《熱中症予防や老廃物デトックスも》健康&若返りを目指す「汗活メソッド」のポイント「6~8時間の睡眠をしっかり」「ながら運動や食事で発汗」「入浴は短時間でも効果的」

4月19日、全国15地点で30℃超の真夏日となった。急激に気温が上がるこの時期は熱中症リスクが高まるため、冬に増えた休眠汗腺を目覚めさせ、体を暑さにならす必要がある。汗をかけば、健康効果も若返り効果も期待大。すぐに“汗活メソッド”を始めよう!
体温調節機能が高まり熱中症予防に!
ニオう、ベタベタするなど、マイナスイメージが強い汗。だが、済生会横浜市東部病院患者支援センター長の谷口英喜さんは、「いい汗をかくことは、むしろ心身によい影響をもたらす」と話す。いい汗とは、ミネラル分や塩分が少なく、サラッとした汗のことだ。
「汗は赤血球などを取り除いた血液部分である血漿から作られていて、ミネラル分などが含まれています。汗腺の『ろ過機能』によってミネラル分は体内に再吸収されるので、皮膚表面に出てくる汗は99%が水分。そのため、汗をかいてもすぐに蒸発し、サラッとしていてニオイもありません」(谷口さん・以下同)
だが、いまの時期は、冬に活動を休止していた汗腺(休眠汗腺 ※皮膚にある汗を分泌する器官)が急に活動を再開するため、塩分を多く含み、ベタベタした汗をかきやすく、ニオイも発生しやすいという。

「いまから汗腺を鍛えることで、汗腺の機能を高めていい汗をかくことができます。汗の主な役割は体温調節です。熱中症は暑さで体温が上昇しすぎることが一因ですが、いい汗をかいて体内の熱を逃すことができれば、熱中症の予防になり、暑さにも負けにくい体になります。
また、人間は便や尿のほか、汗からも老廃物を排出するため、デトックス効果もあります」

汗はダラダラと流れ落ちるものだけでなく、目には見えない微量の汗を、人は常にかいている。
「常に汗が蒸発することで体温調節をしていますが、汗には肌の乾燥を予防する効果もあります。天然の保湿成分も含まれているので、肌が潤い、バリア機能を高めてくれるのです」

さらに、スポーツやサウナで汗を流せばリフレッシュ効果も期待できる。
「汗をかくと余分な水分も排出されてすっきりし、爽快感も得られ、ストレス解消にもつながります」

加齢で下半身から発汗しなくなる
ところが、現代人はエアコンの影響などで、体温調節をする必要がなく汗腺の機能が衰えがちだ。加齢によっても低下するので、さらに汗をかきにくくなり、汗の質も悪くなる。
「発汗は自律神経によってコントロールされていて、体温が上昇すると交感神経が優位になり、発汗を促します。老化によって自律神経の働きが低下すると汗腺の機能も衰えるため、加齢とともに下半身から汗をかけなくなっていくんです」
衰えた汗腺の機能を回復させるには、「まず、発汗をコントロールしている自律神経を整えることが基本」と谷口さんは続ける。
自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあり、それぞれが身体機能をコントロールしているが、加齢によってそのバランスが乱れやすくなる。
「自律神経を整えるためには、充分な睡眠やリラックス時間を取り、アルコールやたばこは控え、バランスのいい食生活を意識すること。規則正しい生活をすることも重要です」

次に必要なのが、1日に1〜2回、汗をかくための習慣を生活に取り入れることだ。
「いい汗をかくには、朝のうちに体を動かし、代謝を高めることです」と話すのは、汗活コンサルタントの比留川佳志子さんだ。
「できれば午前10時くらいまでに20〜30分のウオーキングをすると基礎代謝が上がり、一日を通して汗をかきやすくなります。
また、朝の軽い運動は、自律神経のバランスを整えるのにも役立ちます」(比留川さん)
ウオーキングなどの運動は、「発汗に必要不可欠な筋肉の維持につながる」と谷口さんも続ける。
「筋肉には水分を蓄える働きがあります。筋肉が減って体内の水分量が不足すると、汗をかきたくてもかけなくなります。スクワットなどを習慣にして、筋肉を増やしましょう。水分をしっかり摂ることも大切です」(谷口さん)
毎日の入浴で衰えた汗腺を刺激
「一日の中でもっとも効果的に汗活ができるのは、入浴時」と話す比留川さんに、汗腺を目覚めさせるための効率的な入浴法を教えてもらった(後述)。
「入浴は、暑さに慣れ、汗をかく練習として最適です。体温調節機能を高めるのに効果的で、2~3週間続けることで汗腺が刺激され、いい汗をかけるようになります」(比留川さん)
また、炭酸ガス入りやエプソムソルトなどミネラル成分入りの入浴剤も発汗を促すのにおすすめ。
比留川さんによると、入浴法を実践し、いい汗をかけるようになった人たちからは、「疲れにくくなった」「気持ちが前向きになった」「よく眠れるようになった」「夜中にトイレに起きなくなった」「更年期のホットフラッシュが緩和された」などの反響が寄せられているという。
下記で紹介する日常生活で取り入れやすい汗活メソッドのコツと入浴法を参考に、心も体も健やかになる汗活をさっそく今日から始めよう!
《基本のキ》自律神経を整える
【1】6~8時間の睡眠をしっかりとる
睡眠中や休息時間は、副交感神経が優位になり、体の疲労回復やメンテナンスが行われ自律神経が整いやすくなる。「個人差はありますが、6〜8時間の充分な睡眠をとって体をしっかり休めましょう」(谷口さん・以下同)

