【萬田久子さん×神津はづきさん】40年来の親友が“ファッション”を語る「時間が経つと服との距離感が変わってくる」 悩みを解決する萬田さんの“秘密のクローゼット”

神津はづきさんは、初著作『ママはいつもつけまつげ』のカバーの袖に書かれたプロフィールを《今後の夢は盛りだくさん》と結んでいる。40年来の女友達である萬田久子さんと神津はづきさんは、人生を目一杯楽しもうとする同好の士でもある。第3回となる今回は、ファッションについて語り合う。【全5回の第3回。第1回を読む】
長年付き合ってきた服に新しいのをアレンジして
神津:あっ、その帽子はもしや。
萬田:ふふふっ。せっかくはーちゃん(はづきさんの愛称)との対談だから、メイコさん(はづきさんの母で女優の故・中村メイコさん)にいただいた帽子を選んできたの。
以前、ご実家が引っ越しをする際にいろいろなものが出てきたとかで、「ママはスパイだったんじゃないかというぐらい、たくさん帽子やウィッグが出てきたの!」って、はーちゃんが笑いながら送ってくれたのよね。
神津:ママは「お友達にさしあげなさいよ」と言うんだけど、似合いそうなのが萬田さんしか思い当たらないような、派手なものばかりだったから(笑い)。そういえばママが亡くなって姉と遺品を片づけている時にも、ちょうど萬田さんがピンポーンと訪ねてきてくれて。

萬田:あの時は『銀河鉄道999』のメーテルみたいな帽子やマフ(防寒具)など冬物をいただいて、身に着けて帰ったわね。派手とか奇抜と言うけれど、ママの愛用品はすてきなものばかりよ。今日も鳥の羽根がついた白い帽子とこの赤のとを迷ったの。
神津:ママも物持ちだったけれど、萬田さんも負けていない。雑誌にも私服で登場するし、去年出した本(『萬田久子 オトナのお洒落術』)もすべて私服で構成されていて。帽子だけのページもあったけれど、いくつくらいあるの?
萬田:帽子の数は100以上1000未満と答えている。“1000は言いすぎ?”と思ったけど、ゴルフの帽子まで入れたら、これがあながちオーバーでもない感じなのよ(笑い)。
神津:雑誌の取材で、断捨離しようと思ったけどできないと語っていたけど、萬田さんは本当にお洋服を大事にするし、ファッションが好きね。
萬田:布が好きなのかしらね。
神津:何十年も前の服も着てるし。
萬田:着てる、着てる! だって思い出も愛着もあるもの。時間が経つと服との距離感も変わって、今振り返ると若い頃は背伸びというか、頑張ってジル サンダーとか着ていたけど、60代になると、着てあげているという気分にもなって。そんな発見も、長く着ているからこそあるのよ。
ただ、流行りもあるから、昔のままではなく、今のアイテムと組み合わせてアップデートすることが大事なのかな。長年付き合ってきた服に新しいのをアレンジして、自分流に着こなすのがポイント。そこが若い人にも響いて、本の感想をいただいたりね。お母さんの服と自分の服を組み合わせて楽しんでいるみたい。

神津:この人は心底、お洋服が好きなんだと伝わるから、世代を問わず、萬田さんの精神が響くんだと思う。ファッションを語っていてもただ消費しているだけで、服に残酷なことをしている人も中にはいるから。
萬田:捨てない&眠っていた服をよみがえらせるスタイルは、ありがたいことに読者の皆さんも共感してくださっている。
神津:愛があるものね。ファッションブックにも写真があるけど、萬田さんの「秘密のクローゼット」はバービー人形の世界に入ったみたい。ポップでカラフルで、女の子の夢がギュッと詰まった宝箱のよう。小物類もたくさんあって着せ替え人形の気分を味わえるし、“○○の会なら、どんな服がいいと思う?”なんて何気ない会話で“ちっちゃい人でも着られるのがどこかにあったな”と、出してきてくれて。萬田さんのクローゼットでたいてい悩みが解決する。たださ……。
萬田:えっ、何よ……。
神津:これ着てごらん、とどんどんお洋服を出してきてくれるのはいいんだけど、試着して似合わなかったら、どれだけうれしそうに笑うか。“ひどいわぁ”とか涙を流しちゃって。昔はコム デ ギャルソンへ一緒にお買い物に行ったけど、その時も、試着室を出た途端に大笑いしてたもの。萬田さんと試着室でファッションショーをするのはいつも楽しくて大好き。
萬田:ひとりでも楽しいわよ。今日のコーディネートを考えるのも夢中になって、昨夜は気がつけば深夜2時になってた(笑い)。今だから言っちゃうけど、その後ベッドに潜ってはーちゃんの本を読んだの。やっぱりメイコママが最高だし、神津家の日常は面白いわよねぇ。自分の名前が出てきたのも“あっ!”って喜んじゃったし。
(第4回に続く、第1回を読む)
【プロフィール】
萬田久子(まんだ・ひさこ)/1958年大阪府生まれ。短大在学中にミス・ユニバース日本代表に選出され、1980年にNHK連続テレビ小説『なっちゃんの写真館』で女優デビュー。以来、主演を含む多くのドラマに出演し、映画、舞台でも活躍。2023年『グランマの憂鬱』では主演を務め話題に。長年さまざまな雑誌やメディアで唯一無二のファッションアイコンとして注目され、近年は自身のインスタグラム(@hisako.manda_official)で披露している私服ファッションにファンが多数。
神津はづき(こうづ・はづき)/1962年東京都生まれ。東洋英和女学院高等部を卒業後、ニューヨークへ留学。帰国後、母・中村メイコさんの後を継いで女優となる。1992年、俳優・杉本哲太と結婚。一男一女の母。現在は月に2回ほど刺繍の先生をするほか、本物の大人に必要なアイテムを制作しようと受注ブランド『Petit Tailor R-60』を展開中。今後の夢は盛りだくさん。インスタグラム(@hazukitoito)では楽しい刺繍作品を披露している。
構成/渡部美也 撮影/浅野剛 ヘアメイク/黒田啓蔵
※女性セブン2025年4月17日号