マネー

家計再生のプロが語る「月3000円投資生活」のススメ 黄金ルールは「長期・分散・積立」

3000円
投資のプロが月々3000円からの投資をすすめる理由とは?(Ph/photoAC)
写真7枚

2024年1月から始まる「新NISA」を機に、投資を始めてみようと考えている人も多いのではないでしょうか。投資未経験者に投資のプロがすすめる金額は、「月々3000円」その理由について『はじめての人のための3000円投資生活 新NISA対応版』(アスコム)の著者で、家計再生コンサルタントの横山光昭さんに教えてもらいました。

* * *

初めての投資は3000円からのスタートがおすすめ

横山さんはさまざまな世代の人に月々3000円から投資を始めることをすすめています。その理由は、「初めて投資をするかたが、おそらく、あまり怖さを感じずに投資にまわせる金額」であり、かつ「投資の面白さがギリギリ体感できる金額」だからなのだそう。

「月々1万円だと、ちょっと額が大きすぎて怖いと思う人、いきなりそれだけの額を投資にまわすのが難しいという人もいるでしょう。かといって、月々1000円だと、特に最初のうちは、あまりにも得られる利益が少なすぎて、『お金が増えていく』投資の面白さを味わうことができません」(横山さん・以下同)

「3000円投資生活」は忙しい人や慎重な人にぴったり

3000円投資生活は、忙しくて投資に時間をかけることができないと感じている人や、慎重な性格のためこれまで投資をしてこなかった人にこそぴったりだと横山さんは言います。月々3000円の積立購入の設定さえしてしまえば、あとは放っておけばよく、冒険をせずコツコツと積立を続けられる人向けの投資方法だそうです。

「むしろ、『冒険が好きな人』こそ、注意が必要です。3000円投資生活の地道な方法に物足りなさを感じ、一攫千金を狙ってハイリスク・ハイリターンな商品に手を出し、損をするおそれがあるからです」

慣れてきたら投資金額を増やしてOK

投資未経験者や忙しい人にぴったりな3000円投資生活ですが、「3000円」という金額はずっと続けるものではなく、投資に慣れてきたら投資金額を増やすことを横山さんはすすめています。

たくさんの1万円札
投資のやり方がわかってきたら、徐々に金額を増やしていくのが◎(Ph/photoAC)
写真7枚

「投資のやり方がわかり、面白さを感じられたかた、ある程度貯金ができたかた、投資によってお金が着実に増えていくと実感できたかたは、ぜひ、毎月の投資金額を増やしていってください。当然のことながら、投資にまわすお金が増えれば増えるほど、あとで手にするお金が大きくなる可能性があります」

少額でも積立を続けることで複利の恩恵が得られる

3000円投資生活は、最初は微々たる利益しか出ないものの、「複利効果」によって、時間がたてばたつほど投資の効果は大きくあらわれると横山さんは言います。

「投資の世界で『利率』に相当するのが、『利回り』です。これは投資したお金(元本)に対し、毎年どれほどの利益が得られるかを示すものであり、やはり元本が大きくなれば、得られる利益も大きくなります。そして『複利』とは、投資によって得た利益を再投資し(元本に組み入れ)、元本を少しずつ大きくすることによって得られる、より大きな利益のことを指します」

3万円
月々3万円ずつ投資した場合のイメージを試算(Ph/photoAC)
写真7枚

月々3万円ずつ、年利6%で運用できた場合、1年後の利益は約1万円、3年後の利益は約10万円と、最初の数年の利益は微々たるもの。しかし、継続すれば、10年後の利益は約131万円、20年後の利益は約666万円、30年の利益は約1933万円に。

「時間が経てば経つほど、複利効果で利益はどんどん大きくなり、40年後には投資額の3倍にあたる、約4534万円もの利益が得られます。ですから、最初のうち、あまり利益が出ないからといって、どうか投資をあきらめないでください」

投資の黄金ルールは「長期・分散・積立」 長期投資で複利の恩恵を

投資で大切なことは複利効果の恩恵を受けることだけではなく、「長期・分散・積立」という投資の基本を守ることだと横山さんはいいます。まず、「長期」とは、短い時間で大きなお金を得ようとするのではなく、長い時間をかけて、将来のための資産を育てること。

