
母子支援施設に身を寄せていた
実際、高野容疑者は2024年1月、「知人に貸した金を返してもらえない。裁判で支払いを命じる判決が下ったが、相手が所在不明になってしまった」と栃木県警に電話で相談していた。彼の知人らからは「高野(容疑者)の生活は限界、ギリギリだった」という証言もあった。そんな高野容疑者の心境にさらに追い打ちをかけたと思われるのが、彼女がSNSなどで発信していた派手な私生活だ。
「最上さんはここ1~2年、ライバーとして人気を博していたので、リスナーからの投げ銭を中心に月100万円以上は稼いでいたとみられます。実際、最近の彼女はよくSNSや配信で、彼氏との旅行とか豪華なタワマンでの暮らしを公開していて、羽振りが良さそうでしたよ」(ITライター)
さらに、佐藤さんはシングルマザーで、2023年時点までは母子支援施設に身を寄せていたことも判明している。山形のキャバクラで働きながら、ボーイズクラブに通い、お気に入りのスタッフに高額なシャンパンを空けていたようで、当時の彼女について“子供を託児所に預けて奔放な夜遊びを繰り返していた〟〝子供を児童相談所に連れていかれたらしい”などのエピソードをメディアに証言する知人もいた。
こうした背景が次々と明るみに出てきたことで、ネット上では「好意を利用して踏みにじった被害女性にも非があるのでは?」、「殺人は許されないが、犯人にも同情の余地はあるのではないか」といった声が多くあがっているのが現状だ。

被害者側に落ち度があったとすると…
加害者と被害者の感情が複雑に絡み合う事件。裁判ではどういった判決がくだされるのか。元東京地検特捜部副部長で弁護士の若狭勝氏に見解を聞いた。
「高野容疑者は犯行後に『殺すつもりはなかった』と殺意を否認していますが、裁判では本人の主張だけではなく、“どういう刺し方をしたか”などの客観的な状況から殺意が判断されます。サバイバルナイフを持参して、執拗に被害者のことを刺したとなると、裁判では殺意や計画性が認定される可能性が高いでしょう。
“ナイフは脅しのつもりだったけど相手の反応に怒りを覚えて刺してしまった”、あるいは“いざとなったら傷つけてやろうと想定していたが殺すつもりはなかった”などと主張することも考えられますが、切りつけて傷害を負わせるくらいならともかく、あれだけの凶行に及ぶというのはあまりに飛躍しすぎている。いずれにせよ、殺意は認められる可能性が高い」
では、高野容疑者が最上さんから受けたとされる“仕打ち”は、量刑にどれほど関係するのか、情状酌量の余地はあるのだろうか。若狭氏が続ける。
「刺殺事件の内容だけを考えると、量刑的には懲役20年ぐらいだと思われます。それを前提として、被害者の最上さんは高野容疑者から250万円もの借金を重ね、裁判所から支払いの命令が出ていたにもかかわらず、なしのつぶてで、それが犯行を誘発したということで、被害者側の落ち度が認められる可能性もあります。
一般論でいえば、懲役20年くらいの量刑で、被害者側にそうした落ち度があったとすると、そこから1~2年くらいは軽くなるかなという感じはします。せいぜいこの程度。たしかに佐藤さんが高野容疑者に対して行ったことは民事的にインパクトがあります。ただ、それで人を白昼堂々、一瞬にして絶命させ、しかも相手は22歳の若い女性となると、大幅に減刑されて懲役5年とか、執行猶予がつくとか、そこまで軽い量刑になることはないでしょう」
つまり、高野容疑者の量刑は懲役18年〜19年ほどとみられるという。取り返しのつかない結末を迎える前に、トラブルを解決する手立てはなかったのか。なんともやるせない事件である。