【2】日光を浴びて体内時計をリセット
体内時計には、ホルモンの分泌や自律神経のリズムをコントロールする働きがあるが、毎日少しずつ狂いが生じるため、調整が必要。「起床後、日光を浴びることで、体内時計を正常な状態に戻すことができます」

【3】1日3回の食事でリズムを整える
不規則な食生活や栄養不足は自律神経のバランスを乱す原因に。「1日3食、栄養バランスのとれた食事を、ある程度決まった時間に食べることが大切です」
【4】アルコールやたばこは控える
「過剰なアルコールやたばこには、交感神経を興奮させる作用があるので注意しましょう。アルコールには、睡眠のリズムや質を低下させる作用もあるので控えめに」
《日常編》ながら運動や食事で発汗
【1】椅子スクワットで下半身の筋力アップ
筋肉量が減少すると体内の水分量が不足し、汗をかきにくい状態に。「筋肉量の多い下半身を鍛えるスクワットを。筋トレを行う時間がない人は椅子に立ったり座ったりを繰り返すだけでも効果的です」(谷口さん)。

【2】家事エクササイズで汗をかきやすくする
掃除や料理などの家事を、汗をかく時間にすると続けやすい。「窓拭きや床拭きは体を大きく動かせます。料理をしながらかかとを上下させるだけでも、汗腺を刺激し汗をかきやすくなります」(比留川さん)

【3】発汗作用のある食材を積極的に摂取する
「にんにくやしょうが、唐辛子、スパイスなど発汗作用のある食材がおすすめ。汁物や野菜、果物など水分の多い食材も積極的にとりましょう」(谷口さん)
【4】水分補給はこまめに。1日1.5リットルを目安に飲む
「1日に1.5lを目安に水を飲み、体内の水分量を充分に保ちましょう。ペットボトルなどの水を持ち歩き、少量ずつこまめに飲むのがコツです」(比留川さん)
《入浴編》短時間でも効果的!入浴で衰えた汗腺を活性化
【入浴前】筋肉をストレッチして血流を促進しておく
常温の水をコップ1杯飲み、入浴中の脱水症状を予防する。次に、太ももの裏とふくらはぎのストレッチをして発汗のための準備を。「ストレッチをすることで、血流がよくなります。体がじんわり温まるので、入浴中に汗をかきやすくなります」(比留川さん)。
●太ももの裏とふくらはぎをストレッチ

【1】足を肩幅よりやや広めにして立つ。両ひざを曲げて前屈し、両手で足首をつかむ。
【2】そのまま片足のひざをゆっくり伸ばし、太ももの裏、ふくらはぎを5秒伸ばす。反対の足も同様に行う。

【3】足幅を少し狭くして、同様に【1】~【2】を行う。
【入浴中】湯の中で手足の先を動かし、衰えた汗腺を刺激
「お湯の中で、手足の先をグーパーしたり、ぶらぶらさせたりして体の末端を動かすと、大きな血管や筋肉が刺激され、汗腺が活性化します」(比留川さん)
お湯の温度は38~40℃のぬるめで、15分ほどつかるのが理想だが、5分でも効果は充分得られる。

●浴槽の中で手足の先を動かす
湯の中で両手両足を10秒間ぶらぶらさせる。

湯の中で両手両足の指を10回グーパーする。

【入浴後】汗をゆっくりと蒸発させクールダウンする
体を拭いたバスタオルを使ってストレッチを行い、クールダウンを。「肩甲骨などを軽く動かし、体表面の汗をゆっくりと蒸発させていくと、体温が緩やかに下がるため、副交感神経が優位になります。仕上げに常温の水をひと口飲みましょう」(比留川さん)。
●肩甲骨を動かす
【1】バスタオルの両端を握り、ひじを伸ばしてバンザイする。

【2】バスタオルと腕を頭より後ろにし、肩甲骨を意識しながらひじを10回曲げる。

●上半身をグルリと回す
バスタオルを持ってバンザイをしたまま、上半身を右に3回まわす。同様に左にも3回まわす。

◆教えてくれたのは:医学博士・谷口英喜
済生会横浜市東部病院患者支援センター長。熱中症や脱水症などをテーマにしたテレビやラジオへの出演が多数。著書に『熱中症からいのちを守る』(評言社)など。
◆教えてくれたのは:汗活コンサルタント・比留川佳志子さん
デトックスサロン『石温SPA』(イオンスパ)代表。自身の不調の経験を生かし、冷え改善や汗活のアドバイスなどを行う。著書に『今日から始める汗トレ!』(きずな出版)。
取材・文/青山貴子
※女性セブン2025年5月22日号