「長期的な視点をもって投資に臨むと、

・一時的な経済環境の悪化や市場の暴落などに振り回されることがなくなる
・複利の効果で、資産がどんどん増える

といったメリットがあります」

分散投資でリスクも分散

黄金ルール2つ目の「分散」とは、複数の国や地域、業種の会社に投資をする、値動きの異なるものを組み込む、商品を数回に分けて買うなど、投資対象や投資タイミングを分散させること。横山さんによれば、投資におけるリスクを減らすもっとも効果的な方法が「分散投資をすること」だそうです。

札束と円グラフ
分散投資はリスクを減らす最も効果的な方法(Ph/photoAC)
写真7枚

「たとえば、みなさんが4万円の資金を持っていて、それをすべてA社の株式だけに注ぎ込んだとすると、A社の株価が暴落したり、A社が倒産したりしたとき、たちまち損をしてしまいます。しかし、4万円でA社、B社、C社、D社の株式を買う、といった具合にすれば、『A社の株価の値下がり分を、C社の株式の値上がり分で相殺し、資産全体の値下がりをおさえる』といったことが可能となるのです」

積立で高値づかみのダメージを最小限に

黄金ルール3つ目の「積立」とは、商品を一度にたくさん買うのではなく、毎月決まった日に、決まった金額分ずつ買っていくこと。投資信託は、購入する時の価格である基準価額が日々上がったり下がったりしていますが、積立であれば、基準価額が高いときも低いときも、機械的に一定の金額分ずつ買い続けることになります。

「基準価額が低いときにはたくさん買うことになる一方で、高いときには少ししか買えず、高値づかみによるダメージがおさえられるため、長い目で見ると、結果的に購入単価が平均化されていくのです」

棒グラフと電卓
積立なら、高値づかみのダメージも少ない(Ph/photoAC)
写真7枚

投資金額を増やすタイミングの目安は貯金の額

横山さんは、「投資に慣れてきた」と感じたタイミングで投資にまわす額を増やすことをすすめていますが、投資金額を増やすもう一つの目安となるのが、月収の7.5か月分の貯金があるかどうかなのだそう。

月収7.5か月分の理由

貯金というのは「目の前のピンチを切り抜けるためのお金」なのだそうです。そして、7.5か月分の内訳は、「使うための貯金=月収1.5か月分」と「おろさない貯金=月収6か月分」だと横山さんは言います。

年間のカレンダーと手帳とペン
月収の7.5か月分の貯金があるかどうかが投資金額を増やす目安(Ph/photoAC)
写真7枚

「使うための貯金というのは、生活費が足りなくなったときや、ちょっとした予定外の出費などに対応できるようにするためのお金であり、おろさない貯金というのは、病気やけが、突然の退職などにより、万が一収入が途絶えても、当面生活できるようにするための『生活防衛資金』です」

十分な貯金を用意することが投資の成功率を上げる

十分な貯金がないと、「お金が必要になったから」と、せっかく購入した投資信託を、価格が下落したときに手放してしまうことになりかねません。十分な貯金があれば、いざという時にも対応できるうえ、投資にも腰を据えて臨むことができます。

「『現在、貯金がほとんどない』というかたは、月々3000円ずつの投資を始めつつ、少なくとも月収7.5か月分の貯金を目指し、そのうえで収入やリスク許容度に応じて投資の額を引き上げることを考えるようにしてください」

◆教えてくれたのは:家計再生コンサルタント・横山光昭さん

スーツを着た男性
家計再生コンサルタントの横山光昭さん
写真7枚

よこやま・みつあき。株式会社マイエフピー代表取締役。司法書士事務所勤務後、家計の「負債重視型」コンサルタントとして借金・ローン問題に取り組み、リバウンドの少ない再生を実現。借金家計の改善とともに、マイナス家計がゆとりある家計に変化するよう、低所得者や借金に悩む方でも貯蓄に向かっていけるサポートに注力。著書に『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『はじめての人のための3000円投資生活 新NISA対応版』(アスコム)など。https://ameblo.jp/myfpyokoyama/

構成/新藤まつり

●「貯める力」をつけるカギは「消費・浪費・投資」の把握 家計再生コンサルタントが解説

●50代以降が「投資」を行うときに知っておきたい5つの鉄則とは?