
「更年期には、足のニオイが強くなる原因が潜んでいます」と薬剤師の藤田佑莉さんは話します。そこで、加齢と共に足のニオイが気になってきたという人は、その原因やニオイを発生させないためのケア、足のニオイ対策に役立つ栄養素や漢方薬について知り、実践してみましょう。
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足が臭くなる原因
足が臭くなる原因として、足のニオイの代表物質であり、チーズや納豆のようなニオイが特徴の「イソ吉草酸(いそきっそうさん)」と、鼻にツンとくる刺激臭が特徴の「アンモニア」が挙げられます。
更年期世代は卵巣機能の低下によって女性ホルモンや自律神経が乱れやすく、このイソ吉草酸とアンモニアが発生しやすい条件がそろっているのです。

汗や皮脂を分解するときに発生するイソ吉草酸
イソ吉草酸は、皮膚の常在菌が汗や皮脂を分解するときに発生するため、自律神経の乱れによって発汗量が増えると、それが格好のエサとなりイソ吉草酸を発生させやすくします。
下半身のむくみとアンモニアの関係
アンモニアは、筋肉を動かすときに筋肉内で発生しますが、体にとって毒素のため、通常は肝臓で代謝されて無毒な尿素となって尿中に排泄されます。ところが、自律神経の乱れによって血液循環が滞ると下半身がむくみやすくなって、足にアンモニアがたまり、足裏から皮膚ガスとしてアンモニア臭が発生することがあるのです。
また、疲労やストレスは肝機能に影響し、アンモニアを尿素に変換する機能を低下させます。このような場合も、足を含めた全身から皮膚ガスとしてアンモニアが排出されるため、要注意です。

ニオイを発生させないコツ
足のニオイを軽減するには、足を清潔に保つためのケアと通気性のよい靴下や靴を選ぶことが大切です。
適切な足まわりのお手入れ
足を清潔に保ち、菌の増殖を防ぐことがニオイの軽減につながります。そのために行いたいお手入れとそのコツを3つ紹介します。
・爪のケア
足の爪が長すぎると爪と皮膚の間に汗や垢がたまり、それをエサにして細菌が増殖し、ニオイを発生しやすくします。足の爪は、白い部分が1mm程度出る長さにカットしましょう。
・角質のケア
角質は汗をかくとふやけて、垢として皮膚から剥がれ落ちます。これを皮膚常在菌が分解することで、イソ吉草酸などのニオイの原因となるのです。入浴時に角質リムーバーやブラシを使って、皮膚表面の古くなった角質を定期的に取り除きましょう。
ただし、角質は皮膚を外部からの刺激から守ったり、皮膚の水分が蒸発し過ぎないように保護したりする働きがあるため、週に1〜2回程度を目安に行い、頻繁な角質ケアは控えましょう。

・足の洗浄とデオドラントグッズの活用
入浴時には丁寧に足を洗い、ニオイの原因となる垢や汗、細菌を洗い流しましょう。足指専用ブラシなどを使って指の間もきれいに洗ってください。
入浴後や外出前には、イソ吉草酸などの悪臭物質の消臭効果が期待できる「金属イオン」を含むクリームを足に塗るのも有効です。具体的には、アルミニウムイオンや鉄イオンで構成されたミョウバンや、銀イオンを含有するデオドラントクリームを選ぶといいでしょう。
靴下と靴の選び方
靴下は、指同士の密着を避け、汗蒸れを防ぐ「5本指ソックス」がおすすめです。生地は、吸湿・速乾性に優れる綿や、通気性に優れるメッシュ素材のものを選ぶと◎。なお、ポリエステルやアクリルなどの化学繊維は、汗を吸収しにくく蒸れやすいため、ニオイ対策の観点ではあまりおすすめできません。

靴も、靴下同様に通気性のいいものを選びましょう。メッシュや通気孔のあるデザインは湿気を放散し、汗蒸れを緩和する効果があります。消臭・抗菌効果のある中敷きをプラスすれば、防臭効果のアップが期待できます。
また、サイズがきつい靴は指同士が密着して汗が放散されにくく、ニオイを発生させる原因となるため、適切なサイズの靴を選んでください。
ニオイを撃退する食材
足のニオイの原因のひとつであるアンモニアは、通常であれば尿中に排出されますが、足に毒素がたまってむくんだり、疲労やストレスで肝機能が低下したりすると皮膚からアンモニアが排出されます。そのため、血行を促進してむくみを改善したり、疲労回復やストレスを軽減させて肝臓にダメージを与えないようにしたりする効果がある食材を積極的に摂取しましょう。
それには、血行促進や疲労回復効果のある「クエン酸」が含まれている「レモン」をとり入れてみるのはいかがでしょうか。

クエン酸には、代謝をスムーズにして血行を促進する効果があったり、摂取した栄養をエネルギーに作りかえる「クエン酸回路」と呼ばれる作用によって、疲労の原因物質である「乳酸」を分解し、体の疲労を回復させたりします。
また、レモンには抗酸化作用のある「ビタミンC」も豊富に含まれており、活性酸素を除去しダメージから細胞を守るため、疲労を回復してくれるでしょう。
ビタミンCは水溶性のため、スライスしたレモンをそのまま水分補給用の水に入れて「レモン水」にしたり、豚冷しゃぶにレモンを絞ったりして食べるのが効果的です。豚肉には「ビタミンB群」が豊富に含まれており、クエン酸の働きをサポートする作用があるため、効率的な疲労回復には相性のいい組み合わせです。

さらに、レモンの香りによって爽快感がもたらされ、快気分が向上したという研究結果もあるため、ストレスを軽減させる効果も期待できます。
足のニオイ対策に有効な漢方薬
足のニオイが気になる人には、漢方薬の活用も有効です。自然の生薬を含む漢方薬は副作用が少ないことや、のむだけという手軽さが魅力です。
「更年期の自律神経の乱れによる発汗量の増加」も足のニオイの原因のひとつに挙げられるため、更年期の足のニオイの悩みには「自律神経を整えて発汗量を正常にする」作用のある漢方薬を選びます。

足のニオイ対策におすすめの漢方薬
・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
イライラや不安を感じやすい人に用いる漢方薬です。「気」(エネルギー)の巡りをよくして気持ちを落ち着かせることで自律神経を整え、発汗機能を回復させる効果が期待できます。
・四逆散(しぎゃくさん)
手のひらや足裏の汗が多い人に用いることがある漢方薬です。自律神経を整えることで興奮状態をやわらげ、異常な発汗やストレスを緩和する効果が期待できます。
漢方薬を始める際の注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、いい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:薬剤師・藤田佑莉さん

ふじた・ゆうり。薬剤師。北里大学卒業後、産婦人科門前の調剤薬局で働く中で女性特有の不調に悩んでいる方が多いと実感したことから、漢方薬による根本治療の大切さを広めたいと考え「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)で薬剤師としてサポートを行う。