
何の症状もなく、静かに進行する病──それが骨粗しょう症だ。つまずいただけで骨折し、そこで初めて自分の骨がスカスカの状態だったと判明するケースも少なくない。特に女性は閉経以降、そのリスクが急激に増す。健康寿命だけでなく見た目にも影響する“骨の健康”を守る方法を専門家に聞いた。
元気で長生きには骨の健康が不可欠

「国内の骨粗しょう症患者は年々増えており、約1300万人に。そのうち約8割は女性です」
とは、整形外科医の中村光伸さん(「」内、以下同)。
骨の強さの指標となる「骨量」のピークは、男女ともに20代で、その後徐々に減少。特に女性は閉経後、そのスピードが加速する。
「骨の生成バランスをコントロールしている女性ホルモンのエストロゲンが、閉経後に激減することが骨量を減らす大きな要因です」
高齢者にとって骨折は命取り。回復しないまま寝たきりになると、身体機能だけでなく認知機能も低下するからだ。健康寿命を延ばすには、骨の健康を維持することが最重要。そのためにすべきことを詳述する。

栄養はバランスよく塩分の摂りすぎに注意
骨には、古い骨を壊す「破骨細胞」と、新しい骨を作る「骨芽細胞」があり、それらが新陳代謝を促し、新しい骨を作り続けている。
「全身の骨は、約5年で入れ替わりますから、骨は何才になっても鍛えられます」(中村さん)
そのために大切なのは食事。骨の新陳代謝を促して強くするのに必要なのは、第一にカルシウムだ。牛乳ならコップ1杯(200ml)で約220mg摂れる。しかし、カルシウムには吸収されにくいという欠点も。
「カルシウムの吸収を助けるビタミンDを一緒に摂ると効果的です」と、管理栄養士の浜本千恵さん。ビタミンDはヨーグルトや魚類、きのこ類などに豊富に含まれる。
骨の石灰化を促すビタミンK2も必須で、これらをバランスよく摂ることが大切だ。ただし、塩分の摂りすぎには要注意。カルシウムの排出を促すからだ。そのほか、毎日摂るべき食材は表にして紹介している。参考にしてほしい。

やめるべきは酒、喫煙、ダイエット
骨の形成に不可欠なビタミンD。実は食品からの摂取よりも、日光(紫外線)を浴びることにより体内で生成されるビタミンD量の方が多いという。
「過剰な紫外線対策は、ビタミンD不足の原因に。顔は日焼け止めを塗っても構いませんが、手足などは15分程度、日光にあてるようにしましょう」(望月さん)
骨は物理的な刺激が加わることで強化されることもわかっている。かかとの骨に負荷が加わるジャンプや、ウオーキングなどの適度な運動、筋トレも骨の強化には効果的だ。
「骨への刺激は、骨芽細胞が合成するホルモン・オステオカルシンの分泌を促進します。このホルモンは、骨を丈夫にするだけでなく、免疫力の向上や脳細胞の活性化につながると注目されています」(中村さん)
逆に、骨のためにはやめるべき習慣もあるという。
「喫煙や過度な飲酒は骨密度低下の原因に。特にたばこは骨の形成を妨げてしまいます」(谷本さん)
※ランキングは10人の専門家に、おすすめの食品と習慣をあげてもらい、1位を10点、2位を9点、3位を8点、4位を7点、5位を6点、6位を5点、7位を4点、8位を3点、9位を2点、10位を1点として集計(同位に複数回答あり)。
◆教えてくれた専門家10人
金丸絵里加さん(管理栄養士)、佐野こころさん(医学博士)、清水加奈子さん(管理栄養士)、高林孝光さん(アスリートゴリラ鍼灸接骨院院長)、谷本哲也さん(ナビタスクリニック川崎院長)、戸田佳孝さん(貴晶会戸田リウマチ科クリニック院長)、中村光伸さん(光伸メディカルクリニック院長)、浜本千恵さん(管理栄養士)、松村圭子さん(成城松村クリニック院長)、望月理恵子さん(管理栄養士)
取材・文/植木淳子
※女性セブン2025年2月20・27日号