
「たくさん寝ても疲れが取れない」「朝起きたときに体が痛い」ということはないだろうか? それは、寝返りが原因かもしれない。快眠のためには適切な寝返りを打つことが重要。すっきり目覚めるためにも、睡眠環境から見直そう。
寝返りは、眠りの質を高める
一生の約3分の1の時間を占めるといわれる睡眠。「睡眠時間を快適に過ごすために、寝返りを見直してほしい」と、快眠セラピストの三橋美穂さんは言う。
「寝返りには重要な役割が2つあります。1つ目は、体を動かして布団の中の温湿度をコントロールし、体温を調節すること。2つ目は血行やリンパの流れをよくし、疲れを取ることです。
無意識でありながら、自由に体を動かすことで体のゆがみが整えられ、体がほぐれる効果もあります」(三橋さん・以下同)

寝返りの回数には個人差があるが、一晩で平均20回前後が一般的な回数とされている。
「睡眠は、脳が休息状態にある『ノンレム睡眠』から始まって一気に深い眠りに入り、1時間ほど経つと徐々に浅くなり、脳が活発に活動する『レム睡眠』へと移行。その後、だいたい90分周期で一晩に3~5回、これを繰り返します。寝返りは、その切り替え時によく行われ、眠りの後半(明け方)に増える傾向にあります。寝返りを打つことで、眠りの質を高める効果があると考えられています」
ところが、加齢により寝返りの回数が減ってしまう人が多いという。
「加齢によって体の柔軟性が低下したり、筋力・体力が衰えることで、日中の動きと同様に、睡眠時の寝返りの回数も自然と減少してしまうんです。特に、50代以降は女性ホルモンが減るなど、更年期の影響もあって、睡眠の質がぐっと下がる傾向にあります。日頃から運動を習慣づけ、寝返りを打ちやすい環境を整えることが大切です」
マットレスやパジャマといった寝具選びも重要だ。
長年、医療介護用ベッドを手がけてきたパラマウントベッド睡眠研究所所長の木暮貴政さんが、寝具と寝返りの関係を説明する。
「2005年頃からマットレスによる寝返りのしやすさ・しにくさが、睡眠に与える影響に関する研究を報告してきました。その過程でマットレスの硬さや幅の広さが、寝返りの質に影響することがわかりました。柔らかすぎず、幅の広いものが、寝返りに適しているという結果も出ています」(木暮さん・以下同)
中途覚醒時間は80代から急上昇

50代以降は中途覚醒時間が増え始めるが、これも寝返りが影響しているという。
「中途覚醒の原因はストレスなどさまざまありますが、その1つにスムーズな寝返りができないことがあげられます。寝具や体の痛みなどが原因で、無理やり寝返りをしていると中途覚醒につながってしまうのです」
睡眠環境を整え、ストレッチや運動で体をほぐしつつ、20回前後のスムーズな寝返りを目指すことが快眠をもたらすのだ。
睡眠の質を高める最適な寝返りのコツ
寝返りが多すぎたり少なすぎる場合は、寝苦しい、寝具が合っていないなどの原因が考えられる。以下のポイントを押さえれば、適切な回数とスムーズな動きに導き、寝返りが打てるようになる。
【1】「寝床内気象」を適温に保つ
「就寝中の布団内の温度や湿度のことを『寝床内気象』といいます。“ぐっすりよく眠れている”と感じるときは、だいたい33℃くらいになっています。33℃と聞くと、室温であれば高く感じますが、体温でいえば人肌くらいの温かさです。深い眠りに入るためには深部体温という体の中心の体温を放熱することが必要ですが、寝床内気象が高すぎるとうまく下がりません。部屋の温度や寝具・着衣の保温性、それに暑がりか寒がりかなど個人の体質に合わせて寝床内気象を調節しましょう」(三橋さん・以下同)

【2】睡眠前に軽くストレッチ
「自然な寝返りを促すためには体を柔らかくして、動きやすくすることも必要です。睡眠前にストレッチをして肩や腰まわりをゆるめておけば、スムーズな寝返りにつながります。もちろん就寝前だけでなく、日頃から運動習慣があるとなおいいです」
肩から腕まわりを回す

両腕を曲げてひじを上げ、肩甲骨をまん中に寄せながら、後ろまわりに腕をゆっくり回す。10〜20回。
足を左右に倒す

【1】仰向けに寝て、両ひざを立てて足を軽くそろえる。
【2】両ひざを左右交互に、ゆっくり床につくように倒す。10~20回くらい行う。