそも野菜には、健康に欠かせないビタミンなど豊富な栄養素が含まれているはず。どういうことでしょうか?

生野菜は胃腸を冷やす

「生野菜をおすすめしない一番の理由は、“胃腸を冷やしてしまう”からです。体のほぼ中心部にある胃腸は、体内でも特に温かい場所。冷えると消化不良を起こしやすくなります。一方、おひたしは加熱されているので、胃腸を極端に冷やすことはありません」

櫻井さんによると、毎食のように生野菜サラダを食すことは、胃腸を冷やし続ける可能性が高いといいます。

「おひたし」で野菜の栄養を(Ph/イメージマート)
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おひたしのメリット

おひたしの利点は体を冷やしにくいことだけではありません。

「おひたしにすることで、“量をたくさん食べられる”、“消化がしやすいので栄養も吸収しやすい”といったメリットがあります。

加熱すると栄養が壊れると心配されるかたもいますが、壊れてもゼロにはなりませんし、加熱したほうが、かさが減って量をたくさん食べられるので、栄養の量の問題はカバーできます。加熱すれば細胞壁がやわらかくなって栄養素を吸収しやすくなり、消化もスムーズになります」

調理方法は、さっと茹でるだけ、レンジでチンするだけでOK。かつお節やしょうゆなどの調味料をかければおいしくいただけます。

「ヨーグルトで腸活」の落とし穴

櫻井さんは、腸の健康によいとされる「ヨーグルト」にも食べ方に注意が必要と指摘します。

「ヨーグルトは便秘解消、美肌づくり、免疫力アップに効果的とされています。しかし、必ずしも全員がヨーグルトを食べて健康になるわけではありません。体質に合わない人もいるのです」

ヨーグルト摂取の注意点とは(Ph/photoAC)
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朝のヨーグルトに注意

「ヨーグルトはたいてい冷たい状態で食べるので、胃腸を冷やしてしまう点に注意が必要です。また、“毎朝必ず食べる”ことを習慣にしている人が多いのも気になります。一般的に冷たいものは胃腸の負担になりやすく、中医学的には、食べ続けていると体の中に不要物が溜まりやすくなるとされます」

櫻井さんによると、食べ物が自分の体調や体質に合っているかを見極めるポイントは、「舌」だそうです。

「ヨーグルトで言えば、鏡で舌を見て、全体にベッタリと白い苔(こけ)がついていたら、その人の体に合っていない可能性があります。逆に合うのは、舌が真っ赤で苔がない、潤い不足の人です」

「お酢」を胃腸の味方にする方法

「理由は見当たらないのに、胃の不調を訴える相談者さんがいました。『食前にお酢を毎日湯呑みに半分くらい飲んでいる』とおっしゃるので、早速飲むのをやめてもらうと、胃腸の調子がよくなったことがありました。お酢は摂り方次第で、胃腸の敵にも味方にもなります」

お酢には、血流を促す、体内の老廃物や毒素を取り除くなどのよい働きがあり、体を温める作用もあるといいます。なぜ、相談者は胃腸の具合が悪くなったのでしょうか。

調味料として摂ればお酢を味方にできる(Ph/photoAC)
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調味料として使う

「お酢のメインの成分は酢酸という“酸”なので、空腹時に薄めずにそのまま飲んだり、毎食前に摂っていたりすると、胃腸には刺激が強すぎたのです。健康のためにお酢を摂るなら、そのまま飲むのではなく、酢の物や甘酢煮などのように、調味料として使うほうが胃腸にもやさしいです」

◆教えてくれたのは:漢方コンサルタント・櫻井大典さん

漢方コンサルタント・櫻井大典さん
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漢方コンサルタント。国際中医専門員。日本中医薬研究会会員。漢方薬局の三代目として生まれ育つ。カリフォルニア州立大学で心理学や代替医療を学び、帰国後はイスクラ中医薬研修塾で中医学を学ぶ。中国の首都医科大学附属北京中医医院などでの研修を修了し、国際中医専門員A級資格を取得。これまで年間数千件の健康相談を受け、延べ4万件以上の悩みに応えてきた。今年7月、病気にならないための食事と睡眠の新常識をまとめた『予約の取れない漢方家が教える 病気にならない食う寝る養生』を出版。https://yurukampo.jp/

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