
4月6日、東京・竹芝のJR東日本四季劇場[秋]で、劇団四季の海外新作ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』がついに開幕。初回販売分のチケットは即完売、さらに開演前に約1年半の延長公演が決定するなど、話題騒然ながらも詳細はヴェールに包まれていた本作だが、ついにその全貌が明らかに。かつてない演出の手法をふんだんに取り入れた前代未聞のミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(BTTF)をより楽しむための見どころを、どこよりも細かく、ネタバレギリギリでお伝えします!! 【前後編の前編】
開演前から80年代のビデオゲーム風メッセージで観客を盛り上げる
まず、会場に足を踏み入れたとたん、驚きの演出で出迎えてくれる。舞台は青と白の回路基板をイメージしたデザインに囲まれ、懐かしい1980年代のテレビゲーム風の文字がスクリーンに映し出されているのだ。
「上映中はスマートフォンの電源をお切りください。1985年にはまだ発明されていません」「ビフに文句を言われないように前の席は、けらないで」と、ウイットに富んだ注意喚起が表示され、上演前から舞台にくぎ付けに。“作品は劇場内に足を踏み入れた瞬間から始まっている”と言わんばかりにワクワクしてくる。

スピーカー、科学者の写真、時計…ドクの研究所に目を見張る
幕が上がってすぐ現れるのは、1985年のドク(野中万寿夫)の部屋。アンプが3段積まれて大きなスピーカーも設置されているが、おなじみのマーティが大音量でそれらをぶっ壊すシーンが繰り広げられる(冒頭写真参照。マーティのぶっ飛び方は美しすぎ!)。
後に1955年のドクの部屋も登場するが、2つの時代の違いを深く印象づけているのが舞台装置だ。客席からはっきり見えないかもしれない小道具にも、細部まで趣向を凝らしていることには驚かされる。
例えばドクの研究室には、200以上もの小道具が飾られていて、時計は20個も。そのほか、アインシュタインをはじめとする、彼が敬愛する科学者の肖像画が並べられているあたりは、タイムトラベル研究に生涯の情熱をそそぐドクらしさが表現されている。
1955年と1985年のドクの部屋を見比べて、30年間でどう変わったかも注目すべきポイントの一つといえる。


ドクがタイムトラベルのマシンを発明するための計算式が書かれた黒板も、一から手作りされている。文字は、プロジェクターで黒板に投影し、その上からチョークでなぞる方法で書くという手の凝りよう。

時計台には時代を感じさせる落書きまで
物語の鍵となる裁判所の時計台も、ピカピカの1955年バージョンと、マーティが住む1985年バージョンの2つが登場。落雷により針が止まったまま老朽化した1985年の時計台は、文字盤が焼け焦げている。しかも、落書きまで再現されるという細かい演出が。


デロリアンのタイムトラベルシーンは未体験ゾーン!!
舞台化されるにあたって、どんな演出になるのかと最も関心を集めていたのが、デロリアンが疾走して時空を超えていくシーンだろう。
それを支えるのが、回路基板をイメージしたLEDのボード。「サーキッドボード」と呼ばれる装置で、舞台を囲む額縁のような枠から客席にまでせり出し、劇場の天井や壁面にも広がって壮大なタイムトラベルシーンを演出。まるで客席の自分もデロリアンに乗って疾走しているかのような没入感が味わえる。
デロリアンの走行シーンは何度か登場するが、スピード感に息を呑んだり、歓声や拍手が湧き上がったり、最後の最後まで手に汗を握る驚きの連続!!



父親と再会するダイナーは50’sのおしゃれな雰囲気を演出
タイムトラベルしたマーティが父親のジョージ(斎藤洋一郎)と、ジョージに何かと因縁をつけていじめてくるビフ(酒井康樹)らと鉢合わせするダイナーは、1950年代の若者の社交場の雰囲気がたっぷり。内装はもちろんのこと、ショーケースに並ぶドーナツはトッピングまで精巧に再現され、チョコレートの包装紙は当時の実際の商品パッケージのデザインを模して作られている。

ストーリーの面白さ、そして歌やダンスは劇団四季クオリティーとあって、申し分ない。
そのうえで、知っておくともっと楽しめるポイントを詳報した。
【後編】では、観劇をさらに盛り上げる、とっておきの見どころ&過ごし方を紹介します!!
撮影/五十嵐美弥 取材/高城直子