
「同じ店で何度も使用」でバレる
一方で、前出の元テレビマンが語ったように、メディア関係者は人脈作りや取材のため、外で人と会わなければ仕事につながらない。経費を巡るこの手の“問題”は、曖昧な部分もありそうだ。では、どのようにして経費の不正使用は発見されるのだろうか。国税局や税務署で法人税の調査・審理事務を担当した経験がある税理士の植木達也氏に話を聞いた。
「経費の不正使用がバレる端緒としては、『税務調査』が多い。マスコミ業界は取材や接待などで経費使用が多い職種ですから、定期的な税務調査では、調査官が従業員が会社に提出した領収書を確認することになります。その際、調査官が何百、何千人の従業員の領収書を全部見ることはできないので、領収書を並べてみて、金額が突出して高い、同じ店で何度も使用している、数字やゴム印がおかしいなど、“怪しい”と感じたところを抽出してピンポイントで事実確認を行う。それで問題が見つかれば、当然ほかにも同じようなケースがあるだろうということで、そのことを会社側に突きつけて、自主的に監査させるという流れが多いと思います。
私は国税局で税務調査を担当していた頃、上場企業を含めた大企業を対象とする調査部門に在籍したこともあるのですが、そのような流れから従業員の不正経理が発覚するということは珍しくありませんでした」
テレビ朝日の篠塚浩社長3月25日の定例記者会見で、当該社員の経費不正が5年間にわたり発覚しなかったことについて、「チェックはしたが、見つけられなかったということ。制作費監査チームに弁護士や公認会計士も入ってもらい、機能強化したい」「経費のチェック体制を強化し、再発防止策を速やかに実行して信頼回復に努める」と述べた。
「マスコミ業界は昔から“どんぶり勘定”というのが知れ渡っているので、税務調査で従業員がらみの不正経理問題を指摘されたことがある会社も多いと思います。そのような場合、会社が従業員の使用する経費についてどの程度のチェックを行っていたかがとても重要になります。チェック体制が甘ければ、会社ぐるみの責任だと認定されてしまう。従業員による横領で会社は被害者であるにも関わらず、会社自身の不正だと認定されてしまうわけです。会社にとってはダメージは大きいですし、最近はマスコミ業界でも経費を“どんぶり勘定”で認めるということはちょっと考えにくいですね。
各社は経費使用についてある程度のルール付けをして、チェックしているのではないでしょうか。ただ、マスコミ関係者の場合、“人と会うことが仕事”という側面もありますから、仕事に少しでも関係していれば、経費としての説明はつくと思います。家族との食事はさすがにアウトでしょうけどね。
(ナスDの場合)税務調査の流れで発覚したのかもしれませんが、彼の場合はパワハラの問題もあったようですから、会社側に狙い撃ちにされた可能性もありますね」(植木氏)
「逮捕される可能性は十分にある」
従業員は会社側に領収書を提出する際、経費の名目として「××社の○○氏と△△のための会食」などと記載するのが一般的だが、会社側が飲食店や○○氏に確認の連絡をして、不正使用が発覚するというケースもあるのか。
「実際あるのかもしれませんが、あまり聞いたことはありません。ただ、たとえば税務調査で一度経費の不正使用が発覚して、『今後はきちんとチェックします』と発表している会社は、会食の相手や打ち合わせの内容、会食の時間や場所などを領収書と一緒に申告させていると思います。それを会社側が時系列で管理することで、頻度や金額に異常な点があれば不審な点が浮かび上がってくるでしょう。そういう場合に会社側が必要に応じて、抜き打ちで相手先に連絡し、事実確認などを行うことはあるかもしれません」(植木氏)
経費を不正使用した従業員が会社側から告訴されたり、逮捕される可能性もあるのか。
「税理士はコメントする立場にありませんが、経費の不正使用は、刑法上の業務上横領罪に当たると思われますので、使い込んだ金額や悪質度によっては告訴されたり、逮捕される可能性は十分にあるでしょう。会社のお金を横領されたというのは、ひいては株主のお金を横領されたのと一緒なので、株主に対する説明もつかない。
不正使用した分のお金を全額返してもらえるのであれば、会社の中で降格などの処分で終わるケースもあるかもしれませんが、コンプライアンスが重視される近年の風潮だとそれもちょっと難しいのではないかと思います」(植木氏)
昔から「オン」と「オフ」の区別がつきにくいのがマスコミの仕事だったが、「正当」と「不正」の見極めはしっかりと行わなければいけない。

