
もっとお金があれば幸せになるのにと思っている人は多いだろう。しかし、ひとつ言えるのはお金持ちだからといって決して幸せだとは限らないということ。むしろ、少ない収入の方がお金のありがたみを感じ、大事に使うのでより幸せを感じられるという。いますぐ真似したい「幸せの買い方」を紹介しよう。【全3回の第2回。第1回から読む】
安く手に入れることが娯楽に
還暦を過ぎても、ささやかな幸せを買うことはできる。60才から始めたブログ『60代一人暮らし 大切にしたいこと』が大人気のショコラさん(69才)は、もともと2人の子を持つ主婦だったが40代で離婚して人生初のひとり暮らしを始め、43才で就職して46才でマンションを購入した。
「子供の学費や住宅ローンの支払いをしながら57才まで働いて、その後は67才までパートを続けました。いまは毎月13万円の年金で暮らしています」(ショコラさん・以下同)
40代で人生が大きく変わった彼女が老後のためにまず取り組んだのが、「不安の解消」だった。50代の半ばから目標を立てて、生活を切り詰めて貯金に励んだ。
「節約してお金を貯め始めた頃は、貯金できることが単純にうれしかった。老後の不安を解消することで幸せを感じることができました。お金は老後の楽しみに取っておこうと決めていたので、がまんや節約をつらいと思うことはなかったですね」

貯金を始めると同時に、お金を大切に使うことも心がけるようになった。いまは年金と貯金を上手に使って、おひとりさまライフを満喫している。
「それまでバーゲンの時期には7万〜8万円ほど洋服を買っていましたが、40代後半から『Yahoo!オークション』を使い始め、最近は『メルカリ』も利用するようになりました。想定したのと違う洋服が届く失敗は何度かあったけど、商品を見ることも楽しくて、いまでは化粧品や日用品、生活全般で必要なものは何でもヤフオクやメルカリで探しています。欲しいものやすてきだなと思うものを安く手に入れること自体が娯楽になり、たくさんお金をかけなくても充分満足できています」
いまも月13万円の年金暮らしを続けるショコラさん。食材の値上げが続くなか、毎日の食事は栄養バランスを考えて安価な食材や冷食などで質素な生活を送る一方で、月3〜4回は外食してメリハリを楽しんでいる。

ほかにも生活費を抑えて、健康や元気の源になっているのが「フィットネスジム」だ。現在も週3〜4回のジム通いを続ける。
「お風呂とサウナがあるジムなので、電気代とガス代の節約になります。しかも運動不足が解消できて、ずっとやりたかったフラダンスもできてジム仲間までいる。デイ会員で月1万円ほどの出費ですが、毎回行くのが楽しみなので惜しくないですね」
著名人でなくとも、慎ましく暮らす人々にこそ「幸せの法則」がある。
「やっぱり家がいちばん安らぎます」
そう語るのは、静岡県在住のAさん(54才)。定年退職した夫とともに自宅の「庭いじり」に勤しむ毎日だ。
「子供が独立したので遊び道具などを入れていた物置を撤去し、そのスペースにホームセンターで購入した椅子やテーブルを置き、花壇などを手づくりしました。
天気がいい日は庭で食事やお茶を楽しめて、お出かけしないから交通費や外食代もかかりません。家にいるのがいちばん楽しくて、庭で食べるものがいちばんおいしいです」(Aさん)

幸せになるにはモノではなく「コト(経験)」にお金を使えとはよくいわれることだ。都内で母親と2人暮らしをする事務員のBさん(55才)は、10年ほど前に登山サークルに入って、月1〜2回の山登りを楽しむ。
「年収は320万円ほどで生活は楽ではないですが、生活費をやりくりして登山にかかる費用を捻出しています。高齢の母との2人暮らしは時々息が詰まることもありますが、山に登ると見たことのない景色を堪能できて、これまでで味わったことのない爽快感が得られます。登山を通して新たな人間関係も広がり、私にとってかけがえのないものになりました」(Bさん)
夫と子供2人で埼玉県の社宅に暮らすCさん(38才)は、1年前に思い切って中古のワンボックスカーを購入した。
「社宅では常にご近所の目にさらされ、“○○さんの旦那さんが出世するみたい”といった噂話で気が休まりません。
楽しみだった家族旅行も子供たちが大人料金になり、インバウンドでどこに行っても値段が高くなった。“だったら車を動くホテルにしよう”と考えてワンボックスカーを購入しました」(Cさん・以下同)
家族が眠れるように車内を改造し、宿泊代がかからない車中泊の旅を始めた。
「道の駅や高速道路のサービスエリアで地元の名物を食べて日帰り温泉を利用すれば、気分は温泉旅館に泊まったも同然です。費用はそれまで使っていた家族旅行やレジャー代を回してやりくりしていますが、満足度は桁違いに高い。
私は免許を持っていないので長時間運転する夫は疲れた様子ですが、“パパのおかげですてきな旅ができて幸せだよ”と子供たちに言わせて、がんばってもらっています(笑い)」

いま夢中になる人が多い「推し活」で幸福度を上げるケースもある。都内在住のDさん(46才)は、子供たちがファンだったロックバンドに夢中になった。
「テレビによく出るメジャーなバンドではないのでチケット代が安く、応援しやすいんです。以前は思春期の子供たちとわだかまりもありましたが、同じバンドを応援することでより仲よくなれたし、ファンの子たちとの交流で自分が若返った気がします。
私はそれまでコンサバな服装が好きでしたが、推しのバンドのロック調のTシャツを日常でも着るようになり、夫には“雰囲気が変わったね”と言われました」(Dさん)
自分だけの「好き」を見つけてお金をかける——これこそが幸せを買うということ。一方で、決してやってはいけないことがある。『精神科医が見つけた3つの幸福 最新科学から最高の人生をつくる方法』の著者で、精神科医の樺沢紫苑さんが語る。
「それは物欲に支配されることです。そういう人は買った瞬間に目的を達成するので、無駄な買い物が多くなります。ものを買うことで幸せは増えますが、“もの”に支配される買い物依存的になると、むしろ不幸になります」
(第3回に続く)

※女性セブン2025年5月22日号