健康・医療

糖質制限ダイエットで米離れ加速も。海外でおにぎり人気の理由

日本人が米好きであることは間違いないが、実際は食の欧米化が進み、米の年間消費量は低下している。農林水産省が2017年7月に発表した「食料需給表」によれば、米の消費は1962年の118kgをピークに年々減少し、1人当たりの消費量はこの50年間で半分以下の54.6kgになっている。

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糖質制限ブームが米離れに拍車をかけた(写真/アフロ)
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さらに「米離れ」に拍車をかけているのが昨今大ブームになっている糖質制限ダイエットである。

糖質制限ダイエットで「米=悪」に

炭水化物、とりわけ米を抜くというこのダイエット法は、2010年に発売された『炭水化物が人類を滅ぼす』(光文社刊)、『主食をやめると健康になる』(ダイヤモンド社刊)といった糖質制限に関する書籍の大ヒットをきっかけに世に広がり、今や「米=悪」という印象さえ一部では持たれている。

また米の消費量が下がっている一因に、炊飯するのが面倒だという意見もある。

「1人暮らしをしていると、お米とぎが面倒くさい。無洗米は信用できないですし、何より、1人で1合なんて食べられない。1度に2合炊いて小分けにして冷凍しますが、いつまでたっても冷凍庫に残っている」(30代・女性)

実際に炊飯器の売り上げも減少傾向だ。

さらに「親以外の他人が握ったおにぎりが食べられない」という人も増えている。

女性では「食べられる」派が62.5%、「食べられない」派が37.5%(2016年、マイナビウーマン調べ)。「食べられる」とした人の中でも、微妙だと答えた人もいた。

一般社団法人おにぎり協会代表の中村祐介さんは、この傾向はコンビニのおにぎりの影響が強いと分析している。

「現代人にとって、おにぎりは作るものではなく、買うもの。1970年代以降に生まれた子供たちは、握ったおにぎりを与えられるのではなく、五百円玉を渡されコンビニで買いなさいと言われて育ってきました。だからおにぎりを握るというイメージがないんです。本来は親から子へのコミュニケーションツールでもあったのですが…」

しかし、日本の米文化を巡っては、明るい兆しもある。2015年に糖質制限ダイエットの実践者に死者が出たこともあって、厚労省がその危険性を警告した。糖質制限によりたんぱく質や脂質の摂取量が増え、動脈硬化や脳卒中のリスクが高まる点が指摘され、日本糖尿病学会も「勧められない」という声明を発表。リスクを考えなければいけないと再認識する人が増加した。

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海外に広がっているおにぎりブーム(写真/アフロ)
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さらに米の消費量が減る中、家庭以外で調理された食品である「中食」としての米の消費は増え、コンビニのおにぎりの販売数も増加している。

「2011年から下がり続けてきた米の中食消費量が増えてきました。2013年に和食文化が世界遺産に認定されたのも大きい。お米が見直されつつあるのだと思います」(中村さん)

2016年には漫画『クッキングパパ』(講談社刊)の著者、うえやまとちさんが考案した、握らないおにぎり『おにぎらず』が大ブームに。見た目も華やかで手を汚さずに食べられるとあって、低学年の子を持つママの間で爆発的な人気を呼んだ。

今年は家庭料理研究家の土井善晴さんが提唱している「一汁一菜」が、毎日の献立に悩む多くの主婦に受け入れられている。その中心になるのはご飯だ。

また海外にもおにぎりブームが広がっている。シンガポールとニューヨークに店を構えるおにぎり店「SAMURICE(サムライス)」の長山哲也さんが話す。

「日本人はもちろん、地元のかたもおにぎりを購入してくれます。ビジネス街での朝食やランチとして人気で、油っこい料理が多いなか、おにぎりは、ヘルシーな料理として認識されているようです。

ランチミーティングなどのビジネスシーンから、バーベキューパーティー、子供の誕生会などのプライベートシーンまで、デリバリーの注文も増えています」

今や和食ブームをけん引しているのは、高価な寿司ではなく、安価で手軽に食べられるおにぎりなのだ。

※女性セブン2017年9月7日号

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